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日常のち冒険~俺は世界を超えて幼馴染を救う~  作者: ヌマサン
最終章 人魔決戦編
242/251

第205話 天地の戦い

どうも、ヌマサンです!

今回は前半がザウルベック対クラレンス、後半が神との戦いになります!

それぞれの戦いがどうなるのか、引き続き見守ってもらえればと思います……!

それでは、第205話「天地の戦い」をお楽しみください!

「ワシと戦う度胸があるとはのぅ。あの時とは違って、邪魔者はおらぬ。今度こそ始末してくれようぞ」


 ザウルベックは手にした大鎌を手でクルリと一回転させ、クラレンスと対峙する。クラレンスの方も手にした竜聖剣イガルベーラをより一層強く握りしめる。


 そして、互いが地面を蹴り、肉薄。大鎌の刃と刀身とが正面から衝突する。そこからも何度もぶつかっては離れるを繰り返す二つの刃。


 純粋な攻撃速度はクラレンスの方が早いため、手数ではザウルベックを圧倒できそうなものだが、そこは長きにわたって戦場を駆け抜けてきた老将であった。巧みに大鎌を操り、クラレンスを翻弄する。


 戦いはもつれ合い、互角の攻防戦を繰り広げる。とはいえ、老練なザウルベックの方が若いクラレンスよりも戦い慣れているようであった。


 そう、ザウルベックからは本気を感じられないのだ。必死になって応戦しているのはクラレンスだけ。


「“銀世界シルバナヴェルト”」


 ザウルベックは必殺技の行使に踏み切る。先ほどまで攻撃に積極性が無かったのは、魔法の発動準備を進めていたからであった。


 そんなザウルベックの技により、辺りは一面吹雪に覆われ、気温も一気に低下した。


 ザウルベックは技を発動している間、大鎌を持っていない左手の方で魔法陣を展開していた。そして、それによって“銀世界シルバナヴェルト”を維持しているのだとクラレンスは瞬時に理解した。


 背後を振り返れば、ダイアウルフやドラゴンタートル、トロールといった一万の魔物と王国騎士団三千六百が交戦しており、その最前線ではライオネル、エレノア、レベッカ、マルケル、イリナの五人が凍えるような寒さの中で必死に戦っていた。


 ここは自分が状況を打破しなければ、親衛隊も王国騎士団も全滅するのは間違いなかった。


 クラレンスは凍えるような冷気に負けぬよう、闘志を燃やす。そして、“銀世界シルバナヴェルト”を破るべく、竜聖剣イガルベーラに魔力を集める。


「“竜螺旋・大蛇オロチ”!」


 クラレンスの剣から八頭の竜が解き放たれ、ザウルベックを食らいつくす。ザウルベックの体中から血がにじむが、怯む様子はない。


 だが、ザウルベックは生き残るべく決断を迫られていた。“銀世界シルバナヴェルト”を維持して、自分が死ぬのか。もしくは、“銀世界シルバナヴェルト”を解除し、自分が生き残るか。


 選び取ったのは無論、後者であった。何より、魔法は発動した本人が死ねば消滅する。つまり、自分が死ぬまでに敵が全滅させられそうであるなら、前者を取っていたことだろう。


 つまり、後者を選んだということはザウルベックは直感的にクラレンスはしぶといと判断したという何よりの結果である。


 そして、ザウルベックは氷竜以外の竜をまとめて氷漬けにし、破砕。残る氷竜は氷漬けに出来なかったため、大鎌で直々に首を刎ねて消滅させたのだった。


 そこから宙を舞うザウルベックであったが、空気を凍らせて足場を形成し、転じてクラレンスへと大鎌を振るった。


 クラレンスはそれを紙一重のところでかわし、傷を負わずに済んだ。とはいえ、通り過ぎたのは眼前だったため、かわしていなければ目の当たりを斬られていたことだろう。


 そんなことを思い、ゾッとするクラレンスであったが、怯んでいる暇もなくザウルベックから氷の弾丸が続けて射出される。


 それを片っ端から剣で斬り刻みながら、守りに入るクラレンス。そこへザウルベックは氷の弾丸を射出しながらゆっくりと間合いを詰めていくザウルベック。


 ザウルベックが間合いに入った刹那、氷の弾幕が晴れ、大鎌での斬撃が襲った。それはクラレンスの胸元を切り裂き、確かな傷を負わせた。


 クラレンスは自らの落ち度であることを自覚しつつも、反省会を後回しにする。一度、間合いを取ってザウルベックの出方を見る。そして、今度は果敢に自ら攻めにいった。


 しかし、クラレンスの剣はことごとくザウルベックの大鎌によって薙ぎ払われてしまう。それでも、クラレンスは諦めることなく、斬撃の嵐を浴びせる。


 その食らいつきっぷりをザウルベックは評価したものの、それでは勝てないと言わんばかりに蹴りをクラレンスの鳩尾に叩き込む。


 その蹴りの力はいかに年老いていようとも衰えを感じさせない覇気があった。


 だが、クラレンスとて負けるわけにはいかなかった。ゆえに、ザウルベックの蹴りで吹っ飛ぶことも無く、耐え切った。


 これにはさすがのザウルベックも計算外であったために、動揺による隙が生じた。それを千載一遇の好機と捉えたクラレンスはここで勝負をかける決断をした。


「“八竜斬”ッ!」


 クラレンスは自らが持つ最高火力の一撃をザウルベックへと見舞う。これにはザウルベックもたまらず、大鎌の柄で受け止めた。


 しかし、竜聖剣イガルベーラは大鎌の柄を切断し、ザウルベックの身に刃をめり込ませる。


 炎竜、海竜、天竜、地竜、氷竜、雷竜、聖竜、闇竜。八つの属性が合わさった一撃が魔力融合し、一撃の威力を指数関数的に底上げする。


 つまり、八の二乗は六十四。一属性の斬撃の六十四倍の火力を誇る斬撃。それがザウルベックに直撃する。


「ぐわあぁぁぁぁッ!?」


 ザウルベックの断末魔が辺りに吹き荒れ、その姿は跡形もなく消し飛ばされた。クラレンスが誇る最強剣は八眷属の一人であるザウルベックを葬り去った。


 それを見た親衛隊と王国騎士団は歓声を上げた。そのまま士気は上昇し、瞬く間に騎士たちは残るダイアウルフやドラゴンタートル、トロールといった魔物たちを殲滅していった。


 こうして、地上での激闘はまた一つ終わりを迎えた。そして、それは戦死した八眷属が三人となった瞬間でもあった。


 残る八眷属は五人。光の八眷属であるレティーシャと水の八眷属のベルナルド、火の八眷属ゲオルグに雷の八眷属であるカーティス。そして、闇の八眷属にして魔王軍総司令であるユメシュ。


 ――そんな五人と対峙する者たち。一体、どちらが勝利を収め、未来を掴むというのか。


 ◇


 地上で魔王軍とスカートリア王国軍が激戦を繰り広げる中、神域では神と戦う直哉と魔王、竜王の姿があった。


 そんな神の胸部には直哉によって貫かれた傷がある。そんな傷からは瞳が不気味な光を発していた。


 神は神々しい光を体中から溢れさせ、その肉体を内側から破った。それはまるで、爬虫類が脱皮するかのように。そして、そこから放たれるオーラはまさに殻を破ったかのようにより強大となっていた。


「神がより強大になるとは、我も驚いた」


「余もここまで神が強くなるとは思わなかったぞ」


 直哉の左右の傍らに控える竜王と魔王は笑いながらも、どこか強敵と戦えることへの喜びが感じられた。


「いやぁ、おとなしく私になぶり殺されていれば、この姿を見ることも出来なかっただろう。本当に君たちは運がいい」


「これのどこが運が良いんだよ……!」


 直哉は唇を噛んだ。あの心臓を貫いた時点でトドメになっていれば、こんな恐ろしい目に遭うことも無かったのだから。


 せっかく、生きて帰れる希望が見えた途端に絶望の淵に立たされるのだ。恨み言の一つや二つ、吐きたくなるというモノだ。


「さすがに我も本気でやらねばならないらしいな」


 竜王はそう呟き、人の姿から竜の姿へと変化した。竜の力を使っていたとはいえ、竜王は本気では無かったのかと直哉は驚くしかなかった。


「ならば、余ももう少し気合いを入れ直すとしよう」


 魔王がそう言って目を閉じると、消費していた魔力が体中に満ちていく。直哉は魔王が使った空間魔術が絡んでいると見た。そして、空間を操作して魔力を別の場所から補給したのではないかと推測した。


 直哉はそんな強大な覇気を放つ魔王と竜王の二人に挟まれながら、それ以上に強大な覇気を放っている神と対峙した。


 ゲームで言うなれば、ラスボス戦における第二形態のようなモノである。そう直哉は目の前の事象を捉え直したのだった。


「さあ、死にゆく君たちに神からの贈り物だ!受け取り給え!」


 神が両手を広げ、天井を見上げるなり、巨大な魔力の塊が視界を埋め尽くすかのように降り注ぐ。それはまるで、流星群のよう。


 それを竜王はブレスで半数近くを撃墜させ、魔王は自分の周囲の空間を捻じ曲げ、着弾するのを避けた。そして、直哉は一つ一つを剣で斬り払うのみであった。


 そして、神はみなが魔力の流星群を防いでいる間に、またしても膨大な魔力による一撃が装填される。


「神の息吹を受け、己の罪を懺悔し跪け」


 神の身から放たれる桁違いの魔力。それに全員が吹き飛ばされそうになりながらも、足にありったけの力を籠めて耐え抜く。


 この技は吹き飛ばされれば、宙を舞い、そのまま対象を地面に叩きつけ、動けないように抑え込むといったモノ。それくらいは直哉も神の言葉から推測できていた。


 そして、竜王が真っ先にその風を抜け、神の前へと辿り着いた。


「“竜王爪牙”」


 竜化した竜王の爪は神へとけたたましい音を響かせながら命中する。そして、大爆発を引き起こす。


 神の身長ほどある竜王の手にある爪を神は握りこぶしで受け止めていた。


「ならば!」


 竜王は膨大な魔力を口に圧縮し、発射。準備から発射までわずか一、二秒。その速さに直哉も魔王も驚いた。


 しかし、神の姿は消えることはなく、むしろ天空に魔力の流れを感じた。それを感じ取った直哉と魔王が竜王に警戒を促す前に、先ほどの流星群が竜王を襲った。


 竜王は肉体を竜化させたことで、体が大きくなっていたこともあり、回避することができなかった。竜王とて神が何かしら攻撃を仕掛けようとしていたことくらいは分かっていた。


 それでもかわせなかったのは、単純に動きが鈍くなっていたという一点に尽きた。それが、明暗を分けた。確実に。


 そんな竜王に手刀を叩き込まんとしている神を見て、魔王が空間転移で割ってはいるが、神が反対側から放った桁違いの魔力によって、吹き飛ばされてしまった。


 そして、直哉が駆けつける前に竜王の首筋に神の手刀が振り下ろされた。


 斬られた首筋からは噴水の如く血が吹き出し、辺りに血の雨が降った。竜王の瞳からは光が失せていき、神はそれ見て嗜虐的な笑みを浮かべた。


『直哉。我は……ほんの……一時であったが、孫であるお前と戦えて嬉しかった……ぞ……』


 怒りのままに神へ突貫する直哉の頭に直接響く声。その主は竜王であり、それが最後の言葉となった。


 母であるフィオナの父であり、竜の国の絶対の王でもある竜王は神に敗れ、始末された。そのことが直哉の心を苛む。


 そんな直哉が内省している隙を突いて、神が魔王に放ったモノと同様桁違いの魔力を叩きつけることで後方へと吹き飛ばした。


「さて、これで神に盾突く愚か者は二人だけか。次はどちらを始末するか、迷うところではあるねぇ」


 神の言葉を聞きながら、吹き飛ばされた魔王と直哉は再度立ち上がる。その瞳から戦意は失われてなど居なかった。


「決めるのも面倒だ。まとめて消すとしようか」


 神はそう言って微笑む。魔王も直哉もそれぞれが武器を構えて身構える。だが、直哉はボスがめんどくさがってまとめて敵を始末しようとするのは異世界でも変わらないことを心の中では笑っていた。


 それくらいまでには心の余裕が戻りつつあった。


「死にたまえ、愚かなる罪人たちよ!」


 神の左右の手に一つずつ圧縮された魔力の塊が魔王と直哉、それぞれに向けて放たれる。その極限まで圧縮された魔力は光線レーザーのように向かってくる。


 魔王は瞬時に空間魔術を発動させ、流星群を防いだのと同じ要領で空間を捻じ曲げ、光線を屈折させた。


 直哉はといえば、イシュトイアを背に隠して、自らが光線を真正面から受け止めた。そして、次の瞬間には大爆発を引き起こした。その威力は桁違いであり、まず助からない。そう神は認識した。


「まずは、一人といったところか。残るは魔王、貴様だけとなったわけだ」


「フッ、残るは余だけ?バカを言うな。あれくらいの攻撃で竜王は倒せるか知らんが、その孫は死なんぞ」


 魔王の言葉を冗談だと笑い飛ばそうとした神だったが、直哉が今どんな力を使って戦っているのか、思い出した。絶対の力に酔いしれて、敵の観察を怠った。一生の不覚だった。


 大爆発のあった煙の中から疾駆してくるのは、直哉だった。肉体こそボロボロだが、瞬時に再生していく。つまり、直哉は現在不死身であることを神は忘れていたのだ。


 もはや間抜けとしか言いようが無かった。


「「覚悟するがよい!!神!!」」


 直哉は神に対しての言葉をわざわざ魔王と口調まで合わせ、ハモらせたのであった。

第205話「天地の戦い」はいかがでしたか?

今回でザウルベックも倒されて、八眷属も人数が減ってきたわけですが、ここからの八眷属との戦いがどうなるのか、注目してもらえればと思います。

そして、神との戦いで竜王が死亡して、魔王と直哉の二人だけで戦わないといけない状態でどう戦うか、次回以降も注目していてください!

――次回「光の魔人たち」

更新は12/19(日)の20時になりますので、お楽しみに!

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