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日常のち冒険~俺は世界を超えて幼馴染を救う~  作者: ヌマサン
第4章 ローカラト防衛編
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第67話 大地崩壊

どうも、ヌマサンです!

今回は直哉たちとヴィゴールの戦いです!

――果たして戦いはどうなるのか。

それでは第67話「大地崩壊」をお楽しみください~!

「“聖砂爆炎斬”!」


 俺は全力の一撃を放った。正直、俺が扱える技の中ではこれが最高火力だ。


 だが、俺の全力の一撃はヴィゴールの大斧で軽々と防ぎ切られてしまった。


「兄さん!」


「ナイス、紗希」


 俺は紗希の腕の中にいるラモーナ姫を見ながらそう呟いた。ヴィゴールが俺の放った“聖砂爆炎斬”に気を取られている間に紗希が敏捷強化でラモーナ姫を救出したのだ。


「どう……して……」


 ラモーナ姫は「どうして戻って来たのか」と言いたげだった。その理由は紗希に言われたからだ。


 ~~~~~~~~~~


 中央広場へ向かう途中で、紗希が立ち止まった。


「紗希?どうかしたのか?」


 紗希は俯いたまま何も言わずにいる。俺は紗希が話し始めるまで何も言わずに待った。


「兄さん、ボクはラモーナ姫を置いて行けないよ」


 紗希は静かに感情を載せた声でそう言った。


「だが、俺たちが行ったところで何が出来るんだよ。それこそ、足手まといになるだけだろ」


 正直、ラモーナ姫がどれほど強いのかを見たわけではないからよく分からないが、戻るのはラモーナ姫の考えと意思とを踏みにじる行為だと俺は思う。


 ……というのは建前で、俺は逃げ出したいだけなのだ。戦って紗希や呉宮さんやみんなに犬死するようなマネだけはさせたくないというだけのことだ。


「……兄さんは逃げてくれていいから」


「あ、おい!紗希!」


 紗希は俺が止めようとした時にはもう、走って北門へ向かっていってしまった。


「呉宮さん!紗希、連れ戻してくるから先に……」


 俺が紗希を追いかけようとすると、呉宮さんに腕を強く掴まれた。


「呉宮さん?」


「私も行く!」


「だけど……」


 俺は呉宮さんの瞳を見ていたら、言おうとしていた言葉が引っ込んでしまった。


「分かった、一緒に行こうか」


「うん!」


 俺と呉宮さんと二人で城門へと向かおうとすると、


「僕たちも行かせてもらうからな」


「もちろん、私も行きます」


 そんな声が背後から聞こえてきた。誰がそれを言ったかなんて声を聞けば分かる。


「……寛之、茉由ちゃんも……!」


 俺は二人も来てくれるというのには少し心強く感じた。


「私たちも行くわよ」


「だな、俺と夏海姉さんだけ逃げるわけにもいかねぇし」


 さらに武淵先輩や洋介まで行くと言い出した。正直、何が出来るかは分からないけど、戦力は一人でも多い方が良いだろうか。


「よし、まずは紗希に追いつこう」


 俺たち6人は紗希に追いつくために走った。紗希は敏捷強化でも使ったのだろう。一向に姿を捕らえることが出来ない。


 しかし、城門の陰にサーベルを抜き払って機を窺っている紗希を見つけた。俺たちは紗希の背後に回ってトントンと優しめに肩を叩いた。


 紗希もこれには驚いたのか肩をビクリと上下させたが、俺の顔を見て落ち着いた様子だった。


「兄さんも来たんだね。みんなも」


 正直、寛之や茉由ちゃん、洋介に武淵先輩なんて、ラモーナ姫に会ったのは今日が初めてのはずなんだ。


 なのに、助けに来るっていうのはお人よしが過ぎると思う。でも、それがみんなの良いところなんだよな。


「紗希、今どんな感じになってる?」


「……ラモーナ姫が大斧の人に話しかけに行ってるところ。あっ!何か首絞められてる!」


 紗希の言葉を聞いて、俺も慌てて様子を確認した。見ると、確かにラモーナ姫がヴィゴールに片手で持ち上げられて首を絞められている。足もバタバタとさせてもがいている。


 ……これは一刻を争う事態だろう。


「紗希、俺が全力で一撃を放つ。その隙に敏捷強化でラモーナ姫を」


「……分かった」


 俺は他のみんなにはラモーナ姫を助けるまでは城壁の陰に隠れていてくれるように頼んだ。


「“聖砂爆炎斬”!」


 俺は竜の力を解放した上で、バーナードさんと戦った時の一撃を再びサーベルに付加(エンチャント)してヴィゴール目がけてぶっ放した。


 ヴィゴールは俺の狙い通りに防御の体勢を取った。その間に紗希がラモーナ姫を無事に救出して戻ってきたのだった。


 ~~~~~~~~~~


 ――時は今に戻る。


「ここは……あれ?さっきー……?」


「ご無事ですか?ラモーナ姫?」


 紗希は心配そうに腕の中に抱えているラモーナ姫を見つめていた。薄くではあるが、ラモーナ姫の頬が赤くなっているように見える。


 ……これは恋が始まりそうな展開だ。でも、恋に落ちる音なんてなかった。


 だが、今の紗希の恰好って男装っぽいからな……ホントに恋が始まるんじゃなかろうか。


 俺は紗希の異性間の恋愛なら全力の全力を持って邪魔をしたが、女の子同士なら……アリだな。


 紗希×ラモーナ姫?それともラモーナ姫×紗希なのだろうか?


 ホント、ラモーナ姫も紗希も攻めと受けのどちらでも絵になるから良いよな……!


 いや、待てよ。ここにラターシャさんが入って修羅場になったりして……!


 ああ、ダメだ。二人の百合に溺れちゃう~♪


「……君!…哉君!直哉君!」


「ほえ?」


 俺は呉宮さんに肩を叩かれていることに気づくまでに少々時間がかかってしまった。


「『ほえ?』じゃなくて、今は戦闘中だよ!」


「ああ、そっか」


 ……何だろう。この深夜テンションから覚めたような気分は。


 いや、今はこのヴィゴールとのことをどうするかだ。


「オマエタチ、戻ッテ来タノカ……」


「ああ、やっぱり見捨てることは出来ないって可愛い妹に言われちゃあ戻るしかないだろ。常考」


 俺がそう言うと、ヴィゴールは大斧を構えて戦闘態勢だ。


「とりあえず、ラモーナ姫とラターシャさんを……」


 俺が後ろを振り返って瓦礫の方を見てもラターシャさんの姿は無かった。


「直哉君が何か考え事してる間にラターシャさんは夏海先輩が重力魔法で瓦礫をどかして、弥城君が担いで城門まで運んでいったよ。あと、ラモーナ姫は紗希ちゃんが城門まで運んでいったからね」


 ……バァカな!俺が百合ワールドに行っていた間に段取りよく進んでる……だと!とりあえず皆、グラッツェ!


 そんなことを頭の中で行っている間に全員が武器を構えた状態で集合した。とりあえず、作戦は無いが配置ややることをみんなに伝えておこうか。


「呉宮さんは後方から弓で援護、寛之は攻撃されたら障壁を展開して呉宮さんを守ってくれ」


「うん、任せて!」


「ああ、分かったよ」


 呉宮さんは親指を立ててグッとこちらに向けている。可愛い。寛之は……どうでもいいや。次だ次。


「紗希を先頭に俺、茉由ちゃん、武淵先輩、洋介の5人でヴィゴールに近接戦を仕掛けよう」


 紗希や茉由ちゃん、洋介、武淵先輩は静かに短く頷いた。


「作戦ハ決マッタカ?」


「ああ、始めよう」


 ヴィゴール相手に出し惜しみは出来ない。出し惜しみは死に直結する。


 俺もそういうわけで、すでに竜の力は解放している。少なからず、5分以内に決着を付けなければならない。


 俺はサーベルを引き抜き、ヴィゴールに突貫した。しかし、俺よりも早く後ろから敏捷強化をした紗希に追い抜かれた。


 紗希は近づくや否や、相変わらずの凡人には目にも止まらぬ剣速で何度も斬撃を見舞っているがヴィゴールに軽々とあしらわれてしまっている。


 俺は紗希に続いて斬撃を見舞った。


 きちんと邪魔にならないように、紗希が疲れてきたであろうタイミングで入れ替わりで斬りこんだ。


 だが、あっさりと大斧で受け止められてしまった。


 そりゃあ、俺の見え見えの斬撃が通じたら紗希があそこまで息が上がるほどに攻撃を仕掛けるほどでもないか。


「オマエモ竜ノ力ヲ使エルノカ」


「まあ、あの二人ほどじゃないだろうけど……な!」


 俺はヴィゴールの斧の柄を蹴って、紗希のところまで離脱した。


『相手の間合いに長居は死を意味する』


 これは紗希が修行の時に言っていたことを忠実に守っただけだ。


 だが、紗希はそんな自分が言っていたことも忘れるほどに必死に斬りかかっていたのか。


 これだけでもヴィゴールの化け物っぷりはひしひしと感じられる。


「“氷斬”!」


 冷気を纏った斬撃がヴィゴールに襲い掛かる。


「フン!」


 ヴィゴールは大斧でそれを受け止めた。しかも、片手だ。余裕さがにじみ出ている。


「きゃっ!」


 茉由ちゃんは、ヴィゴールに一息で木の葉を吹くように軽々と弾き返されてしまっていた。


 ……そうか。俺は竜の力を解放しているから、茉由ちゃんみたいに軽くあしらわれなかったのか。


 茉由ちゃんと紗希はパワーそのものは同じくらいのものだが、紗希が茉由ちゃんのように弾き飛ばされなかったのは、それを素早い動きでカバーしていたからか。


「やあっ!」


「“雷霊斬”ッ!」


 そこへ武淵先輩の槍による真っ直ぐな突きと洋介の雷を纏った斧槍(ハルバード)が。


 しかし、武淵先輩は槍の柄を掴まれ右方向へ投げ飛ばされた。続く洋介も力負けして地面に叩きつけられて数メートル後方へ転がされた。


 ……これは負けバトルだ。


 今の感情はD〇5の「ほっほっほっ」が口癖の人と初めて戦った時の気分に似ている気がする。


 ホントに負けバトルじゃないかと思わないとやってられないほどに俺たちとヴィゴールとの間には実力差があった。


 ゲームだったら「何だ、負けバトルか」くらいで終わらせられるが、今そうなるのは『死』を意味する。


 これはマジに何とかしないといけない。


『誰一人欠けることなく、この場を切り抜けること』


 これを俺は最優先にしないといけない。


 そうなるとヴィゴールをここで倒す必要はないことは分かる。


 ならば、足止めをして時間を稼ぐのがこの場の最良だ……!


 時間稼ぎ。それすらも出来るか怪しいところだが、このまま戦っても死ぬだけだ。


 こうなるだろうことが分かっていたから、北門を離れようと思ったんだがな。


 でも、あの時の俺に紗希を放っておくことは出来なかった。妹を見捨てる兄などもはや兄ではない。


 まあ、過去を悔やんでも仕方ないか。とりあえず、時間稼ぎだ。


 正直、“聖砂爆炎斬”でも軽々と防ぎ切られたからな……どの技も通じる気がしない。


「“氷刃”!」


「“雷霊砲”!」


「“重力波(グラヴィティ)”!」


 俺がうじうじと考えている間に茉由ちゃんや洋介、武淵先輩は攻撃を仕掛けていた。


 結果は言うまでもなく、ヴィゴールにはまともなダメージが入ったような様子は見られない。


 紗希も3人の攻撃が終わると同時に敏捷強化での素早さを活かして、一撃離脱(ヒットアンドアウェー)を繰り返していた。


 呉宮さんからの弓の援護もあって手数は多い。寛之もヴィゴールの進もうとする位置に障壁を出してわざと砕かせていた。


 そして、その砕けた障壁の破片をヴィゴールに飛ばしていた。


 俺も黒い風をサーベルに纏わせてみんなの攻撃とタイミングを調整しながら、絶妙なタイミングで斬撃をくらわせていく。


 一撃一撃は取るに足らないカスみたいな攻撃だが、異常なまでの手数だ。


 これにはヴィゴールも戦いにくそうにしていた。俺は特に何もしてないが、結果オーライだな。


「何だ!?」


 突然、地面が泣いているかのような音を響かせながら揺れ始めたのだ。


 そして、発生源はヴィゴールだった。揺れている場所は俺たちのいる場所だけ。


「“地よ砕けろ(アースコラプス)”!」


 大地が隆起させたり、沈下させたりと振り動かされたことで俺たちのいた場所は文字通り崩壊した。


 シェイクされた大地にはヒビに右大腿部を挟まれた洋介、洋介から少し離れた場所でヒビに胴体ごと挟まれた寛之。その近くで呉宮さんの下半身が小さめの岩と土ぼこりに埋もれている。


 呉宮さんと似たような感じだが、体が半分近く埋まり今にも窒息しそうな紗希、武淵先輩は打ち所が悪かったのか、盛り上がった大地の頂上で少量だが、血を吐いて倒れている。茉由ちゃんは先のとがった岩に脇腹を貫かれている。


 一方で俺は、上から崩れ落ちてきた直径2mくらいはあるだろう岩石に押しつぶされていたが、竜の力のおかげもあってか大した傷にはならなかった。


 とりあえず、俺の上にある岩を払いのけて全員に治癒魔法を付加(エンチャント)し終えたのが今の状況だ。


 そこから急いで一番近くにいる紗希を岩をどかして砂を払って助け出した。


 ……が、このタイミングで竜の力が切れた。時間切れだ。


 辺りを見回しても全員生きているのは奇跡だと思う。でも、みんな戦いの継続は不可能なほどの重傷だ。


 洋介と寛之の様子だと何本も骨は折れていそうだし、武淵先輩も血を吐いて気を失ったままだ。紗希も息はしているが目を覚ます気配はない。そして、茉由ちゃんも岩に脇腹を貫かれてる。呉宮さんが軽傷なのはせめてもの救いか。


「サスガニ加減ガ過ギタカ。次ハモット威力ヲ上ゲタ方ガ良サソウダナ」


 ヴィゴールが俺たちの近くまでゆっくりと歩いてきてそう言った。


 これで加減したといったが、もしそうなら次に待つものは確実に()だ。


 ……この状況は詰んでいる。


 俺はふと、そんなことを思った。それだけが頭の中を占拠してしまった。

第67話「大地崩壊」はいかがでしたでしょうか?

予想通りかもしれないですが、直哉たちでは歯が立たずという結果に……!

――次回「最強の英雄の帰還」

果たして最強の英雄とは誰のことなのか……?

更新は10/10(土)になりますので、お楽しみに!

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