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すのーでいず   作者: まる太
第三章
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夏の夜は 1

「タタン、タタタタータタ……タンタンタンタン、タタタター」

 お気に入りのスマホ着信音が部屋に流れている。

 2人の女神が居る島に漂着した、赤髪の剣士2のオープニング曲だ。

「うんうん、盛り上がるね! これ以上の曲は無いよ!」

 着信名を見ると、太一だった。

 これは……着信音を聞くしかないね!

 太一の電話=どうせ碌なことじゃないもん。 

 ――着信音が佳境を越え、もうすぐ終了となっても未だに続いていた。

 あれあれ? いつに無くしつこいな? ちょっと気になってきた。

 仕方ないので、曲の終了と同時に電話に出た。

 僕って優しいね。だって、リプレイを聞かなかったんだから。

 ……ノイズが入り繋がったのを感じる。 

「はーい、どしたのー?」

「遅いわ! なんで早く出ないねん!」太一はお冠のようだ。

「いやさ、僕にも用事ってモノがあるんだよ。偶々手が離せなかったの」

 世の中には嘘も方便ってあるしね。

「さよか、どうせ着信音いいわーとかアホなことしてたんやろ?」

「嘘、見てたの? ――じゃない、そんな訳ないよ!」

「……自分で白状してるし。いかにも雪らしいと言えばそのまんまやが、一度やったからって律儀に二度もするなや!」

 むー、文句があるなら着メロを作った人に言って欲しい気がする!

「ほら、あれだよあれ、僕と太一の仲じゃない。他の人なら出来ないよ? 太一ってば得してるね」

「どんな理屈やねん。それは損言うんや!」

 ……なんだか、この流れは良くないかも。

「はいはい、それで何の用なの? 今夜の狩りの話?」

「ちゃうがな、いや違わないとも言うか、今夜金魚を狩りに出掛けへんか?」

「金魚? うーん。そんなモンスターいたかなぁ。それレアアイテムでも落とすの?」

「はぁ……なんでもかんでもネトゲに結びつけるのは雪だけやろな……金魚言うたら、金魚すくいに決まってるやろが」

 凄い溜息つかれたよ!

「ふーん。金魚すくいねー。すくった後に困るだけな気もするけど?」

「いや、まー、その通りなんやが、普通女の子なら、キャー、可愛い、みたいな反応しないか?」

 僕にそんなもの求められても困るね。

「全然興味ないなぁ。まだスーパーボールすくいでもして――ってアレもなぁ、ゲットした後に夜中にも係わらず投げて10分もしないうちに失くすという魔の屋台だよね」

「そそ、でっかいのなんて絶対取れへんもんな!」

「それじゃ、用事はおしまい?」

「こら、なんでそうなるねん! 金魚とかスーパーボールとかどうでもええねん。今夜のお祭り行こういう話やねん」

 どうでもいいなら、金魚すくいとか言わなければいいのにね。

「お祭りかぁ、少し心に響くものがあるよ。でもね残念ながらお金が無いんだよ。だから行きたくてもいけないのさ」

「はぁ? なんで家に引きこもっててお金が無いんや。使い道がないやろが?」

 むむ、失礼な。

「太一のせいでお金が無くなったんだけどね?」

「どういうこっちゃ?」

「ほら、ボイスチャット用のヘッドセットを買ったからだよ。にも係わらず狩りの時は太一以外使っちゃ駄目って、イマイチ微妙なんだけど」

「ああ、それかぁ、確かに今月買ってたな。ってそれはしゃーないやろが、オレの華麗なネカマプレーがバレるやろが」

「それって、僕にはまるで関係ないよね……」

「そうとも言うな!」

 えばって言うな!

「そういうことだから、1人で行ってくるといいよー」

「そんな寂しい真似出来るか。ああ、しゃーないなぁ。心優しいオレが奢ってやるさかい、一緒に行こうや」

 おお、太一が優しい。

「うーん。そう言われると行っちゃおうかなって気になるね。でもさ縁日の屋台って高いじゃない。それを全部奢って貰うのはさすがに気が引けるし、悪いから今日は諦めるよ」

「変なところで律儀やなぁ。しゃーないオレも諦めるわ。雪が行かないのに行ってもツマランもん」

「うん、ゴメンねぇー」

「あいあい」

 そこで、電話が切れた。

 太一に悪い事しちゃったかな。でも、焼きそば1つで500円だからね。

 何品も奢ってもらう訳にはいかないよ。



 さてと気分を変えて、そろそろお昼の準備でもしようかな。

 そう、思った瞬間、又スマホが鳴った。

 今度は楓ちゃんだったのですぐに出る。

 別に贔屓なんてしてないんだからね! とツンデレっぽく言い訳しておくよ。

「もしもし、雪ちゃーん?」

「違うよー」

「そんな綺麗な声は雪ちゃん以外居ないからね!」

 あれれ、すぐバレたよ。そんなに特徴的なのかな?

「あはは、楓ちゃんは鋭いね!」

「もう、そんなことはいいんだよ! それより今晩暇ぁ?」

 今晩? ってことは……

「まさかお祭りのお誘い?」

「おお! ほわほわの雪ちゃんにしては凄いね。どうしたの?」

 楓ちゃんの中で僕がどういう扱いなのか是非聞いてみたいね!

「きっと、楓ちゃんと違う成長の賜物だと思うよ」

「むぅー。雪ちゃんどういう意味!」

「あれだよ。子供は夜に出掛けちゃいけないの!」

「わたしは、じょしこうせいなんだよ!」

「おお! 初めて知ったよ!」

「むきー! 雪ちゃんの仕打ち忘れないからね!」

 僕の反撃は当然だよね!

「まぁそれは置いといて、結論を言っちゃうけど、お金が無いからいけないんだよね」 

「えええ、雪ちゃん無理なの?」

「うんうん、ちょっと買い物しちゃってね。お祭りに行く資金が無いんだよね」

「はぅ、残念。遥ちゃんと2人かぁ」

「あら? 遥も行くんだ」

「うんうん、毎年行ってるんだよ」

「なるほどね。ごめんよー」

「ううん、仕方ないよ。又今度遊びいこー」

「了解!」

 電話が切れた。

 この様子だと、皆お祭りを楽しみにしてるんだろね。

 でも、ヘッドセット欲しかったし、僕的には概ね問題は無いかな。

 その後、何故か阿部君からも電話が掛かってきた。

 内容は同じだったけどね。

 すっかり電話番号を教えてたのを忘れてたよ。

 いやー、びっくりしたよ。


   

 時間になったので、今度こそお昼ご飯を作ろうとリビングに下りた時だった。

「雪くんちょっといいですか?」

 父さんにソファーから呼び止められた。

 この一言から不幸がはじまるなんて、僕は未だ気付いていなかった。  

  

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もふもふ要素を補給する為に、いきなりコンコン稲荷神! 書いてみました。

良かったら読んで頂けたら幸いです。



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