表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
日常のち冒険~俺は世界を超えて幼馴染を救う~  作者: ヌマサン
第4章 ローカラト防衛編
88/251

第70話 直哉出生の秘密

どうも、ヌマサンです!

今回は直哉の誕生秘話的な話が出てきます……!

それでは第70話「直哉出生の秘密」をお楽しみください!

「……とまあ、こんな感じだ」


 ウィルフレッドさんがため息をつきながら俺たちの方を振り向いた。親父たちの話しが終わった時には陽は真上に昇っていた。


 そして、親父たちの過去の話を聞いた俺たちは複雑な心境だった。


「親父、途中でユメシュの話が出てたけどどこで聞いたんだ?」


「ああ、それはな。直哉と紗希が居なくなった日に刑務所の中でな」


 ……刑務所の中?え、どういうことだってばよ?


「刑務所の影からユメシュが出てきて、お前たちが遺跡を通ってこの世界に行ったことを聞かされた時についでに聞いたんだよ」


 親父は首をゴキゴキと鳴らしながら、静かな声でそう言った。


「そういえば、お父さんは竜の国に向かった後は何してたの?」


 そうだ。紗希の言った通り、まだそのことを聞いてなかった。


「俺はあの後、竜王にブローチを見せたら監禁されてしまってな……」


 俺たちは親父の話の続きを静かに待った。監禁とか物騒な……。


「どうも、竜王は娘のフィオナを倒した俺を気に入ったらしくてな。『娘を娶って、この国に留まると言うまで牢から出さない』なんて言われてな。俺はずっと牢屋にいるのは嫌だから即オーケーを出したんだ」


 ……それで出られなかったのか。というか、そんなに結婚とかって簡単にオッケーして良いモノなんだろうか?


 それはさておき、親父くらい強いのなら17年前の加勢に行くことくらいは出来そうなものだけど……


「お、直哉。たまには鋭いところにも気が付くな」


「エ、エスパー……?」


 親父はエスパー何だろうか?心を読むのは止めてもらいたい。まさか、俺また考えてることが顔に出ていたんだろうか……?


 あと、『たまには』っていうのは余計だと思う。


「17年前の時点ではギリギリ俺はこの世界に居なかった。今、ウィルフレッドの話を聞くまではそんなことになってるとは知らなかった。初耳だ」


 親父はその後、17年前に何があったのかを話してくれた。


 竜の国から出られない親父は竜王の娘であるフィオナさんを嫁に貰って、竜の国で暮らすことになった。


 どうも、親父はフィオナさんにべた惚れされたらしい。最初はそれが鬱陶しかったんだそうだが、熱心に世話を焼いてくれるフィオナさんに徐々に惹かれていったらしい。


「ま、男は単純な生き物だからな。自分を好きでいてくれる女を好きになるもんだ」


 皮肉ったようなことを言っているが、親父の表情は穏やかなものだった。


 話は戻って、親父がフィオナさんと結婚した半年後に妊娠していることが発覚したらしい。


 竜人族の妊娠期間は丸2年と人間から見れば長いが、平均寿命が300年近くある竜の一生から見れば短いものだそうだ。


 そして、2年の時を経て生まれたのが……俺らしい。


「だから、お前は竜の力を一部だけだが使えるというわけだ」


 ……『わけがわからないよ!』と言いたい所なんだが、それを聞いてもの凄いストンと腹に落ちるものがあった。


「あ、親父。もう一つ聞いても良いか?」


「何だ?」


「夢に出てきた黒い竜なんだが……」


 そう、日本に居る時とギケイにやられて死にかけていた時に夢の中に出てきた黒い竜だ。


「……それはフィオナだな。黒い竜は竜王の直系であるという何よりの証拠なのだ」


 親父はそう断言した。でも、言葉遣いとか話の中で聞いた限りのフィオナさんとはかけ離れた丁寧なものだったけど……


「そういえば、フィオナさんは?親父が日本にいる間心配したんじゃないのか?」


 さすがにフィオナさんが"お母さん”であるという実感が湧かないため、引き続きフィオナさん呼びで行くことにした。


 親父の表情は俺が言った言葉の後、影を落として一気に暗くなった。


「フィオナは死んだよ」


 親父のその声が辺りの静寂に響く。親父のその後の話で俺を生んだ直後に亡くなったそうだ。


 そして、生まれた直後の俺は魔力量が平均の10倍近い量を保有していたらしく、いつ死んでもおかしくなかったんだそうだ。


 治療法としては魔力の少ない土地に30年療養すれば完治出来る。ただ、魔力のない場所であるなら15年ほどで治ると言われていたらしい。


 なぜなら、この世界の人間を含めた生物は呼吸と共に魔力を取り込むため、魔力を補給しにくい場所で暮らさせるのが一番手っ取り早い治療法だったからだ。


「その時、古い文献を竜の国の図書館で漁っていたら、あの古代遺跡に行きついたというわけだ」


 親父はあの遺跡があった場所を指差した。


 どうやら、あの遺跡の魔法陣には魔力のない世界に繋がっていると書かれていたんだそうだ。


 親父は行くべきかを迷った末に俺をより早く治すために遺跡の魔法陣を通ったらしい。ただ、その魔法陣の前には守護者がいるらしく、それを倒さないと魔法陣は通れない仕組みになっているらしい。


 そして、遺跡を抜けた先が俺たちのよく知る()()()()で、その神社にたまたまお参りに来ていた母さんと出会ったらしい。


 その後、母さんに一目惚れした親父は猛アタックして半年で結婚をすることになり、その時に紗希が生まれたんだそうだ。


「じゃあ、ボクと兄さんは……!」


「ああ、お前たちは異母兄妹だ。しかも、生まれた世界が異なる。直哉はこちらの世界だが、紗希は日本だ」


 俺と紗希は何も言わずに数秒間見つめあった。


「……今まで隠していて悪かったな」


 俺と紗希は親父に謝られた。どうやら言い出そうにも中々言い出す機会がない上に、言い出しても信じてもらえないだろうと思っていたから口に出せなかったんだそうだ。


「「親父は悪くない」」


 俺と紗希はそう何度も言ったのだが、親父は何度も謝って来た。


「お前が飲んでいた薬も魔力を奪う効果のある代物だ。竜人族に伝わる秘薬らしくてな。それを15年分持って日本に行ったんだ」


 俺が食後に飲んでいた薬は竜人族の秘薬だったことがたった今、判明した。


「……お父さん。お母さんは今どこに居るの?」


 紗希の言う通り、母さんは今何をしているのだろうか?


「ああ、母さんはまだ日本だ。母さんは遺跡のある場所、つまり神社の奥に入ることが出来なかった。まるで結界でも張られてるみたいに、壁に激突するような音が聞こえていた。俺も連れていくとしたが、今度は俺が神社に戻れなくなっていたんだ」


 母さんはまだ日本なのか。でも、呉宮さんやみんなの家族も日本に残してきたままなんだよな。これは必ず、日本へ帰らないといけないな。


「話はこれで終わりだ。直哉もイマイチ実感が湧かないかもしれないが、今まで通りに、普通に過ごしてくれればいいからな」


 親父からはそう言われたが、俺は今日は色々あり過ぎて頭が追い付かない。俺は元々こっちの世界の生まれで、母さんが竜王の娘のフィオナさんで夢の中の黒い竜。そして、何より紗希とは異母兄妹。


 ……にしても、ここで一つ疑問が残った。


 ――俺たち7人は異世界に来れたのに、母さんが遺跡に入ることすら出来なかったのはなぜなのか……だ。


 俺はしばらく考えてみたが、全く分からなかった。


 その後、流れ解散で俺たちはそれぞれ、家に戻った。


 俺は紗希と呉宮さんの二人と一緒に家に帰ると、ラモーナ姫とラターシャさんが1階で料理をしようというのか、食材を並べていた。


「あ!なおなお、さっきー、さとみん!おかえり~!」


 ラモーナ姫は俺たちの帰りに気が付くと駆け寄ってきた。


「料理、作るんですか?」


「そうそう、ラターシャがどうしてもっていうからね~」


「姫様ッ!」


 ラモーナ姫が機嫌良さそうに話しているのをラターシャさんが2階へと引っ張っていってしまった。


「兄さん、この食材どうしようか?」


 紗希は放置されたままの食材を手に取り、俺にそんなことを聞いてきた。


「じゃあ、今日は俺が何か適当に作るか」


「分かった。にしても、何か兄さんの料理食べるの久しぶりな気がする」


 そういえば、最近は紗希が作ってくれることが多かったから俺が作ることは無かったな……。


「ね、ねえ、直哉君!今日はその……昼ごはん、私が作ってもいいかな?」


 呉宮さんが胸の辺りで拳を握りながらそう聞いてきた。


「それじゃあ、折角だし呉宮さんにお願いするよ」


「うん!任せて!」


 呉宮さんが袖をまくり上げながら鼻歌を歌って料理を作り始めた。


「兄さん、お昼できるまでどうしようか?」


「そうだな、一旦部屋に戻って換気と簡単に掃除でもしてくる。紗希の部屋もしてこようか?」


「……うん、お願い!」


 紗希は一瞬、つっかえた感じだがどうかしたんだろうか?というか、さっきから目を合わせてくれない。


 俺はとりあえず、気にすることなく階段を上がって俺の部屋に入った。まあ、俺の部屋というか、俺と呉宮さんの部屋といった方が正しいか。


 俺は扉を開け放して、窓を開けて新鮮な空気を入れる。暖かい空気が良い感じで入って来て、気持ちいい。


 俺はベッドのシーツとかまくらカバーとかを順に取り換えた。ほうきを入口に立てかけて置き、隣の紗希の部屋に行き、窓を開けた。そこからは俺の部屋でやったことと同じことをした。


「ここは先に、紗希の部屋の掃除とか済ませとくか」


 俺は迅速に紗希の部屋の掃除を済ませ、川で洗濯するモノを1階へと運んでおく。


「あ、兄さん。ボクの洗濯物は言ってくれれば自分で運んだのに!」


「ああ、悪い。昼食までに紗希の部屋だけでもキレイにしておこうと思ってな」


 俺は洗うものを籠に放り込み、もう二つ籠を用意した。それぞれ、俺と呉宮さん用だ。


「あ、直哉君!もうすぐで料理が出来るから、ラモーナさんとラターシャさんを呼んできてもらっても大丈夫かな?」


「分かった、呼んでくる」


 俺は再び、階段を上がって3階のラモーナ姫とラターシャさんの部屋へと向かった。俺は階段の手前にあるラターシャさんの部屋をノックした。だが、返事が無いので「開けますよ」と一言添えてからドアを開けたのだが、中にラターシャさんは居なかった。


 俺は隣のラモーナ姫の部屋から声がしたので、ノックしてドアを開けると、そこに広がる風景は……ラモーナ姫がベッドで仰向けになり、その上から四つん這いで姫と向かい合うラターシャさんの姿が。


「お邪魔しました~」


 ラターシャさんは俺が居ることに気が付くと、こちらを向いて顔を真っ赤にしてために「殺られる」と思った俺は全力で扉を閉めて階段を駆け下りた。


 1階に降りると、おいしそうなスープとサラダ、パンが並んでいた。


「直哉君、二人はどうだった?」


「ああ~、取り込み中だから先に食べておいてくれってさ」


 ……ウソである。そんなことは一言も言われていない。だが、取り込み中であることに間違いはないだろう。


 ああ、思考がそちらに裂かれてしまい、呉宮さんと紗希の話に集中できない……!


「ねえ、兄さん。ちょっと、兄さん!」


「……お、おう。どうかしたか」


 突然肩を叩かれたので、何事かと思って紗希の話を聞いてみれば昼食を食べるから席についてくれということだった。


「いただきま……」


「おう、今から昼飯か」


 俺たちが手を合わせて昼食を食べようとした時、親父が玄関から入って来た。


「ほう、上手そうだな」


「ああ、今日は呉宮さんが作ってくれたんだ」


 俺はテーブルに並んだ料理を眺めている親父に話した。


「えっと、料理なんて、めったにしないんだけどね……」


 呉宮さんは照れたように顔を隠してしまっている。そのまま、小声で色々言っているのだが、声までは聞こえないのだった。


「直哉、一口貰うぞ。あ、いただきます」


 俺は親父に取られたスプーンを取り返そうと手を伸ばすが、親父はスープをすくって食べた。


 俺と紗希は親父をじっと見つめた。だが、直後に異変が起こった。


 さっきまで笑っていた親父の顔が青ざめていき、白目をむいて床に倒れた。カランと音を立ててスプーンが床を転がる。


「えっ……」


 俺と紗希はどうすることも出来ずに床に倒れた親父を眺めた。そして、卓上に並んだ料理を見やる。


 見た感じは普通だ。料理からは特に紫のオーラを放っていたりしていない。俺のスプーンは床に転がっているため、紗希のスプーンを使ってスープを一口飲んだ。


 ゴクリ。そんな音を伴って喉を通り過ぎていく。スープの味が染みわたった後に、何とも言えない味が広がって来る。


「兄さん、顔色悪いけど……大丈夫?」


 紗希の声が聞こえてるんだが、返事を出来るほどの余裕がない。


 例えるなら、胃がサザエさんのエンディングの家のような感じに暴れまわっている感じだ。吐き気がするが、胃ごと吐き出してしまうのではないかと感じてしまうものだ。


 ……あ、もう無理。


 俺は全身から力が抜けて、床に横向きに倒れ、意識が遠のいていく。最後に見た光景は慌てた様子で紗希と呉宮さんが駆け寄って来る様子だった。

第70話「直哉出生の秘密」はいかがでしたでしょうか?

直哉と紗希は実は異母兄妹だったという。

直哉は黒髪に金髪が混じってますが、紗希は黒髪ロングですからね……。

――次回「ごめんね、ありがとう」

呉宮さんの料理を食べて気を失った直哉が夢の中で出会ったのは……

更新は11/1(日)になりますので、読みに来てもらえると嬉しいです!

それでは明日で1週間も終わりです!頑張っていきましょう~!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ