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日常のち冒険~俺は世界を超えて幼馴染を救う~  作者: ヌマサン
最終章 人魔決戦編
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最終話 俺は世界を超えて幼馴染を救う

どうも、ヌマサンです!

今回で本作も最終回になります!

直哉たちの冒険を最後まで見届けてもらえると嬉しいです!

それでは、最終話「俺は世界を超えて幼馴染を救う」をお楽しみください!

 ――ナオヤ、ヤバい!神域が崩れてきとるで!


「分かってる!早く脱出しよう!」


 直哉は『神』の声と体で神域を脱出するべく、駆けだした。刹那、頭上から大上段の一撃が振り下ろされた。


「神よ。まだ、死んでいなかったとはしぶといヤツだ」


 ――待った!魔王!そいつは神やない!ナオヤや!


「何!?本当に直哉なのか?」


 魔王は剣に込める力を抜くことなく、イシュトイアの言葉に耳を傾ける。


 そして、神の姿をした直哉の話を聞き、魔王はおおよその事情を理解し、その直後には空間転移でベレイア平原へと戻った。


 そこには聖美たち来訪者のメンバーがいた。彼らは魔王とも大聖堂で一度戦ったことがあるため、武器を構えて身構えるが、その間にイシュトイアが割って入り、事情の説明を済ませる。


「……本当にその人が直哉君なの?」


「そうだよ、呉宮さん。まあ、信じられないとは思うけど……」


 そう言って、直哉は笑みを浮かべる。だが、聖美にとって、その笑みには直哉の面影を感じさせるモノがあり、紗希もそれは感じ取ったようであった。


 こうして、再会を喜んだのも束の間。神域が消滅した次は、神の肉体――すなわち、直哉の体まで少しずつ消え始めたのだ。


「直哉君!?」


「兄さん!?」


 聖美と紗希が真っ先に駆け寄り、寛之と茉由、洋介、夏海の四人もその後に直哉の元へと駆け寄る。


 直哉は体に力が入らなくなり、地面に片膝をついた。そして、そのまま仰向けに倒れる直哉の頭部を人の温もりが受け止めた。


 直哉が眼を開けると、聖美の顔が目の前にあった。そして、直哉は後頭部に伝わってくる感触から下にあるのは聖美の膝であることを頭の中で理解する。すなわち、今は自分が聖美に膝枕をしてもらっている状況なのだということを。


「直哉君……ッ!直哉君……ッ!」


 涙をボロボロと流す聖美。そんな彼女を見て、直哉は力なくフッと笑みを浮かべる。完全に肉体から力が抜けていっている。それが完全に抜けきるのが一秒でも長くなることを祈りながら、直哉は最後の話を始めた。


「呉宮さん。ホント、最後まで泣かせてばかりでごめん」


「そうだよ……っ、直哉君、私を泣かせてばっかり……!」


 直哉は泣かせてばかりですまないという気持ちを正直に聖美に伝える。


「そんな恋人を泣かせないと約束したくせに、最後の最後まで泣かせ続けた報いがこれなのだとすれば、少しは胸のつっかえが取れたような感じがするな……」


 直哉はしみじみとした雰囲気と共に独り言ちる。だが、聖美はそんな直哉に一喝。曰く、『最後って直哉君、何を言っているの!?』と。


「呉宮さん。よく聞いて欲しい」


「やだ」


「お願いだから……」


「だから、イヤだよ。そんな最後のお願いみたいなの、聞きたくないよ……!」


 泣いている聖美に直哉は困惑したように口をつぐんだ。それは一体、どうしたものかと思案しているようだった。


「俺は君を救うためにこの世界に来た。ホント、救いに来ておいてなんだけど、最後まで側に居てあげられなくてごめん。無茶してばっかりで、心配かけさせてばっかりだった。謝っても謝りきれないけど、君を泣かせるものはもう何もない。だから、俺が居なくなっても泣かないでほしい。そして、笑っていて欲しいんだ。俺は何よりも、君の笑顔が好きだから」


 直哉がそこまでを告げる。その時には下半身と腕は消滅しており、残るは胴体と東部のみとなっていた。


「紗希、お前を一人置いていくのは気が引ける。親父も母さんも居ないけど、どうか強く生き抜いて欲しい。それはみんなも同じだ」


 直哉は聖美を見た後、紗希、茉由、寛之、洋介、夏海を流し見る。もちろん、イシュトイアと魔王もだ。


「茉由ちゃん、寛之、洋介、武淵先輩、イシュトイア。紗希と呉宮さんを頼む。二人が笑っていられるように力添えをしてあげて欲しい。二人とも、泣くなって言っても泣いてそうだから。側に寄り添っていてあげて欲しい。どうか、俺からの最後の頼みを聞き届けて欲しい」


 直哉は涙声で想いを告げる。それに誰も何も反応を返すことが出来なかった。それは死にゆく直哉へ意地悪をしているわけではない。


 直哉もそれを分かっている。中学高校での付き合いだが、この異世界に来てから共に死地を超えてきた戦友なかまだ。


「……呉宮さん、笑ってくれないか?」


 聖美は何も答えない。感情の整理が追い付かず、直哉の言葉は聞こえているのに表情も体も思うように動かせない。


「呉宮さん、俺は君が幸せであってくれることを願ってる。君のことを死んでも愛してい――」


 言葉も人生も志も、すべて半ばで死ぬ。それはもっとも人生において避けなければならないこと。しかし、それらすべてを避けることができずに一人の英雄は旅立った。


 父ジェラルドが死んでから、一ヶ月後。その後を追うように、戦場で息絶えた。挙げ句、死体の一つすら残さなかった。


 愛した人たちを守り、残していった。もう守ってやることが出来ない。その感情は最後まで彼の心を苛んだことだろう。


 そして、彼と深く関わった者たちも助けてやれなかったことを悔やみきれないほどに悔やんだ。


 ――こうして、神殺しを成し遂げ、地上を危機から守った男はこの世を去ったのだった。


 ◇


「……ここは?」


 俺は真っ白な、まるで神域のような空間で目を覚ました。自分の手を見れば、透けているのが分かった。


「そうか、俺は死んだんだったな」


 しんみりとした感じの言葉が口から洩れてしまった。でも、もう呉宮さんや紗希たちにはもう会えないんだ。


 そう思うと、どうしても心が辛かった。確かに守りたいモノは守れたけど、これからは何もしてやれないのだから。


 辛い時に側で支え合うことも、楽しく雑談に花を咲かせたりすることも。もう二度と出来ない。


 俺は最低な人間だ。彼女を泣かせるだけ泣かせて、自分はもう死にます、さようならって。間違いなく最低な人間の中のクズだ。


 呉宮さんも紗希も、他のみんなも。みんなに辛い思いをさせるのを分かった上で俺は逃げただけなんだ。


「……何、あっさり死んでるんだよ」


 死んでから、心底自分が情けないと思った。元々、情けない男なのは自分でも分かっていたつもりだ。でも、今はそんなのは分かっていた内には入らないのだと確信している。


「でも、死んだらもう終わりなんだよな」


 俺は「よっこいしょ」と爺臭いことを言いながら、軽すぎる腰を上げる。それもそうだ。もう肉体は消滅していて、今あるのは俺の思念だけ。そりゃあ、軽いに決まっている。


 そのことに改めて気づかされて、微かに口角が上がってしまった。いつもだったら、バカだなともっと笑えるのに、心に刺さって抜けない杭のようなものがそれを許さないのだ。


 俺は真っ白な空間を歩きながら、この後自分がどうなるのかを考えた。このまま、思念と共に今の後悔も思い出も、すべて消えてしまうのだろうか。


 消えて欲しい気持ちや思い出もある。けど、嫌な思い出を消すと消えて欲しくないものまで連鎖的に消えてしまうような気がしてしまう。


 魂の浄化。そう聞くと、美しい響きになる。だが、そんなものは美しくない。


「……神殿?」


 突如、白い空間の中に白い神殿が出現した。


 そして、その入り口には見覚えのある人物の姿があった。


「直哉、お前も死んだのか」


「ああ、親父か。神と戦って、それで道連れ的な感じで殺されたっぽい」


 俺の話を聞くと、親父は笑った。でも、その後に待っていたのは説教だ。『紗希はどうするんだ!』とか、『聖美ちゃんはどうした!?お前、恋人をほったらかしにしとくつもりか!?』とか、他にも色々と言われた。


 特に、『聖美ちゃんはどうした!?お前、恋人をほったらかしにしとくつもりか!?』ってところに関しては、親父も母さんを日本に置いてきたまま死んでるんだから、人のこと言えないだろって、正直思った。


 まあ、そんな話はおいておいて。どうも親父は俺に話があるらしかった。


 親父の後をついて歩いていくと、角の生えた偉そうな人のところに着いた。何やら親父はその人と話をしていた。その後で、手招きされたので、二人に近づいていく。


「直哉、この人が冥王だ」


「うす、おいらが冥王だぞ」


 強面な人の一人称がおいらなのには度肝を抜かれたが、サラッと今冥王とか言っていた気がするんだが。


「俺がお前を生き返らせてくれるように冥王に頼んだ」


 ……生き返らせる?俺を?聞き間違い……じゃないよな?


「待ってくれ、俺を生き返らせるって正気か?俺、死んでるんだけど……」


「あんまり、おいらを舐めないでもらいたいぞ」


 俺は冥王から話を聞いた。親父は生き返らせると言っていたが、厳密には転生という形になるらしかった。


 要するに、薪苗直哉とは別の人物として、新しい命として地上に生まれさせるというモノだった。しかも、トラックに轢かれなくても転生できるらしく、これ以上痛い思いをせずに済むのは何ともありがたい話だった。


「ただ、一つ。おいらから条件があるんだぞ」


「……条件?それは……?」


「それは、イチャイチャは禁止ということだぞ」


「マジか」


「マジだぞ」


 どうも、ルールを破ったらその場で肉体は消滅させられ、ここに連れ戻されるらしい。ちなみに、冥王が殺せるのは一度ここに来たことのある生物だけなんだそうだ。


 まあ、それはともかく、俺は転生することになった。冥王も最初は反対したらしいのだが、やらなければ親父が実力行使に踏み切ろうとしたため、言うことを聞かざるを得なかったらしい……


 冥王には「ホント、うちの父親がスミマセン」としか言いようが無い。だが、これでまた呉宮さんに会いに行ける。


「あ、そうだ!さっき、イチャイチャは禁止事項だって話になってたけど、どの辺りからイチャイチャという判定になるのか、それだけはしっかり聞いておきたい」


「手を繋ぐ以上のことだぞ」


「手を繋ぐ以上って、手を繋ぐことも禁止事項に入るのか……って、そうなったら、触ることも出来ないのか!」


「あ、それは冗談だぞ。子作りまではオーケーだぞ」


「良かった、冗談なのか……」


 俺はそれを聞いてホッとした。だが、小作りまでオーケーという冥王の声は震えており、何事かと思えば、親父が鬼のような形相で掴みかかっていたからだった。


 まあ、親父は俺が転生しても極力自由にやれるようにしてくれているのだろう。そう捉えると、何だか嬉しかった。


 何はともあれ、俺はもう一度、地上に生を受けることとなった。俺は冥王に頼んで、生みの親であるフィオナさんみたいな金髪にして欲しいと頼んだ。だから、生まれた時は金髪だった。


 そして、名前は親父からの提案でアルフレートと名乗った。俺が生まれる前、フィオナさんが俺の名前にすると言って聞かなかった名前ものだそうだ。フィオナさんの願いも叶えるつもりで、俺はその名前で生きることを承諾したのだ。


 容姿としては金髪に翡翠色の瞳とフィオナさんの特徴が盛り込まれ、名前はアルフレート。生まれは貧民街で、西の大陸の最西端に位置する孤児院の前に捨てられた可哀そうな赤ん坊……という設定にされた。


 そうして、アルフレートとして生きること15年。呉宮さんがいるであろう中央大陸からムダに遠い距離に転生したために時間がかかったが、ようやく彼女に再会することができたのだった。


 彼女はローカラトの町の側にあるアスクセティの森の中にある泉のほとりの一軒家に一人で住んでいた。家の周りでは花を育てられていて、それも相まって美しい家だと思った。


 最初は俺の容姿が変わっていたため、呉宮さんも誰なのか気づいていない様子だったが、俺が『呉宮さん』と呼んだことや、日本での思い出話をしたことで、何とか俺だと分かってもらえた。


 俺は生まれ変わって15才になっている。つまり、呉宮さんは俺が死んだ時点で17才だったから、32才になっているわけだが、ほとんど見た目での変化が無かったのには驚かされた。


 本当に、15年前と中身も外見も変わっていなくて、俺は涙が止まらなかった。


「直哉君、おかえりなさい」


「呉宮さん、ただいま。15年も待たせてごめんね」


 俺と呉宮さんはそう言って再会を喜んだ。その後、俺と呉宮さんは一晩中、これまでのことを語り明かしたのだった。

最終話「俺は世界を超えて幼馴染を救う」はいかがでしたか?

本作も今回で最終回となります。

『小説家になろう』での連載開始が2020年5月31日。

一年以上連載し続けた自分も『よくやった!』と褒めたいと思います(笑)

ですが、その前に一年以上の長きに渡って応援してくださった読者に感謝の意を表したいと思います!

明日は最終章の登場人物紹介を更新して、完結とさせていただきます!

投稿するのは明日の20時になりますので、よろしければ最後までお付き合いくださいませ!


※追記

本日投稿予定だった最終章の登場人物紹介はナシということにさせていただきます。

終わり方的に最後に登場人物紹介を付けるのは何か違うなと感じたので……!

なので、物語は本話にて完結ということにさせていただきます。申し訳ないです……!

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