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すのーでいず   作者: まる太
第三章
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遊びにおいでよ 2

 翔姉さんの御宅は4人家族、一軒屋の二階には翔姉さんと件の妹さんの部屋があり、僕はその内の一つ、翔姉さんのお部屋にお邪魔していた。

 大人の女性らしくシックな装いかと思いきや、ファンシーな人形やパステルカラーに囲まれた女の子っぽい部屋だった。

 僕と翔姉さんは寄り添う形でベットの前にあるテーブルを囲んで座っている。

 テーブルの上には、ピザLサイズとドリンクが置かれていた。

 丁度時間は夕ご飯時だった為、翔姉さんが出前を取ってくれたのだ。 

「雪ちゃん、はいあーん」

 翔姉さんが手で蕩けるピザ1ピースを取ると、僕の口元に差し出した。

 僕は……

「はむぅ」

 素直に口に入れる。

 多少恥かしい行為に顔が赤くなってる気もするけど、食べ物には恨みは無い。

 それに、先程嫌がったら「私のピザを食べてくれないの?」と目を潤ませて駄々を

捏ねるので諦めたという次第である。

 うん、僕ってば紳士だよ!

 別に、玩具扱いされて可愛がられてる訳じゃないんだからね。

 翔お姉さんのお願いに応える僕は大きな心の持ち主なのだ。

「はい、雪ちゃん次はこれねー」

「はむぅ……」

 再び出されたピザをもぐもぐと口にする。

「あーん、可愛いわぁ、このままうちの妹にならないかしらぁ」

 翔姉さんは手をウエットタオルで拭うと僕の頭を撫でている。

 そこまでして撫でたいものだろうか……

 いや、汚れたまま撫でられるよりはいいんだけどね。

 ――そんな時だった。

「お姉ちゃん、ピザ取ったんだって? 私にも分けて」

 ドアが開き、1人の少女が入ってきた。

 肩まで掛かっている真っ直ぐな黒髪にクールな雰囲気をした美人。

 そう、嫌な予感というのは的中するもので、西条さんだった。

 西条さんは、僕を見て目を丸くすると叫ぶ。

「な、な、なんで雪ちゃんが居るの!」

 余りの大きな音で鼓膜が悲鳴を上げる程だった。

「あー、もう多賀子煩い、私と雪ちゃんとの甘い時間を邪魔しないでくれない?」

 翔姉さんが手でシッシと振って出ていけとばかりに合図した。

 だがすぐに違和感を感じたらしく西条さんと僕を交互に見る。

「あれ? ひょっとして雪ちゃんのこと知ってるの、多賀子?」

「ふふ、当然よ! 雪ちゃんは私の学校のマスコットであり、私の将来の嫁なのよ!」

 西条さんが胸を張りながら拳を握り締めて宣言している。

 その言葉を聞いて翔姉さんは放心したようになった。

 残された僕はというとガクっと体が傾きそうになる。

 話の内容が酷すぎるからね……

 マスコットと言われるのは、まぁ、いや、うん……認めたくないけど、体育祭でもさせられたこともあり、仕方ない部分はあると思うことも無い訳ではなかりけりだが、将来の嫁って言うのは何なんだと――

 だって、西条さんは女性であり、僕も……見た目は女性だ。

 つまり同性同士で結婚なんて出来ないよ――ね?

 あれ、今は法律で出来るようになったんだっけ?

 つまり、何が言いたいかというと、いつ僕が西条さんの嫁になったのかということ!

「じゃ、そういうことだから、雪ちゃん、多賀子お姉さんのお部屋に行きしょうね」

 西条さんはそう言うと素早く近付き、僕の右腕を取って立ち上がらそうとした。

 その光景に翔お姉さんもハッと気付く。

 慌てて逃がさないように僕の残されていた左腕を掴んだ。

「何馬鹿なこと言ってるの、私の雪ちゃんなんだから、多賀子はさっさと消えなさい!」

「そっちこそ、放してよ。私と雪ちゃんの仲は公認なのよ!」

 2人は僕の頭の上でいがみ合いながら僕の腕を引っ張りあっている。

 まるで目からバチバチと火花が散っているようだ。

「え、ええと、ボ、ボクの意見は……?」

 場所柄上目遣いをするように、二人に尋ねた。

 決して、台風の目の中に入ってるからって恐いわけじゃない。

 声が震えてるような気がするのは武者震いだよ!

「「雪ちゃんは黙ってようね」」

 2人はニッコリ笑って僕に言うが、目が死んだ魚のようになっている。

 こ、恐いよ? いや、恐くないからね!

 うん、ここは戦術的待機の場面なんだよ!

 決して、これ以上僕に被害が来ないといいななんて思ってないよ。

「お姉ちゃん、こういう話を知っている? 真に愛している方が引っ張られている相手の気持ちを察して手を放すって話、雪ちゃんが苦しんでるのを見逃すの?」

 西条さんの言う通り、確かにこのままなのは辛い。

 さっさと開放してくれると僕的にとてもありがたいね。

 しかし、腕に掛かる力は緩むことなく引っ張られている。

 2人共絶妙な手加減をしているらしく、それ程痛くは無いのは内緒にすべきだろう。

「そんなの勿論知っているわよ。但し、多賀子には言われたく無いわね。そもそも、雪ちゃんをお家に呼んだのは私なのよ。部外者はさっさと去るのが道理でしょ?」

「むむむ……」

 言葉に詰まる西条さん。

 翔お姉さんは勝ち誇ったようにフンと鼻を鳴らす。

「雪ちゃーん。多賀子お姉さんと一緒がいいよね!」

 追い込まれた西条さんは僕に確認してくる。

 僕は――目をそっと逸らした。 

 ええと、翔お姉さんに誘われたのは本当だし、西条さんを選ぶのもね……

「ふふん、ほらほら、雪ちゃんも言ってるでしょ。多賀子はお呼びじゃないのよ」

「や! こんな事では諦めないわ! 私にはお姉ちゃんの魔の手から雪ちゃんを守る使命があるのよ!」

 別に西条さんに守ってもらわなくても――って、どういうこと?

「あの西条さん、翔お姉さんの魔の手って?」

「ゆ、雪ちゃんは気にすることないのよ!!」

 翔姉さんは僕の西条さんへの質問を慌てて遮り、そのまま西条さんを睨む。

「な、何よ、本当のことじゃないの!」

 西条さんはその視線に少し怯える。

「た、か、こ、死にたいの?」

「ひぃ!」

 部屋中に西条さんの悲鳴が木霊した。

 翔姉さんの冷たい視線は、部屋の気温を押し下げているようだ。

 天然のクーラーだね。

 なんて、決して我が身可愛さに解説している訳じゃないよ。

 古来から、姉妹喧嘩は犬も食わないって言うじゃない。

 夫婦だったきもするけど、つまりは第三者はかかわっちゃ駄目なんだよ。

 そんな、僕の気持ちを反故にするように、

「雪ちゃーん、お姉ちゃんが苛めるよぉ!」

 西条さんが僕の首に抱きついて甘えてきた。

 それに伴ない右腕は開放される。

 気のせいか、西条さんの顔が緩んでいる気がするけど、見間違えだろう。

 さっきのは恐かったしね。僕なら逃げるよ!

「あー! 多賀子なにドサクサに紛れてしがみついてるの!」

 僕の左腕をぶんぶん振りながら翔お姉さんは叫ぶ。

 出来れば、僕の腕を放してからして欲しいよ。

 ガクガク揺れてしんどいもん。

「うー、お姉ちゃんが苛めるから嫌!」

 西条さんが更に僕に密着してくる。

 何故だろう、ハァハァ言ってるような……

 喧嘩で興奮しているせいなのかな?

 いくら、西条さんがそっちの疑惑があるとしても、翔姉さんの前では悪さしない筈……だよね?

 断言できないのが辛い。

 そもそも、西条さんってこんなに可愛いキャラだっけ? 

 もっと毅然とした女王様っぽいイメージが……

 うーん、なんか違和感があるね。


 

 結局、その後は姉の権力を見せ付ける形で、西条さんは一時撤退することとなった。

 僕から離れた西条さんの顔が艶々してたのは、目の錯覚だろう。

 ゲームのやりすぎで目が疲れているのかもしれないね。

 ゲームは一日1時間って有名な名人が言ってたぐらいだし。

 そして、翔姉さんにも、何故か同じように抱きつかれたのは謎だ。

 なんでもズルいらしいよ?

 うーん。世の中不思議が一杯だね。

 翔姉さんも離れた時には、顔が艶々していた。

 ひょっとして僕ってマイナスイオンでも発生してるのだろうか?

 おお、それって僕に抱きつくので商売出来るかも!

 ――って、変態とか嬉しそうにやりそうなので没だ。

 自分でそれは無いと思ったよ。

 まぁ、何はともあれ、西条姉妹の相手は大変だと実感した。


  

 ご飯を食べ終わった後、FSCCをすることになった。

 翔姉さんの部屋にはデスクトップPCとノートPCの二台があるので、一台を僕に貸してくれたのだ。

 今晩は、お泊りだから無理だと思っていたのでこのサプライズは嬉しかったよ。



 FSCCにログインしてすぐ、個人メッセージが飛んでくる。

『にゃん姫:おい、なんで雪がINしてるねん。今日はシャムさんの家に遊びにいってるんやろ?』

 僕は、ムフフと笑いながら返事を書く。

『トール:シャムさんが2台PC持ってたから貸して貰ったんだよ。今はシャムさんの部屋からログイン中!』 

『にゃん姫:うわ、さすが杏仁豆腐メンバーやなぁ、2PCとか廃人一直線やがな』  

『トール:酷! 今隣にいるからシャムさんに言ってやろぉ』

『にゃん姫:あ、こら、待て、嘘、ジョークやがなぁ!』

「翔姉さん! 太一が悪口言ってるよ!」

 僕は太一の台詞を無視して、翔姉さんに告げる。

 僕ってばお茶目だね。

「む、太一君め、どれどれ」

 自分のPCの画面を睨んでいた翔姉さんは振り返り、僕の向けたノートPCを見て目を細めた。

 そして、再び元に戻り、キーボードをカタカタ打ち出した。

 その直後――

『にゃん姫:こら! 雪、本当に言うか? めっちゃ今シャムさんに脅されたがな!』 

 太一から苦情が来た。

『トール:ボクは嘘がつけないから、素直に教えてあげただけだよ! なので悪くないもん』

『にゃん姫:……くぅ、その通りやな、うん、あれや雪に騙されるほうが悪いってもんやからな』

 ……太一をからかったつもりなのに、僕の方が馬鹿にされていると思うのはなんでだろう? オカシイよ!

『トール:……それって誉められてないよね?』

『にゃん姫:なっ! 雪が気付くなんて今日はレアが出るかもしれへん!』

 むか! 太一、殴る!

 あっ! ヒーラーだから僕達が逆に危なくなるか……

 職業に助けられるとは太一も悪運ばっかり強いよね。


西条姉妹シリーズ このまま終わらせるか、後1話いれるか迷い中です。


設定的にはあるのですが、おまけでもいいかなとも……



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