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日常のち冒険~俺は世界を超えて幼馴染を救う~  作者: ヌマサン
第4章 ローカラト防衛編
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過去⑧ 戦争の終結

どうも、ヌマサンです!

タイトル通り、今回で魔王軍との戦いは決着です!

それでは過去⑧「戦争の終結」をお楽しみください~!

「おやおや、随分手こずってるみたいだね」


 戦場の中央に降り立つ一人の男。高級そうな純黒のローブを身にまとっている。


「ユメシュ様だ!ユメシュ様が参られた!」


 魔族たちから歓声が上がる。そして、魔物たちの動きが一斉に止まった。その事に、スカートリア王国軍は警戒の色を強めた。


「失礼、私はユメシュ。我が主より、此度の魔王軍の指揮を預かっております」


 ――指揮をしているのは魔王グラノリエルスではないのか?


 そんな声が至る所から聞こえてくる。


「ええ、我が王はジェラルドとかいう人間と交戦中ですので私が軍の指揮を執ることになったのです」


 丁寧な言葉づかいと共にユメシュは一礼した。


「それじゃあ、てめえをぶちのめせば魔王軍の指揮はがた落ちだな」


「そうね。こんな単純な話は無いわね」


 ユメシュの右側からやって来たのはレイモンドとフェリシア。レイモンドは肩に担ぐ大剣から青い血を滴らせていた。


 青い血は魔人や悪魔、魔物たちの血の色である。青い血が滴るというのは、それだけ悪魔や魔人を倒してきたという何よりの証明になるのだ。


 フェリシアは片手に純白の杖を持ち、静かな笑みを浮かべている。


「ほう、君たちからは他の人間とは格の違う気配がしますね。しかも、左右から2つずつとは」


 ユメシュはレイモンドとフェリシアが来た方向とは反対を振り向いた。


「おや、もう気づかれていたか」


「これは楽しくなりそうだ」


 ユメシュの先にはランベルトとシルヴェスターが立っていた。八英雄の内、4人が揃った。これに王国側の兵士は歓喜し、指揮は向上した。


 5人それぞれが武器を構えて敵と向かい合った。


「オラァ!」


 最初に動いたのはレイモンド。大剣での袈裟切りを見舞うも軽々と剣の腹をユメシュに受け止められてしまっていた。


「随分と他の魔族を殺してきたようですが、私は他のやつらと同じだとは思わないで頂きたい」


 ユメシュはレイモンドの大剣を片手で受け止めながらにこやかな表情を浮かべている。


「そうかよ。だが、今からそんな笑みを浮かべる余裕なんて無いようにしてやらぁ!」


 レイモンドの体がウィスタリア色のオーラで包まれた途端、大剣は一気にユメシュの腕ごと胸元を斬り裂いた。


「これは……筋力強化の魔法だね」


 胸元にザックリと傷が刻まれても痛覚がないのかと思うほどに平然としているユメシュ。


 ちなみに筋力強化魔法とは身体強化魔法の一種で自らの腕と足の筋力のみを強化するものである。


 同じく身体強化魔法の一種である敏捷強化魔法は素早さを引き上げ、硬化魔法が肉体の耐久力を引き上げる。


 ドラ〇エで例えるのなら、敏捷強化魔法はピ〇ラであり、硬化魔法はス〇ラ。そして、レイモンドの使った筋力強化魔法はバイ〇ルトである。


 つまり、ユメシュの負傷は、先ほどの一撃よりも遥かに火力を挙げたレイモンドの一撃を受け止めきれなくなったというわけだ。


「僕たちのことを忘れてもらっては困るよ!“煉獄斬(れんごくざん)”!」


 一瞬の隙を突いたシルヴェスターの一撃を受け、黒いローブが赤色の炎で燃え始めた。


 ユメシュはすぐさまローブに付いた火を黒い風で吹き消した。


「“聖霊砲”」


 フェリシアの杖先から光の砲撃がユメシュへと放たれる。しかし、一直線に進む光はネックレスに呑まれた。


「このネックレスはありとあらゆる魔法を吸収してしまうんだ。だから、私に魔法は効かない」


 今度はユメシュからフェリシアへと黒い炎の球体が放たれた。しかし、命中寸前で氷の壁に阻まれた。


「ランベルト……!」


「フェリシア、俺の攻撃とタイミングを合わせるんだ!」


 ランベルトの言葉にフェリシアはコクリと静かに頷く。ユメシュは余裕な態度を崩すことなく、笑みを浮かべている。


「“氷雷槍(ひょうらいそう)”!」


「“聖霊雨(せいれいう)”」


 ランベルトの槍から冷気を纏った雷が放たれる。フェリシアの発動した魔法はユメシュの頭上に幾つもの魔法陣を展開させた。


「無駄ですよ。また、このネックレスが……」


 ユメシュの言葉を遮るかのように繰り出されたレイモンドの大剣を杖で受け止め、押し返した。


「隙アリ!」


 そこをシルヴェスターの炎の斬撃が強襲する。その斬撃はネックレスのチェーンを切断した。


 ネックレスが地面に落ちたタイミングで冷気を纏った雷がユメシュを襲った。


「グッ……!」


 同時攻撃により、ユメシュが後退したところへ無数に空中へと散りばめられた光の弾丸が一斉に降り注ぎ、爆ぜる音が辺りに響く。


 土煙の中から姿を現したユメシュの衣服はボロボロで顔には飛び散った砂ぼこりが汗ばんだ皮膚に付着していた。


「フン!」


 レイモンドは地面へと大剣を叩きつけると地面に亀裂が走り、ユメシュはそれを軽やかなステップで回避した。


「“炎刃(えんじん)”!」


 すかさず、シルヴェスターの剣から炎の刃がユメシュへと吸い寄せられていくように追撃していく。


 戦いは平行線をたどっており、決着が付く気配は無かった。しかし、ユメシュの魔法で勝敗が付いた。


「"暗黒重力波(ダークグラヴィティ)”!」


 ドス黒いオーラによって4人は地面に叩きつけられ、全く身動きが取れなくなってしまった。


「さて、戦いもここまでだ。私とここまでやりあえるとは、人間にしてはよくやったと思うよ」


 勝者の笑みともいうべきか、余裕そうな笑みをユメシュは浮かべながら4人へと近づいていく。しかし、4人から10mほど離れた場所でユメシュの動きは止まった。


「これは……」


「それは僕の影魔法だよ」


 ユメシュが顔を上げてみれば、4人の後ろにボロボロの黒ローブを羽織った男が一人。セルゲイだ。


「なるほど、私の影をこの場に縫い付けたのですか。見事見事」


 ユメシュがセルゲイへ賛辞を送っていると、


「へっ!お前の首は貰っていくぞ!」


 セルゲイの横を一人の剣士が駆け抜けていった。


「サイードさん!奴に近づいちゃダメだ!」


 セルゲイの制止も聞かず、サイードはユメシュの首元目がけて片手剣ショートソードを左へと薙いだ。


「“黒雷(ダークライトニング)”」


 サイードに頭上から黒い雷が落ちた。サイードは悲痛な叫びを挙げながら、黒い雷に身を焦がした。


「ダメじゃないか。分不相応な弱者が前に出ては」


 ユメシュはニヤリと笑みを浮かべながら、今度は黒い炎でサイードの遺体を灰にした。


「別に体が動かせなくても魔法は使えるんだ。さすがに威力は下がってしまうがね」


 セルゲイは今起こったことに絶句した。この男が本気になればレイモンドたちは一撃で消し炭に出来たということに。


「「サイード!」」


 平原にロベルトとシャロンのサイードを呼ぶ声が響く。しかし、響くのは悲しい呼び声だけであり、帰ってくる言葉は――ない。


「……“影移動”」


 セルゲイの静かな怒りを載せた声と共にフェリシア、ランベルト、シルヴェスターの3人はそれぞれセルゲイ自身と、ロベルト、シャロンの影に移動した。


「これは……!」


「近くに3つしか影がなかったので、まずは3人を移動させたんだ」


 そして、レイモンドをフェリシアの影から出現させた。


「さすが“影帝”だけのことはあるな」


 レイモンドの言葉にセルゲイはニコリと微笑みを返した。


「とりあえず、あのユメシュという魔人を何とかしないと……!」


「そうね」


 セルゲイの隣にフェリシアが並んだ。そして、シルヴェスターやランベルト、レイモンドも武器を構えて一列に並んだ。


「5対1……ですか。まあ、いいだろう。我が王がおられる限り、あなた方には勝ち目なんてものは1つも無いのだからね」


 ――――――――――


 場所は移って魔王軍の本陣。


 ここではジェラルドと魔王グラノリエルスが剣を交えていた。


 剣と剣がぶつかる度に火花を散らす。動きは何もかも早すぎて目で捉えられない。正直、戦いの次元が違うような印象を受ける。


「そなた、中々厄介な魔法を使うな……!」


「俺の魔法は魔法を破壊する魔法だからな」


 両者とも戦いが均衡しているが、楽しそうな笑みを浮かべている。本気で戦える相手を見つけたことへの喜び……なのだろうか。


 とにかく、激しい戦闘であるにもかかわらず、本人たちは楽しげな表情を浮かべている。


 そして、一閃。


 両者の刃が朝日で煌めいたと同時に二人の姿は交差し、駆け抜けた。


 両者ともに傷口からボタボタと血が流れ落ちる。剣はお互いの脇腹を斬り裂いていた。


「見事だ、ジェラルド。お前は俺よりも強かったか……」


「いや、俺がここまでの傷を負ったのは、これが……初めてだ」


 魔王グラノリエルスはドサリと膝から崩れ落ちた。ジェラルドもガクリ、と片膝をつき、大太刀に寄りかかった。


 しばらくして、やっとの思いで立ち上がりグラノリエルスの表情を覗き込むと安堵を浮かべたような、穏やかな表情で眠るような表情をしていた。


「おや……我が王は先に力尽きてしまわれたか」


 聞こえた声を辿るように背後を振り返ると、一人の魔人が杖に寄りかかっていた。


「お前は……?」


「私は魔王軍の指揮を預かっていたユメシュという者だ」


 ユメシュは数歩だけ歩いたところでつまずき、倒れた。ジェラルドは慌てて大太刀を構えようとしたが、ユメシュが倒れたのを見て止めた。


「いやはや、5人の人間にここまで追いつめられるとは思いませんでしたよ」


「5人の人間……?」


 ジェラルドは「あいつらか」と、ある者たちの顔を思い浮かべた。


「私ももう長くは無いでしょうから、最後に我が王の顔を見ようと戻った次第でしたが……すでに倒された後だったとはね」


「……それは悪いことをしたな」


 ジェラルドがポツリと落とすように一言を発した。これにユメシュはフフフと不気味に笑った。


「面白いことを言う人間もいるものだな。我々は人間の領土を侵した。そこは当然の報いだとか言うものではないか?」


「ああ、そうだな。だが、それは魔王グラノリエルスと剣を交えて敬意を払うべき男だと感じたからだ。俺は敵に容赦はしないが、敬意を払うべき者には敬意を払う」


 ユメシュは「そうか」とだけ返して、地面に仰向けになりぐったりとしていた。


「魔王様は心安らかに眠っておられるようだが、私は人間を滅ぼすことをあきらめてはいない。もはや、魔力も動く力も無いのに、闘志だけは消えないのだよ……」


 ユメシュはまだ何かを言おうとしていたようだったが、ジェラルドが近づいた時には、すでに事切れていた。


「総司令ー!」


 ジェラルドが呼ばれて振り返ると、騎兵たちが馬を走らせてきた。


「魔王は討伐なされたのですか!?」


「ああ、つい先ほど討伐した」


 ジェラルドは地面に倒れたままのグラノリエルスを見やる。兵士たちもそれを確認して歓喜の声を上げた。


 結局、べレイア平原での戦いは人間側の勝利に終わった。


 人間側の死者は王国軍や騎士団、貴族の私兵、冒険者などを合わせると1万人にのぼった。これは全体の15%に当たる数である。


 対して、魔王軍は魔王グラノリエルス、総司令のユメシュを討たれた上に、魔人や悪魔、魔物を合わせて3万近い数が討伐された。残りの7万近い魔物は統率者を失い、バラバラになって魔族領へと引き上げていった。


 その翌日、スカートリア王国の王都では魔王との戦いでの勝利を祝う祭りが開かれたのだった。

過去⑧「戦争の終結」はいかがでしたでしょうか?

今回で魔王軍との戦いは終結しました。

次回は英雄たちのその後の話です。

――次回「オリヴァーの頼み」

果たしてオリヴァーの頼みとは何なのか。

明日の20時に更新するので、読みに来てもらえると嬉しいです!

それでは皆さん、1週間お疲れさまでした。

どうか、土日で疲れを取ってください……!

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