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日常のち冒険~俺は世界を超えて幼馴染を救う~  作者: ヌマサン
第4章 ローカラト防衛編
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第62話 ローカラト市街戦

どうも、ヌマサンです!

今回は直哉視点での戦闘実況がメインになります。

ついに直哉たちの前に魔人が姿を現す……!

それでは第62話「ローカラト市街戦」をお楽しみください!

「ケガ人の方はこちらへどうぞ!」


 町の中央広場に呉宮さんの声が響く。その脇では汗を流しながらラウラさんがケガ人に治癒魔法をかけている。


 紗希、茉由ちゃん、洋介、武淵先輩の4人は東西南の3方向から中央広場へやって来た市民を北門への誘導することに務めていた。


 なので、少し中央広場から遠ざかっている。


「直哉、人に酔いそうで気分が悪いんだが……」


「俺も同じだが、今はそんなことを言ってる場合じゃない……」


 俺と寛之は人酔いに耐えながら、呉宮さんとラウラさんの近くに控えていた。


「お兄ぢゃ~ん!」


 どこだろう、助けを求める幼女の声がする。よく辺りを見回してみれば、こっちにエミリーちゃんとオリビアちゃんが顔から出るもの全部出しながら走って来るではないか。全く、可愛らしい顔がめちゃくちゃだ。


「二人ともどうかしたの?」


 俺は走ってきた二人が落ち着くまで頭を優しく撫でた。


「私も頭なでなでされたい……」


 そんな呉宮さんの呟きが聞こえてきたが、今は後回しにさせてもらおう。


「二人とも深呼吸しようか。先に、今体の中にある空気を全部外に出しちゃおうか」


 俺は身振り手振りを添えて二人に説明した。二人は息を吐いては吸ってを俺の指示通りにしてくれた。


「それじゃあ、二人とも何があったのか説明してくれるかな?」


「お母さんが……!」


 俺はエミリーちゃんからセーラさんが魔物と戦ってることを聞いた。だが、相手はゴブリンやコボルトだ。セーラさんが不覚を取るような相手ではない。それに東門へはミレーヌさんやロベルトさんがすでに向かっているし、大丈夫だろう。


「大丈夫だよ、二人のお母さんは強いから魔物なんかすぐにやっつけて帰って来るよ」


「……ホント?」


 さっきまで何も言わずにギュッと俺の服の裾を握っていたオリビアちゃんが口を開いた。俺はそれに対して頷いて返した。


「だから、二人は何も心配しなくていいからね」


「「うん!」」


 よし、二人に笑顔が戻った。もう大丈夫そうだ。


「直哉、二人は大丈夫そうか」


「ああ、もう大丈夫だ」


 俺は二人を抱きかかえて呉宮さんとラウラさんの元へ向かった。


「呉宮さん、二人と一緒に居てもらって大丈夫?」


「うん、それは大丈夫だけど……どうかしたの?」


 俺は何も告げずにある場所へ向かおうとしていたのだが、呉宮さんに怪しまれてしまった。まあ、別に大したことじゃないし言っても大丈夫か。


「いや、北門の様子を見てこようと思ってさ」


 ここへ来る途中、洋介に言われるまで何とも思わなかった。


 何と言われたのかと言えば、『東西南の三方向から攻めてきて北門からは全く攻撃して来ないなんて、まるで北門に誘導しているみたいじゃないか?』と言われた。


 俺としてはその可能性は無いとは言い切れないと思った。なので、偵察だけでもしておこうかと思い立ったわけだ。


「北門?私たちはここから北門に町の人を逃がすように言われてるでしょ?」


「それはそうなんだけど……」


 俺が呉宮さんに事情を説明した時、南から悲鳴が聞こえてきた。まさか、魔物たちがここまで来てしまったのだろうか?


 だとしたら、ここはもう安全ではない。


「魔人だー!」


 そんな声が群衆の中から聞こえてきた。本当に魔人なのだとしたら俺たちじゃ勝てない。勝てないどころか全員殺されてしまうだろう。


 いや、俺が竜の力を解放すれば何とかなるか……?分からんけど。


「ゲーリー、手を出すな。人間どもは俺が片付ける」


「いや、俺がやる」


 中央広場の端で二人の魔人が口論をしている。その二人は明らかに纏っているオーラ?みたいなのが違う。


「直哉、あれ……」


「魔人だってよ。それなら、マジでヤバい奴かもしれないな」


 俺は寛之と顔を合わせた。寛之も冷や汗を流している。この世界に来てからというもの、俺たちもそこそこピンチを切り抜けてやって来た。


 だが、今までの相手はすべて人間だ。もちろん、魔物とも戦ったりした。


 だが、そのすべてにおいてあの二人の魔人は格が違う。俺は竜の力を使えば生き残れるだろうが、他の皆はどうだ?呉宮さんも吸血鬼の力は夜しか使えない。今は昼だから無理だ。


 俺が知っている中で魔人を倒せるほどの強者は2人くらいしか知らない。ウィルフレッドさんとラターシャさん位なものではないだろうか。


「ここに居たのか!随分探したぞ、魔人ども!」


 屋根の上から中央広場に降り立ったのは銀の長髪をなびかせたウィルフレッドさんだった。


「あぁん?誰だ、お前……?」


 右耳にピアスをした魔人が不審そうな目でウィルフレッドさんを見ていた。


「私はウィルフレッド。この町の冒険者ギルドのマスターをしている者だ」


 ウィルフレッドさんは陽気な声で名前と職業を名乗った。


「我ら二人の前に出てくるとは、貴殿は余程命が惜しくないと見える」


 今度は左耳にピアスをした方の魔人がウィルフレッドさんに声をかけた。もう一人の方は笑みを浮かべながら、すでに槍を構えて臨戦態勢を取っている。


「いや、命は惜しい。そりゃあ、誰だって死にたくないからな」


「だったら……」


「だが、目の前に大金貨が2枚落ちているのなら拾うしかないだろう?」


 あれ、何かウィルフレッドさんが変なことを言い出したぞ?大金貨?一体、何の話なんだ?


「大金貨2枚だと?そりゃあ、どういうことだ!答えろ!」


 右耳ピアスの魔人の方が声を荒げる。それもそうだ。目の前で急に訳の分からない話をされれば苛立ちもするか。


「お前たちに懸けられた命の値段だ。私が魔人を一人殺すごとに大金貨1枚を報酬で貰えることになっているのだ」


 大金貨1枚ってことは……魔人を一人殺すごとに賞金100万円ってこと!?今この町には魔人は五人いるってウィルフレッドさんはギルドで言ってたから……ウィルフレッドさん一人で魔人五人討伐したら合計で500万円!?


 500万円もあったらラノベとか漫画、何冊買えるだろうか……じゃなくて!


 いくらウィルフレッドさんでも魔人2人を相手に勝てるものなんだろうか……?


「さて、二人まとめてかかって来るといい。多少なりともマシな戦いが出来るだろう」


 ウィルフレッドさんの挑発とも取れる言動に魔人二人は怒りに身を小刻みに震わせていた。


「劣等種の分際で……!」


 怒り狂う右耳ピアスの男を左耳ピアスの方の魔人が制した。


「良いだろう、そこまで言うのなら二人同時に掛からせて頂こう。くれぐれも死の間際で後悔などされませぬよう」


「ああ、君らの方こそ私に挑んだことを死に際で後悔せぬようにな」


 直後、怒り狂う右耳ピアスの男は槍を持ち、一直線にウィルフレッドさんの方へ接近した。しかし、心臓目がけて勢いよく突き出した槍は柄をウィルフレッドさんの右人差し指と中指の間に挟まれて止まっていた。


「そんな見え見えの突きで私を殺せるとでも?随分と舐められたようだ……な!」


 ウィルフレッドさんは空いた左の拳を男のみぞおちに叩き込んだ。男は口から血を吐きながら10mほど離れた建物の壁まで吹き飛ばされてしまった。


「フッ!」


 もう一人の魔人が背後から鋭く突き出した槍をウィルフレッドさんは避けようともしなかった。


「何だと!?」


 左耳ピアスの魔人が突き出した槍はウィルフレッドさんの胴体をすり抜けていた。これに驚いている間にウィルフレッドさんは振り返ることもせず、拳を魔人の顔面に叩き込んだ。


 魔人は鼻から血を流しながらも、ウィルフレッドさんから距離を取った。この辺りは戦い慣れていると言えるだろう。


「まだ本気じゃないのなら早く出した方が良い。このままだと次の一撃で殺せてしまう」


 魔人二人は、目を合わせて頷いた。


『身体強化!』


 二人が同時に叫ぶと二人の周囲にカーキー色のオーラが纏われていた。これが身体強化の力なのだろうか?


「なるほどな。土属性の身体強化魔法か」


 どうやら、身体強化魔法にも属性があるらしい。戦いが終わった後にでも聞いてみよう。


「覚悟しろ!人間!」


 二人は一直線にウィルフレッドさん目がけて突っ込んでいく。しかし、突っ込んでいく速度がさっきと比べても全然違う。これが身体強化魔法の力だというのか。あくまで俺個人の感覚では1.3倍とかになってると思う。


 そして、槍の突きの位置や動きも少しだけずらしているように見えた。あの二人の魔人の連携は見事だと素直に感心せざるを得なかった。


 容姿も似ていることから推測するに兄弟……双子とかではないだろうか。


 二人の魔人の動きも凄いものだと思うが、それを焦る様子もなく捌ききっている辺りウィルフレッドさんも凄い。


 こう、普段のだらしないところと対比して尚更スゴイように映った。


「終わりだ」


「グハアッ!」


 そんな時、ウィルフレッドさんの拳は右耳ピアスの魔人の男の心臓を穿った。


「ケヴィン、すまねぇ……」


 男はドサリと仰向けに地面へ崩れ落ちた。


「ゲーリーッ……!貴様ァッ!」


 ウィルフレッドさんは怒りに闘志を燃やした左耳ピアスの魔人の鋭い連閃を軽々と防ぎ切ったのち、背後に回り込み先ほどの魔人同様に胸部を拳で貫いた。


「……全く、魔人と言ってもこの程度か。まあ、これで大金貨2枚は頂きだな」


 俺はこの時、ウィルフレッドさんの強さに唖然とした。そりゃあ、ユメシュとの戦いでは互角で競り合っていた。でも、俺自身もその後に竜の力を解放してユメシュと戦っても危うく殺されるところだった。


 その時もウィルフレッドさんは強いということを身に染みて実感した。そして、今回も魔人2人を軽々と倒してしまった。


 別に俺は戦闘狂ではないが、「どうすれば、そこまでの高みに至れるのか」ということが気になった。


「よし、このまま南門まで戦線を押し上げるぞ!」


 ウィルフレッドさんは拳を高く突き出して他の冒険者のみんなを連れて南の通りへと向かっていった。それは一陣の風のようだった。


「なあ、直哉。僕たちもあれくらい強くなれたりするんだろうか?」


「さあな。それは分からないが、強くならないと守りたいものも守れないってことは分かる」


 ――今だって、ウィルフレッドさんが来ていなければ俺は誰かを守れなかったかもしれないのだから。


「兄さん!」


 そんな時、真横を物凄い速さで通り抜けていく人影があった。でも、誰なのかは声と匂いで分かっている。


「兄さん、大丈夫!?」


「おう、大丈夫だ。紗希はどうしてここに?」


 周りを見渡せば、洋介や茉由ちゃん、武淵先輩もこっちへ走ってきているのが見えた。


「中央広場に魔人が出たって聞いて、居てもたってもいられなくなって……!」


「何だ、そういうことか。魔人ならウィルフレッドさんが倒していったぞ。ほら……」


 俺は魔人二人が倒れて居た場所を指差す。しかし、そこに魔人2人の姿は無かった。そこには血だまりだけが残っていた。死体は消えてしまっている。


「兄さん、死体なんてないけど……」


 ……おかしい。まさか、死んでなかったとか?完全に死んでは居なくて……いや、それなら周りにいる誰かが気づくはずだ。一体、どこへ……?


「よし、みんなで北門へ偵察に行こう」


 俺は紗希と寛之にそう伝えた後、他の4人にも話して北門へと向かった。エミリーちゃんとオリビアちゃんはラウラさんが面倒を見てくれるとのことだった。

第62話「ローカラト市街戦」はいかがでしたでしょうか?

今回はウィルフレッドが魔人2体を討伐してました。

まだまだ、戦闘は続きます!引き続き、お付き合いください~!

――次回「東の魔人」

次回は東門での魔人との戦いになります!お楽しみに!

更新は9/25(金)になりますので、お楽しみに!

それでは1週間の残り3日も頑張っていきましょう!それでは!

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