木族のお勉強をしましょう
「さて、やっとチヤだけになったね。ミズは帰りな!」
「はい。それでは帰ります。
チヤ様、ミズに用事がありましたら魂木までおいでください」
「ミズ!特別扱いするんじゃない!」
ミズは逃げるように不思議空間の中に入っていった。
ここから鏡の中に別の部屋が見えるもんな。
あれ、どこでもドア的なやつだよな?
いや、固定されているから『空間移動』だな。
「さて、チヤ、そこに座りな」
ソファセットがあったので、オババ様の前に座る。
「ミズがねぇ、チヤの魂の中で不思議なモノを見たそうだよ。……この世界とは違ったそうだ」
あ、何となく言いたい事や聞きたい事がわかった。
「あんたがねぇ、おばあちゃんになっててねぇ、一生を終えたって言うのさ。
……チヤ、あんた、ナニモンだい?」
元、地球人です。
……隠さないでもいいかなぁ。
◇◇◇
私の昔話を聞いたオババ様が一言呟いた。
「以前にも、チヤみたいなのが、いたってねぇ」
「えっ!本当!?地球人?」
「わからん。詳細な記録が残ってない。……図書館の主なら、知ってるかもねぇ」
「図書館の主って、何?」
オババ様が一瞬諦めたような遠い目をした後に、真面目な顔で私を見た。
「前世は置いといて、木族の話をするよ」
話を逸らされた。
言いたく無いのかな?
「はい」
私は真面目に聞く。
「木族は外の世界へ出る時にハースネル族の名前を使う。外の世界は『木族の里の外』だ。名前の後にハースネルと名乗る奴がいたら木族だ。
そして、木族は人族に『エルフ族』と呼ばれている。そして、幻の種族として探されている。
何故だかわかるかい?」
これは、異世界あるあるでーー
「迫害されているのですか?」
「ちょっと違うねぇ。エルフ族はね。
今日来たみんなを見ただろう?どう思った?」
「変態親父に攫われそうだと思いました」
チヤは正直な感想を言った。
「少し正解だねぇ。
エルフ族はね、奴隷として利用されていた時期があるんだよ。大昔だがね。
そして、強力なスキルを1人1つは持っている。あんたもあるだろう?読めなかったが。珍しいものを出すスキルかい?」
これまた、異世界あるあるだ。
エルフは綺麗だから人に狙われる、と。
そして、強いスキルを持っているのね。
「さっき話した異世界の商品を買えるのと、この世界の商品も買えますよ。レベルが上がると買える物が増えると思います」
「ああ、進化するスキルかい。また、強力なものを貰って。
……異世界の植物の種は買えるかい?」
「買える物と買えない物があります。いいんですか?異世界の種をこの世界に持ち込んで」
「スキルはね、神様から授かるんだよ。大体が望んだスキルを貰える。これは、木族だけだけどね。木族は神に近い種族だと言われているから、願いが神に届きやすいんだそうだ。人族は神に遠いから、よほど気に入られなければ、経験で貰えるスキルが変わるそうだよ」
ふーん、と聞いておく。
私の幼少期の願いというより、『通販』は前世で便利に使っていたものだね。
無くてはならない現代に必要なサービスだった。
トイレットペーパーのまとめ買いとか、すんごい便利だった。
家族が多かったからね。
「アンドチヤは魔物に殺されて死んだから、次は力を求めるかもねぇ」
ん?オババ様が不思議な事を言った。
望んだスキルを貰えるじゃないの?
「何で前世が関係あるの?」
「関係あるさ。あのね、木族は死んだら『魂木』に帰るのさ。そして、時が満ちたら子供が欲しい木族の元へ生まれる。時が満ちても子供が欲しい木族が現れなかったら、子供を面倒見ている施設に送られる。アンドチヤはこれだね。
木族は死んでも木族にしかなれないんだよ。
だからチヤも死んだ後も木族さ。
魂は変わらずに肉体が再生される。願ったスキルは今世に生まれた時に授かるのさ。
大体の木族は死ぬのが怖くない。また、木族として生まれてくるからね。……最近の若者はちょっと違うがね。
昔の奴隷時代は死んで、人から逃れた者が多いそうだよ」
そうかぁ、自分は変わらず生まれてくるって事実があるから、価値観が違うのか。
でも、人格が変わったら、別人だと思うけどなぁ。
「魂木って何?」
「大きな大きな木が里にはあってね、その木の中に死んだ木族の魂が帰ってくる。そして、その木から木族が生まれる。それが『魂木』さね」
ふーん、魂の帰ってくる場所と生まれる場所か。
不思議。
「そうだ、絶対に外の世界の奴に木族だってバレるんじゃないよ。酷い目に遭うぞ」
「また奴隷にされるってこと?」
「……木族を食べれば永遠の命が手に入る。と、言われていて、大昔に実際に、腕を切られては食べられて、再生魔法で治された後に、また腕を切られて食べられて、と繰り返したエルフ族がいる。実話だ。人は残酷だ。信用するなよ?
だから、アンドチヤのように間違った知識を持つんだ」
お父さんが人と結ばれてはいけないと思ったのは、この歴史があったからだね。
人に木族だとバレてはいけない。
でも、オババ様って、少し話をすり替える癖でもあるのかな?私の聞いた事と論点が違う話しをするんだけど。
「で、異世界の種をこの世界に植えてもいいんですか?」
「ーー木族の里だけならいいさね。里には強力な結界が張ってあるからね。それに、別に外の世界で育ててもいいとは思うよ。根付くかは別としてね。
神様がチヤにその固有スキルを与えたなら、チヤがしたい事はしていいって事だ」
ふ〜ん、そんなもんなんだ。
でも、今のところ種はそんなに買えないんだよねぇ。いや、種類自体はたくさんの種類を変えるけど、農協とかの扱っている種が買えない。
あと、外国の種も買えない。
まあ、ガッツリと農業する種が買えないだけで、苗とかは買えるから、そんなに困らないか。
「で、里に種をくれるんだね?バナナの種をくれよ」
残念でした。
「今はバナナの種は買えないよ。レベルが上がったらわからないけど」
「な、なんたって!?……うう、バナナ……」
オババ様は、ちょっと子供っぽいところもあるらしい。
あ、あと、お父さんとお母さんの関係も聞かないと。
「あと、お父さんとお母さんが『魂の伴侶』と言っていましたが、『魂の伴侶』とはなんですか?」
少しいじけていたオババ様が当たり前の顔で言った。
「木族が神に近いと言っただろう?神は木族を贔屓してくださるように『魂の伴侶』、言葉の通りに『お互いの魂が引き合う、己の片割れ』を木族が見つけられるようにしてくださった。多くは『伴侶』だね。とても愛おしくて、片時も離れていたくないそうだよ。木族では『運命の相手』とも言うねぇ」
そうか。
そうなのか。
なら、きっと、お父さんとお母さんが一緒に暮らした1年間は『幸せ』だったんだ。




