スイード伯爵家領地に帰還中 7
翌朝、元気に目覚めたチヤは馬車に長時間揺られたゆえの筋肉痛を若干感じながらも、普通に動けるぐらいなので、朝食を食べた後にすぐ馬車に乗り込んで次の街へと旅立った。
なんと、スイード伯爵の領都にたどり着く為に、半日に一度は村か町か街がある為に不自由をしないで旅ができると言うのだ。
王都と繋がっている街道だから、整備が行き届いているらしい。
これが、王都と繋がっていない村、町、街になると、途端に交通の便が悪くなるところがあるようなのだが、我等がスイード伯爵家はお金持ち!
だから、領内の道の整備は行き届いているようだ。
これから半日後に着く街は、もうスイード伯爵家領地だと言うのだから、王族直轄地の小ささがわかりそうなものだ。(本当は飛地がいくつかある)
スイード伯爵家の領地はほぼ縦に伸びる長方形のような形をしているが、山に阻まれたりして立地が悪くて開拓されていない地も有り、人が増えすぎたら新たな開拓地を作り、そこに人を住まわせているので、魔物被害は他領とは違い少ない方である。
だがまだ開拓の余地があるので、未来の展望が行き詰まる事もなく良い環境下で生活している。
「ねぇ?おじいちゃん。何でスイード伯爵家は王家と懇意にしているのに『伯爵』止まりなの?侯爵とかになってもいいのに」
そう、チヤにはそこが理解出来なかったのだ。
『エルフ』を秘密にしたいのならば、王族の血族が貰う『公爵』は駄目でも、貴族の中では最高位の『侯爵』になっていれば他貴族の手出しを防げるのでは無いかと考えていたのだ。
おじいちゃんは苦笑して答えてくれた。
「『エルフ』と繋がりがある我等スイード家を王家が警戒しているのだよ。『エルフ』の力をスイード家が借りれば今の王家を潰す事が出来るからね」
チヤは考えて答えを出した。
「スイード家は王家と争わないで、他の貴族家と争えってこと?」
「まあ、正解だね。我等スイード家には王家を潰そうと思えば、とっくの昔に潰せているとは考えていないようだ。
王家はね、貴族が王族を立てるのに疑問を持っていないのだよ。愚かなことにね」
ああ、おじいちゃんが苦笑した意味がわかる。
王家としては『エルフ』を利用したいが『敵対』されると困る存在だから、『エルフ』と繋がりがあるスイード伯爵家が他貴族といがみ合っているのは嬉しいんだ。
『利用したいけど敵対しない』
何とも子供騙しじみた嫌がらせをするものだ。
私は王家を助けんぞ。
貧民街で王家のお膝元の王都で生きてきたけれど、王族に感謝したことなど無い。
治安が良いのは評価しているけどね。
ああ、人なんて『愚かだ』と思う心こそが私が『木族』である証拠かもしれない。
だが、スイード家の家族を愚かだとは思えないから、やっぱり家族は特別かな?
あ、インベルト商会も別かもしれない。
私とお母さんを助けてくれたから。
そう言うと、ステラおばさんの家族も別だね?
なーんだ。
私がただ王家を嫌いなだけじゃん。
王家に悪い事が降りかかれ!
あ、いかんいかん。
悪いクセが出てしまった。
『人を呪わば穴二つ』と言うじゃないか。
私に不幸が襲いかかってはたまらん。
あ、あと、もう一つ疑問があったんだ。
「ねえ、昨日、騎士様が死にそうだった時に、なんで『オババ様』を呼ばなかったの?きっと助けてくれたよ?」
おじいちゃんが真剣な顔になって声をひそめた。
「オババ様を呼び出せる状況じゃ無かったからね。
一つはエルフの里と繋がりを持てるのは『空間が安定している時だけ』。つまり移動中にはエルフの里との空間が繋げられない。
馬車は移動出来るけど、空間を繋ぐ場所は動いてはいけない。
チヤちゃんが空間魔法を勉強すれば、どれだけ怖い事か分かるよ。下手をしたら、体が千切れてしまうから」
おじいちゃんがサラリと怖いことを言った。
でも、空間が固定させていればいいんでしょう?
「馬車を動かさないでオババ様を呼んで、騎士様を治療してもらってから帰ってもらえばよくない?馬車は動いてないから空間の固定は出来るはずだよ?」
「チヤちゃんは木族だから別だけど、ただの人が『木族』利用する為だけに頻繁に『木族の方』を呼んではいけない。
だが、抜け道もあるんだ。
チヤちゃんに会いにオババ様がよく屋敷に来ただろう?その時にお伺いを立てるのはいいんだ。
世間話程度だからね。
木族の方達は人と完全に繋がりを断つ判断はしない。情報は力になるからね。
あとね、木族の方だから簡単に空間を繋げれるけれど、人が空間を繋げようとすれば、膨大な魔力が必要になってしまい、使えない魔法として伝わっているね」
なるほど。
木族の『固有スキル』だね。
え?それなら『空間魔法』を持っている木族がいなくなったら?
「おじいちゃん、空間を繋いでくれる木族が全員いなくなったら、エルフの里との行き来は出来ないの?」
おじいちゃんが私を優しい目で見てきた。
「そうだね、そうなるね。だけどね、木族も人も生きていかないといけないから、私達スイード家と物品の売り買いをしているんだ。
必要な買い物だね。
木族の方達は私達を今は必要としてくれるけど、メリットが無くなれば交流は途絶えるかもしれないね」
そうか、『持ちつ持たれつ』ってやつだね。
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