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日常のち冒険~俺は世界を超えて幼馴染を救う~  作者: ヌマサン
第4章 ローカラト防衛編
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第69話 祝勝会

どうも、ヌマサンです!

今回は祝勝会なので、息抜き回です!

今回の話も楽しんで頂ければなと思います~

それでは、第69話「祝勝会」をお楽しみください!

 今日で魔王軍とのローカラトでの戦いが終わって3日。今は夜風がギルドに吹き抜けて涼やかな空気の中でギルドで祝勝会をやっている真最中だ。


「お父さんが英雄ジェラルドだった!?」


 そんな祝勝会の中、ギルド中に紗希の驚愕の声が響き渡る。だが、驚いたのは紗希だけではない。


 呉宮さん、茉由ちゃん、寛之、洋介、武淵先輩の5人も驚きのあまり声も出ないといった風だった。


「驚くなって方が無理か」


 親父は酒を片手にギルドの1階の木製長椅子に腰かけている。周りにいる冒険者たちは近寄らず、遠巻きにチラチラと様子を窺っている。


 そりゃあ、20年前の英雄が目の前にいるともなると緊張するんだろうな。


「直哉、本当に少しだけだが剣が上達していて驚いたぞ」


 “本当に少しだけ”という部分が(しゃく)に障ったのだが、事実なので反論出来ないのが実に悔しいところではある。


「そりゃあ、紗希に教えてもらってるからな」


「さすがは俺の愛する娘だ」


 親父は恥ずかしげもなく紗希をほめていたが、紗希は呆然としていて、まだ衝撃から立ち直れていないようだった。


「久しぶりですね、ジェラルドさん」


 そう言って親父に声をかけたのはウィルフレッドさんだ。いつもと言葉遣いが違うからウィルフレッドさんだと気付かなかった……。まさかの二人は知り合いだったのか。


「オリヴァーも元気そうで何よりだ」


 あれ、オリヴァーって名前もどこかで聞いたことがあるような……


「もしかして、ウィルフレッドさんって20年前の英雄の『オリヴァー・スカートリア』……ですか?」


 茉由ちゃんが恐る恐るウィルフレッドさんに尋ねた。


「ああ、こいつが20年前の英雄。“死神”ことオリヴァー・スカートリアだ」


「ちょっと、ジェラルドさん……!」


 ウィルフレッドさんが答えるよりも先に親父が勝手に答えてしまったが、その事実は再びギルドを驚きの色に染めた。


 ミレーヌさんに至っては驚きのあまりに手に持っていた料理の皿を落として割ってしまっていた。その割った皿と料理はラウラさんがせっせと片付けている。


「お前、自分の娘にもこの事言ってなかったのか?」


「はい。私がここに来た時はミレーヌはまだ1歳とかだったので、どうせ王宮の事とかも覚えてないだろうということで、別に言わなくてもいいと思ったんですよ」


 ……待てよ、ウィルフレッドさんがオリヴァー・スカートリアってことは王族ってことだよな?


 ということは、ミレーヌさんも王族ってことに……!


 その事にラウラさんも気づいたのかミレーヌさんの隣であたふたし始めていた。バーナードさんは何やら沈んだ表情でシルビアさんと酒を飲んでいる。


 俺はふと『直哉スコープ』を通してギルドを見回してみると愛に溢れていることに気が付いた。そこら中でハートが飛び交っているのが見えた。


 まず、寛之と茉由ちゃんだが、親父とウィルフレッドさんが話している向かい側の席で談笑している。二人は本当に仲良さそうに話している。


 二人のケガの具合だが、寛之は肋骨が岩に挟まれた時に骨が折れていたらしいがラウラさんの治癒魔法のおかげもあって傷は治った。粉砕骨折だったら治らなかったらしく、そうでなくて良かったとラウラさんが言っていた。ただ、念のために治ってしばらくは激しい運動をしてはいけないとラウラさんに釘を差されたと寛之は言っていた。


 茉由ちゃんはの脇腹の傷は何とか塞がった。でも、2週間くらいは寛之同様激しい運動をするのは控えるようにとのことだった。何でも、塞いだ傷が開いてしまうかもしれないとのことらしい。


 そして、今思ったんだが……俺は今、呉宮さんと付き合っている。そして、茉由ちゃんは呉宮さんの妹だ。その茉由ちゃんと寛之が付き合っている。


 ということは、一応だが寛之は俺の義弟になるんだよな……。何か心の中が複雑だ。


 そして、洋介と武淵先輩の二人は親父たちが座っている長机の横にある小二人席のテーブルでパンとシチューを食べながら話に花を咲かせている。


 二人のケガの具合はといえば、洋介は右太ももの骨が折れていたのだが、傷は治癒魔法ですでに治療済み。だが、走ったりすることは傷に響くから安静にしないといけないんだそうだ。


 武淵先輩の方もケガそのものは軽傷で普段通りの生活を送っている。


 俺、二人が食事している風景を見ていて思うんだが……あの二人、傍から見てるとカップル通り過ぎて夫婦にしか見えない。


 あれか、幼馴染の枠組みの中にお互いを入れてしまっているからそれ以上の進展がないという感じなんだろうか?……知らんけど。


 あと、バーナードさんとシルビアさんとミレーヌさん。これは三角関係っぽいな。シルビアさんからバーナードさんへ好き好きオーラが漏れている……ように見える。で、バーナードさんはミレーヌさんのことが好きなんだろう。かなりの頻度でミレーヌさんの方をチラチラ見ている。


 何か二人とも、セベウェルの町廃墟で戦った時とはイメージが変わったな。結構、取っつきにくい印象だったんだけど。


 やっぱり、人って関わってみないと分からないもんだな。……まあ、関わっても分からないことの方が多いけどさ。


 スコットさんもピーターさんも、ローレンスさんとミゲルさんもギルドの入口辺りで、それぞれ食事をして楽しそうにしている。


 マリーさんとデレクさんも料理を持って騒いでいる4人の方へと混じっていった。


 今回の戦いでの冒険者の死者は奇跡的にゼロだった。みんなケガはしていても死ぬことは無くて本当に良かった。


 ちなみに、ロベルトさんはシャロンさんと地下への階段に一番近い席で酒を飲みまくっている。


 ミレーヌさんは奥のカウンターでまだ、魂が抜けたように呆然としている。よほど、自分の父であるウィルフレッドさんが20年前の英雄のオリヴァー・スカートリアだということと、自分がローカラトの町に来る前は王宮にいた事実が受け入れられないのだろう。ラウラさんはミレーヌさんにそっと付き添っている。


「直哉君」


「兄さん」


 俺は突然、左右同時に肩を叩かれて驚いてしまった。振り返ると俺の左には呉宮さん、右には紗希がいた。


 呉宮さんはほぼ無傷、紗希も砂とかで窒息しかけていたが俺が助けたのが早かったから大事には至らなかった。ホントに二人とも無事で何よりだった。


「直哉君。隣……座ってもいいかな?」


「ああ、もちろん」


 俺は長椅子を呉宮さんが座れるくらいの幅を開けて右に寄った。紗希は俺の左斜め前、呉宮さんの真ん前に座っている。


 俺は黙って木製のコップに入った水を飲んでいると、左の腕から肩にかけて温もりを感じた。あと、良い匂いも。


 俺が左を見ると、隣の呉宮さんが俺の方の上に頭を載せて寄りかかって来ていた。もしかして、疲れが溜まっていた……のだろうか?


 心臓が跳ねて、鼓動の速度が上がったのが自分でも分かる。体も熱くなってきた。


「呉宮さん、どうかしたの?」


 俺は恐る恐る呉宮さんに尋ねる。


「えっ!えっとね、何となくこうしてみたくなっただけで……!」


 呉宮さんは顔の下から上までを一気に朱色に染めた後、俯いてしまった。前髪が顔にかかってどんな表情をしているのかがさっぱり分からない。


 そんな時、紗希が机の上に何かをすべらせて俺の元へと渡してきた。妙にニコニコしていて嫌な予感がする。


 何が渡されたのかと見てみれば、ヘアピンだ。


 どういうことか分からなかったので紗希の方を見てみるとしきりにジェスチャーで教えてくれている。


 このヘアピンで呉宮さんの前髪を留めて……顔を覗き込む!?


 覗き込むのかどうかを紗希に確認すると小刻みに首を縦に振ってきた。これ、呉宮さんのリアクションを紗希が見たいだけだろ……


 まあ、試しにやってみるか……


 紗希が満面の笑みでこっちを見ていて、恥ずかしい。そんな気持ちに打ち勝って、俺は垂れてきて顔を隠してる呉宮さんの前髪をヘアピンで留めた。


 呉宮さんは突然のことで驚いていたので、何か申し訳ない気分になった。お互いの顔の距離でいえば、お互いの息がかかるくらい。


「な、直哉君……ど、どうかしたの?」


「……いや、何となく?うん、そんな感じ」


 ちなみに「紗希がヘアピンを渡してきて……」と言おうとしたら紗希が人差し指をクロスさせて『ダメだ』と伝えてきたので『何となく』という言葉を使ってごまかした。


「お、二人とも仲良くやってんじゃねえか」


 後ろから親父に声をかけられて俺はビクッと肩を上下させてしまった。


「二人とも付き合ってるんだってな、紗希から聞いたぞ」


 俺は勢いよく紗希の方を振り向くも紗希は言ってないと顔の前で手を振ってくる。様子からどうやらホントらしいことは伝わってきた。


 親父の方を振り向くと腹を抱えて小刻みに肩を震わせながらうずくまっている親父の姿が。


「親父……」


「カマかけたらこんなにあっさり引っ掛かるとはな……!」


 どうやら、カマをかけてここまであっさり引っ掛かるとは思わなかったらしい。にしても、ここまで笑われるとムカつくな……。


「フゥー、笑った笑った」


 親父は息を吐き出した。その後で呉宮さんに「バカ息子」のことを頼むと真剣な態度で手を突いて頭を下げるもんだから呉宮さんは軽くパニック状態に陥ってしまっていた。


 ……そんなことがあったりしたが、その後も楽しく宴会の時間が過ぎていった。


 そして、夜も更けた頃に祝勝会はお開きになった。


 その日はみんなゆったりと各々の家に帰っていく。だが、帰り際に俺と紗希、呉宮さん、茉由ちゃん。寛之や洋介、武淵先輩の7人は親父に呼び止められた。


「日が昇る時間にアスクセティの森にあった遺跡の前の泉まで来てくれ」


 俺は親父からの言葉に何をするのかと聞き返すと「何、ちょっとした昔ばなしだ」と言われた。一体、俺たちにどんな話をするというのか。


 俺は呉宮さんと部屋が同じだが、ベッドが1つしかないために狭いベッドに二人で寝ている。


 今度、辺境伯から今回の魔物の大群撃退の報酬として入って来る小金貨1枚で新しく部屋にベッドをもう一つ買うつもりでいる……


 そんなことを考えているうちに、いつの間にか眠ってしまっていた。


「兄さん、聖美先輩!起きてください!」


 翌朝、俺と呉宮さんは紗希に起こされて遺跡の前の泉まで向かった。今回はギルドを通ってウィルフレッドさんと一緒に泉までやって来た。


 泉へ行くと親父が大太刀を背中に差して泉を眺めていた。


「どうだ、よく眠れたか?」


 俺たちは静かに頷いた。俺たちが来てすぐに、寛之と茉由ちゃん、洋介に武淵先輩も走って泉までやって来た。


 こうして全員揃ったところで親父は改まって口を開いた。


「こうして朝から集まってもらったのはだな。20年前何があったのかを話したいからだ。そのために25年前から遡っての昔話になる。そして、20年前から17年前までの話はオリ……じゃなくて、ウィルフレッドに語ってもらう」


 ――二人の口から語られるのは、今から語られるのは25年前から今までに紡がれた八人の英雄たちの軌跡。

第69話「祝勝会」はいかがでしたでしょうか?

英雄たちの軌跡というのを明日からになります~

過去編は全11話になります。

――次回「過去① 平民上がりの英雄」

過去編で時間を取るのもあれなので、過去編の11話は次回の更新から毎日1話ずつ公開していこうと思います~

更新は明日、10/16(金)になりますので、読みに来てもらえると嬉しいです。

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