全身艶々のぷるっぷる
「お母さん、おばあちゃんはどうですか?」
「あら、時間がかかってしまったわ。お母様の体をケアしている使用人に洗い方を教えていたのよ。今、シャンプーが終わったわ」
おばあちゃんの髪を見ると、年齢とともに落ちた髪のハリもコシも戻っているようにみえます。
まあ、濡れ髪なので、適当ですけどね。
「それでは、お母さん次です。コンディショナーとトリートメントを置いていくので、指導をお願いします」
「わかったわ」
おばあちゃんはお母さんと使用人さんに任せておいても大丈夫そうです。
お風呂場は裸でも湯気のおかげで寒くありません。
このお風呂場自体が熱を逃がしにくいのかもしれませんね。
さて、お姉様を高級固形石鹸でもっちもっちにしてあげましょう。
◇◇◇
「ああー、今日が天に召される日だったのだわー」
頭も髪も体も全身綺麗に洗い『美肌の湯』の効果で、なんだかシワがなくなり、若返ったようなおばあちゃんが気の抜けた声で言います。
私が高級ドライヤー(魔道具)で髪を乾かし終えた後の言葉です。
オババ様が私に見せてくれた綺麗な鏡と違い、なんだか昔の映画に出てきそうな劣化鏡で自分を見て満足そうなお姉様と、気が抜けてリラックスしているおばあちゃんとお母さんと風呂後の水分補給中です。
「神の国って、本当にあるんだわー。私の顔が、若い頃よりも触り心地が良い……」
おばあちゃんは自分のほっぺを触ってご満悦です。
『美肌の湯』は、お年を召された方には、より効果が感じやすかったようです。
リラックスしていた女性陣の元へ、しずしずとメイドさんが入って来ました。
「失礼いたします。お食事の準備が整いました。旦那様方はすでに食堂でお待ちでございます」
その言葉を聞いて、おばあちゃんとお姉様が素早く立ち上がりました。
飲み物が残っていてもったいないです。
飲んでもいいですか?(貧乏性なチヤ)
「あら、いやだ。そんなにゆっくりとしてしまったかしら?すぐに行きますと伝えてちょうだい」
伝言を受け取ったメイドさんが、しずしずと去って行きます。
すぐに行くと言ったおばあちゃん達ですが、そんなに急いではいません。
貴族の生活とは、わからないものです。
◇◇◇
食堂に着いたら、洋画のセットで見たような、世界の宮殿で見たような空間が広がっていました。
なんだか、無駄にキラキラしいです。
そこで、椅子に座っていた男性2人が立ち上がり、こちらに足早で近づいて来ます。
よく見ると、シワの無くなったおじいちゃんと、血色が良くなり顔色が良い健康な肌になった伯父さんです。
「おお!ベティーナ!すっかりと綺麗になって!また、君に恋をしそうだよ!」
「あら!ウェンズも若返って!格好良くなったわ。後は髪の毛が残念ね」
おじいちゃんがおばあちゃんに愛を込めた言葉を言ったのに、おばあちゃんは結構現実的です。
女性って、そういうところがあるよね?
「あらやだ、ジョシュア。なんだか健康になったじゃない」
「そう言うお姉様は若返ったね」
「あら?私が老けていたみたいに言うじゃない?」
「前向きな発言に受け取れないのがお姉様の欠点だよね」
こちらも姉弟が冷静にヒヤヒヤするような内容を話し合っている。
貴族の兄弟姉妹ってこんなもの?
私はちょっと、ピアスが気になって、しょうがない。
体を洗う時に耳も洗うでしょう?引っかかるんだよね。
おじいちゃん達は男女2ペアで、おばあちゃん達を席にエスコートしていた。
さて、私とお母さんはどこに座ればいいの?
「あなた達の席なんてないわ!」とは、ならずに、私はおじいちゃんとおばあちゃんの間に座らされ、お母さんは叔父さんとお姉様の間に座っていた。
そして、今は、おじいちゃんに髪の毛を触られている。
「おおっ!さらさらで、天上の如き輝きだ……綺麗になったねチヤ。お風呂はどうだったかい?」
めっちゃ、触られる。
食後には、また、頬擦りをされるのではないだろうか?
「とても広くて綺麗なお風呂場でした。管理が良いのでしょうね」
おじいちゃんの若返った顔が、でれっとする。
「我が家の使用人は宝だ。大事にしなくてはいけないよ。チヤも今日からここに住むのだから」
おお!凄く良い雇用主だ!おじいちゃん素敵!
「おじいちゃんは、凄く優しいですね」
「ふふっ」
おじいちゃんとおばあちゃんが笑った。
何もおかしなことは言ってないのに。
「料理の配膳をさせていただきます。失礼いたします」
若い男性が声をかけてきて、飲み物を順番に置いて行ってくれた。
扉から料理を乗せたカートが押されてきて、良い匂いがふわりとした。
「ふわー」
私が感嘆の声を上げると、微笑ましそうにおばあちゃんが言った。
「今日は、たくさん食べてね。チヤちゃんの好物を教えてちょうだい」
私は反射的に言った。
「黒い調味料!」
所謂、しょうゆとめんつゆである。
「黒い、調味料?初めて聞いたわ?」
おばあちゃんが不思議そうにすると、おじいちゃんが声を上げた。
「あっ、あれじゃないか?海に行った時に見た、凄い匂いの黒い調味料。あれは……魚から作る調味料ではないかな?」
魚醤、だ。
この世界にも、あるのか。
「違うよ!大豆と塩と麦で作る調味料だよ!」
「大豆?とは、なんだ?」
と、おじいちゃんとおばあちゃんがクエスチョンを飛ばしている間に料理の配膳が完了した。
誤字報告をありがとうございます。




