第57話 混浴の風呂屋
どうも、ヌマサンです!
今回は混浴があったりします!
そんな性的描写はないですけど、その辺りは読者様の想像力にゆだねようかと思います(丸投げ)
それでは第57話「混浴の風呂屋」の方をお楽しみください!
俺たちは朝練から戻り、ギルドで遅めの昼食を食べていた。
呉宮さんは「まだ練習したいから」と弓の練習をしている。もちろん、ラウラさんも付き添っている。
俺と紗希、茉由ちゃんにシルビアさん、マリーさん。この5人で食卓を囲んでいる。
「兄さん、今日はどうするの?」
俺がパンにかぶりついていると、横から紗希に話しかけられた。
「今日はクエストに行こうと思ってる。金欠だし、そろそろ働かないとな」
「……だね。自主練とかはしてるけどクエストには行ってないもんね」
そう、王都から帰ってきてからというもの自主練だけやってクエストには全然行ってなかったのだ。おかげさまで金欠というザマである。
「紗希はどうする?」
「うーん、じゃあ……ボクも一緒に行ってもいい?」
「よし、今日は紗希とクエスト行くってことで」
こうして今日一日の予定が決まった。とりあえず、どんなクエストがあるのかは後で受付にでも聞きに行こう。
バーナードさんの冒険者ギルドと統合してからというもの、受付はミレーヌさんやラウラさんがやる必要は無くなった。
資金量が増えたために受付を雇うことが出来るようになったからだ。
ゆえに受付は知らない女性の人たちが行っているのだ。
「茉由ちゃんは今日どうするの?」
紗希が俺を挟んで隣に座っている茉由ちゃんに話しかける。何というかこう、自分を挟んで話されるのってなんか動けなくなるから嫌なんだよなぁ……。
「今日はこの後、寛之先輩とクエストに行くけど……」
「へえ……じゃあ、デートだね♪」
「ちょっと、紗希ちゃん!からかわないでよ!」
……もしもし、お嬢様方?俺を挟んで話盛り上がらないでもらえますかね……?朝ごはんが食べづらい……。
そんな感じで紗希と茉由ちゃんが話をしている間、シルビアさんとマリーさんは仲良さげに話をしていた。
そこへ、デレクさんがやってきてマリーさんの肩をポンポンと優しく叩いた。
「デレク?どうかしたの?」
「俺っち、今からクエストに行くんだけどよ。食べ終わりそうなんだったら一緒に行くか?」
デレクさんが指さす方を見ると、スコットさんとピーターさんがギルドの外で装備を整えて待っていた。
「うん、それじゃあアタシも行こうかしら」
「よし、それじゃあ、外で待ってるから早く来いってよ」
「分かったわ」
デレクさんは背を向けながら「おう」と、手を挙げて返事をしていた。
マリーさんはそこからは食べることに専念し始めたため、シルビアさんも話す相手がおらず、もくもくと朝食を食べていた。
「それじゃあ、お先に失礼するわね」
そう言ってマリーさんはパンを口にくわえながら食器を下げて、ギルドの入口へと走っていった。
「さて、紗希の兄。私もクエストに行かないといけないから失礼するぞ」
こうしてシルビアさんが去ったころ、紗希と茉由ちゃんの方も静かになった。
「それじゃあ、紗希ちゃん、先輩。私はそろそろ行きますから」
「おう、寛之とよろしくやれよ~」
俺が冗談でそう言うと、茉由ちゃんは『からかわれて不愉快だ』というようなことがありありと伝わって来る表情をしてギルドを出ていった。
「兄さん、茉由ちゃんと守能先輩の仲をいじったら可哀そうだよ」
……いやいや、先にいじったの紗希だろ!?
俺はそんな言葉を腹の中に押し戻した。
「そう言えば、兄さん。クエストに行く前にお風呂屋さんに寄って行ってもいい?汗かいちゃって気持ち悪いし」
「それじゃあ、俺も行こうかな」
お風呂屋はこの町では東西南北の通りに各一軒ずつある。
社交場として用いられたりしており、飲酒や賭博までできることから市民の憩いの場だったりする。
また、温浴、蒸し風呂の双方が揃っている。
しかも、店員による洗髪や散髪まで行ってくれたりするのだ。お風呂屋の店主はみな、外科手術を行う技術を持っていたりするので、外科手術も行われたりする。
……ちょっと、この世界の風呂屋は万能すぎると思うんだ。
「紗希、風呂屋に行く前に着替えとか取りに行くか」
「それじゃあ、ボクが兄さんの分の着替えも取って来るよ。ボクの方が足速いし」
「それじゃあ、お願いするかな」
「うん、任せて!」
そう言って紗希は家へと戻っていった。
俺は周りから人がいなくなって急に静かになった。こうまで静かだと、「人がいないだけでこんなにも落ち着けるのか」とか考えてしまう。
俺は紗希が家に着替えを取りに行ってくれている間に手ごろなクエストがないかを受付まで聞きに行った。
受付の人の話では、ここローカラトの町の北に広がるべレイア平原に2,3日前に現れたオークに手を焼いているとのことだった。
本当に困ってそうだったので俺はそのクエストを受けることにした。
「そのクエスト、受けますよ」と言ったらかなり喜ばれた。にしても、何で他の冒険者の人は受けなかったんだろう?
そんなことを思いながら、朝食を食べた席で座ってくつろいでいると、地下に続く階段の方から声が聞こえてきた。
「誰か?」と思い、振り返ってみれば、呉宮さんとラウラさんだった。
「あら、直哉?」
そう言ってラウラさんが俺に気づいて話しかけてきてくれた。一方の呉宮さんは俺から顔をそむけている。
「直哉、まだここにいたのね?」
「あ、はい。でも、この後は紗希と久しぶりにクエストに行ってきます」
「そうなのね。それじゃあ、聖美も連れていってもらえるかしら?」
ラウラさんの一言に呉宮さんは驚いたような表情を見せた。もしかして、俺とクエストに行くのがイヤ……とか?
もし、そうなのだとしたら俺に何か原因があるんだろうか?
でも、特に何かした覚えはないしな……。
「……直哉?話、聞いてますか?」
「え、あ、はい!聞いてます聞いてます!呉宮さんを連れていく話ですよね?分かりました。呉宮さんと一緒に行きますよ」
「そう。なら、よろしくね」
そう言い残してラウラさんは二階の自分の部屋に上がっていった。
「えっと、呉宮さ……」
「兄さん、お待たせー!」
俺が呉宮さんに話しかけようとしたタイミングで着替えを取りに戻っていた紗希が帰ってきた。
「あ、聖美先輩!戻ってきてたんですね!」
「紗希、おかえ……」
「聖美先輩!」
紗希は俺の横を素通りして、呉宮さんの元へ走っていった。こうも誰も居ないかのように素通りされると兄としては悲しいよ……。
「はい、これ!」
紗希は呉宮さんに衣類を手渡した。
「先輩、汗かいてるだろうから着替えいるかなと思って持ってきましたよ!」
……やだ、何この子。気遣いできるなんていい子やわ~。紗希の気が回る速さは地球の自転よりも速いんだろうな。自慢の妹だ。
むしろ、ここまで妹が完璧だとあまり兄の出る幕ないんだよな……。
「ありがとね、紗希ちゃん。助かったよ」
「そういえば、聖美先輩も一緒にお風呂屋行きませんか?」
紗希が誘うと呉宮さんはあごに手を当てて少し考えてる風だった。
「それじゃあ、行こうかな。汗でべたべたして気持ち悪いし」
「それじゃあ、風呂屋へしゅっぱ~つ!」
紗希は俺の背中を押すときにウィンクをした。まさか、俺と呉宮さんが仲直りできるように取り計ってくれたのだろうか?
俺たちは東にある風呂屋に入った。
この世界の風呂場は社交場のようなもので身分や男女関係なく話ができるようになっている。つまり、混浴になっているのだ。さすがに脱衣所は別になっているが。
温浴は木桶が10ほど並んでおり、隣から見えないように衝立で仕切られていた。また、木桶の真ん中には板が置かれており、そこで酒や食事を楽しむらしい。
また、温浴上の奥の部屋にはベッドが設置されていたりする。これは風呂場で出会った男女が肌を重ねることも多いからなのだそうだ。
俺は服を脱いで、下にタオルを巻いただけの軽装で温浴部屋で紗希と呉宮さんと合流した。二人とも胸元からタオルを巻いて見えないように隠している。そして、合流した時に気づいたことが1つ。二人と一緒にミレーヌさんが居たのだ。
紗希から話を聞くと、偶然にも脱衣所で会ったんだそうだ。
「それじゃあ、ボクはミレーヌさんと入るから♪」
紗希はミレーヌさんと木桶風呂へと入っていった。もうこれで衝立で二人の姿は見えない。
こうして、俺と呉宮さんは消去法的に強制的に同じ木桶の風呂へと入ることになった。
入ったは良いのだが、何を話そうにも何となく気まずくて時間だけが過ぎていった。
「直哉君!」
「呉宮さん!」
お互いに名前を呼ぶ声が被った。
「えっと、呉宮さんから先にどうぞ」
「それじゃあ、先に私から話すね」
俺は先に呉宮さんの話を聞くことにした。
にしても話を聞くときは相手の目をしっかり見ましょうとはよく言われるが、今この状況に限っては無理だ。前を向いては風呂が俺の血の赤で染まることになる。
そう、いくらタオルを巻いて隠しているとはいえ、生身の呉宮さんを直視することが出来ないんだ!
頭の中が大パニックなので、真ん中に置いてある木の板を眺めながら話を聞くことにした。
「あのね、直哉君に謝りたいことがあって……!」
……謝りたいこと?何だろう、呉宮さんが誤るようなことあったっけ?
「実は直哉君が寝ている間に……」
「寝ている間に?」
果たして、俺は寝ている間に一体何をされたというのだろうか?気になる。
「直哉君の血を吸っちゃって……」
「えっ……」
……血を吸われた?
「えっと、ちょっと待った。どういうこと?」
「夜になると吸血衝動に襲われるんだよね。今までは危なくなると人気のない場所に移動して自分の血を吸ってたんだけど」
お、おう……。あの時の光属性の攻撃では吸血鬼の力を一時的に解除しただけだから、納得できるんだが……。
「昨日は直哉君見ているうちに直哉君のを吸いたくなって……」
それで、俺の血を吸ったと……。でも、俺は朝から貧血で頭がクラクラすることもなかったが。
「あ、でもちょっとだけだよ?ホントに2,3口だけ」
何だろう。何かマズいことしたのかと思って焦ってたら、逆に謝られて、何で謝ったのかと言えば血を吸っちゃったっていう、拍子抜けしたような……そうだ、焦って損したって気分に近いな、これは。
「そっか、でもちょっとだけだったら別にいいよ。これで『貧血で動けません』とかになったらさすがに困るけど」
「……じゃあ、これからも吸っても良い?」
「うん、もちろん」
こうして俺は複雑な心境の中で呉宮さんに毎夜、血を吸われるというプレミアムチケットを手に入れた。
「それで呉宮さん、俺を避けてたのは何で?」
「えっと、何か後から思い返したら私が夜這いしたみたいで恥ずかしくって……!」
夜這い?血を吸うのに夜這い?どういうことだ?もう少し詳しく説明を求めよう。
「夜這いって言うのは……?」
「だって、私直哉君のベッドに潜り込んだんだよ!?」
突然の呉宮さんの大声に周りの客が驚いたのかざわざわし始めた。
俺が人差し指の腹を呉宮さんのくちびるに当てて一旦黙らせる。
「……プハッ」
「ゴメン、急にくちびる押さえたりして……ゴメン」
「ううん、大丈夫……だから……!」
呉宮さんの顔は赤い。やっぱり苦しかったのだろう。それか、のぼせてきているのか。この2つに1つだろう。
「呉宮さん、話の続きは後で良い?」
「え、でも……」
呉宮さんの声を聞き流しながら、俺は湯船から上がった。それから俺は湯船の中の呉宮さんを抱き上げた。
「え、直哉君!?」
「何かのぼせてるみたいだし、入り口まで運ぶよ」
俺は呉宮さんを横抱きに入口へと向かった。正直、鼻血が出そうで大変だが、今はとにかく呉宮さんを入口へ運ぼう。
俺はとりあえず、呉宮さんを脱衣所の前の椅子に座らせた。
「えっと、直哉君。私は大丈夫だから……」
紗希にせよ、呉宮さんにせよ、大丈夫という時は大丈夫じゃないのだ。俺はとりあえず、呉宮さんの額に手を当てた。やっぱり、熱かった。しかも、湯船につかっている時より顔の赤さが増しているような気がする。
「呉宮さん、今体に巻いてるタオル以外でタオルって持ってる?」
「それなら私たちが浸かってた木桶風呂の真ん中の板の上に置いてあると思うけど……」
「分かった、取って来る」
俺は風呂場で走るとこけるのは定番中の定番なので、走らず歩いてタオルを取りに戻った。そして、タオルを取って呉宮さんの所に戻った。
「タオルに水魔法を付加」
俺はタオルに水魔法を付加して呉宮さんの額に当てた。
「気持ちいい……」
「それなら良かった」
俺は呉宮さんが落ち着くまで待った。その間に紗希とミレーヌさんを含めた他の客たちは出ていった。
「直哉君、私もう大丈夫だから」
「それじゃあ、着替えて風呂屋の外で待ち合わせようか」
こうして俺は呉宮さんと別れて、着替えて風呂屋の外で待った。風呂屋の外には紗希がおり、料金は紗希がすでに支払ってくれたとのことだった。やはり出来た妹を持つと良いことが多いが、その分兄の人間性が腐っていくような気がする。
「お待たせ」
「よし、それじゃあクエストに行くか!」
『本日のクエスト:べレイア平原に出現したオークを討伐する』
俺、紗希、呉宮さんの3人は北門を目指して歩き始めた。
第57話「混浴の風呂屋」の方はいかがでしたでしょうか?
今回は風呂屋が混浴であるということがメインの話でした。
紗希みたいな気遣いできる妹が欲しいと思うこの頃です。
――次回「恋人らしいこと」
さて、次回はちょっとしたデート回込みの話です。
更新は9/10(木)になりますので、読みに来てくれると嬉しいです!
それでは皆さんが良い一週間を過ごせることを祈っております!





