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すのーでいず   作者: まる太
第一章
11/84

メイプルロード 3

メイプルロード 2 の誤字を修正しました。


「ふふふ。必殺直角カーブ!(車をガードレールにぶつけて曲がるだけ)」

「なんだそれ、汚ねーぞ!」

「勝負の世界は厳しいモノなんだよ。ヒ、ム、ロくん」

「くそー。負けれねー。俺にこの技をださせるとは……ユキ、侮れない奴。奥義ジェットストリームスパーク!(前の車のすぐ後ろにつけて速度を加速させ、コーナーで抜くときに相手の車の胴体にぶつけて跳ね飛ばすこと)」

「あああああ!」

 僕の操る車は氷兄の車に押し出されるようにしてコースアウト、そのままエンジンがストップしてしまう。

 その間に氷兄はゴールしたみたいで。終了の歓声が鳴り響いていた。

「くぅ。何いまのズルだよズル! 進路妨害で無効だって!」

「はぁ? ゲーム自体が禁止してないのだから、それは公式に認められている『仕様』だろ?」

「むむむ。じゃー言えばいいの?」

 むちゃくちゃ悔しい!

「ああっ、さっさと言ってくれ。あまり焦らすと焦らしプレイか! と勘違いしちゃうだろ?」

 ああ、もう……



 何故こうなったのか?

 予想通り、14時前には昼食を食べ終えてしまい。

 僕と氷兄の二人は余らせたお金で暇つぶしにゲームセンターにきていたのだ。

 少し遊んだ辺りで、なにか賭けでもしよぜと氷兄から持ち掛けられ、丁度刺激が足りなかった僕はその案にのってしまった。



 それが氷兄の罠ともしらずに――  



 対戦するゲームはレースゲーム。

 僕も結構自信のあるもので文句はなかった。

 しかし、賭けの内容を聞いて反対することになる。

 氷兄が勝ったら、『お兄ちゃん大好き♪』と感情込めて言うこと。

 なんてふざけた罰なのだ。

 勿論猛反対はしたよ?

 けど氷兄が提示した僕が勝った時の条件が破格だったのである。

 それとは、このメイプルロードにある有名な洋菓子チェーン、パスカルのジャンボシュークリームを買ってくれるというのだ。

 僕の大好きなシュークリーム。

 それもパスカルのジャンボシュー。

 1個300円もする為、僕の小遣いでは手が出しにくい至高の品である。

 ふわふわさくさく、はむっと食べると中からとろーっとしたカスタードクリーム。

 最後の晩餐に頼むものと言われたら、迷わずシュークリームと頼む僕にはこの誘惑はキツイ。

 そんなものを賭けの対象にするというのだから卑怯極まりない。

 賭けを受けるに決まってるじゃないか!

 結果は、ご存知の通り…… 


 

 氷兄の緩んだ顔がムカツク。

 でも賭けをしたのは僕だしなぁ……

 無かったことには絶対してくれないよな。

 大体、台詞が恥かしすぎるんだよ。

 まだ、お兄ちゃん♪ ぐらいなら簡単なのに。

『大好き♪』までつけろとかいうんだから、どんだけ嫌がらせですか!

 ああっもぉ!!

「とりあえず、氷兄ちょっと移動しようよ」

 先程まで騒いでた為、結構注目されてしまっている。

 こんな処であの台詞を言うのはさすがに簡便してほしい。

「え、なんでだ? 別に移動する理由なんてないべ?」

 くー判って言ってるなぁコイツは! ニヤニヤした顔がそれを雄弁に物語っている。

「僕が恥かしいの! 移動しないなら氷兄の棄権とみなして無効にするよ?」

「なんでだよ! それは横暴だろうが。大体勝者は俺だろ? 普通勝者の言う事は絶対服従じゃないのかよ」

「むか! 確かに勝負には負けたけど、何処で言うかまでは決めてなかっただろ! だから僕の好きな場所で言うぐらいは聞いてくれてもいいじゃん。って、そうだ! 考えてみたら時間も決めてないんだから、いつ言っても良いんだよね。今晩、氷兄が寝てる時を見計らって言うことにすればいいんじゃ。うわ、何これ名案!」

「待て待て待て、それはいくらなんで卑怯だろ。常識的に考えて此処でするのが辺り前じゃないか!」

「へぇ、氷兄に常識があるとは知らなかったなぁ?」

「あるに決まってるだろうが、俺をなんだと思っているんだ!」

「うーん。変態?」首を傾げてニコリと言ってやる。 

「うわ、ひど。何それめっちゃ傷つくんですけど……」

「時として、真実は人を傷つけるらしいしね」

「アホか! ああもう判った。移動すれば良いんだろ。なんだか納得出来ないなぁたく。で、どこまで行けばいいんだ?」

「うんとね」

 僕はキョロキョロ周りを見渡す。

 そして、手頃なあまり人気がなさそうな処を発見した。

「付いてきて」氷兄は僕の後ろを大人しくついてくる。

 よっぽど、言って欲しいらしい。


 

 着いた場所は、お手洗いに通じる通路だ。

 上手く店内の死角になっている場所だった。

 更に、氷兄に通路を封鎖するように立ってもらう。

 氷兄は紙袋を下に置いて、準備万全とでもいうように両手を広げて待っている。  

「じゃー。言うよ……」

「おう♪」

 こう宣言すると言いにくいなぁ。

 頬が赤くなってきてるのが判る。

 ああもう、何でこうなるかなぁ(僕のせいです、はい)

 此処まで引っ張ってきてやっぱり無理は納得しないだろうな。

 こうなったらアレだ。男は度胸!

 軽く息を吸う。

「お、お兄ちゃん。大好き♪」

 うわぁ。自分で言って超恥かしい。顔、完璧真っ赤だ。

「…………………」    

 あれ? 氷兄の反応が無い?

 こんな恥辱なマネさせて無反応ってどういうことだよ。

 まるで僕が馬鹿じゃないか!

「ちょっと、氷兄なんか言ってよ!」

 氷兄はボーとしたまま、心此処に在らずという感じになっている。

「おーい。どうしたんだよー」ポンポンと肩を叩くとやっと現実に戻ってきた。

「雪ぃ!」そう言うなり急に抱きついてきた。

「ちょ、何すんの! 苦しいって。どいてよ!」

 180cmの大男の力は強く、僕の力ではビクともしない。

「ああ、もうお前可愛すぎるだろ。なんなのそれ?」頭をなでなでしてくる。

「そんなの知るか! さっさとどいて!」

「手放したら、雪を抱けないじゃん」

「その理屈オカシイだろ! もういい加減しないと母さんに言うよ?」

 氷兄の背筋がビクンと固まり、心底情けない顔をする。

「ううううう。俺の雪をかえせーーー」訳の判らないこと言いながらやっと僕を解放する。

「いつから僕は氷兄のモノになったんだ! もう発情しないでよね。唯でさえ変態なんだから、これ以上悪化するんなら、僕の半径5m以内立ち入り禁止にするよ!」

「酷い、それだけは簡便してくれ。ただ兄妹で仲良くしてるだけなのに」

「全然判ってないね。少しは反省しろっていってるの!」

「判った、判ったから。海よりも山よりも深く反省してるからそう怒るなって。お詫びにパスカルのジャンボシュー買ってやるからさ、それで手を打たないか?」

「マジで!?」

「ああ、マジもマジ大マジだから、これで良いだろ?」

 一瞬にして不機嫌が直る、シュークリームって魔法のお菓子だね。


 

 ジャンボシューを買って貰った僕が『お兄ちゃん大好き♪』と素で言ってしまい、再び抱きつかれて頭を撫でられたのは痛い話だ。

 その後の僕は終始ご機嫌だったのは言うまでもない。

この3部、作者ノリノリで書いてました。

書いてる本人が一番楽しかったのかも。


※ 誤字、脱字、修正点などがあれば指摘ください。

評価、コメントも是非にです。


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