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日常のち冒険~俺は世界を超えて幼馴染を救う~  作者: ヌマサン
最終章 人魔決戦編
241/251

第204話 風の魔人たち

どうも、ヌマサンです!

今回はディアナとアーシャの2人とラターシャ、ミレーヌ、ラウラの3人の戦いになります!

引き続き、べレイア平原での戦いが続きますが、楽しんでもらえればと思います!

それでは、第204話「風の魔人たち」をお楽しみください!

「“天空槍”」


 宙を舞うディアナから放たれるのは槍状の風の奔流。それは一直線に地上にいるラターシャを貫くべく、突き進む。


 そんな風の槍に対して、ラターシャは口から砂のブレスを吐き出し、真正面から技同士をぶつける。


 双方の桁違いの一撃が衝突し、爆ぜる。風によって、霧散した砂によって、周囲は砂の霧のように視界が悪くなってしまっていた。


 そこへ、音もなく近づいてくるディアナが槍をもって、ラターシャの二の腕を掠めていく。ディアナとしては、ここでラターシャが槍を振るえないように肩を貫く算段だったが、ラターシャが寸でのところで気配に気づいたのか、回避してしまった。そのためにディアナの思惑通りにはいかなかった。


 そこからも槍術の応酬が続き、両者一歩も譲らぬ激闘が続いた。


 互いの槍術にこれといった差もなく、パワー、スピードともにまったくの互角であった。そんな均衡した実力者同士の戦いは壮絶さを極めていた。


 それは、互いに一歩も譲らぬ、その胸に抱く固い決意が透けて見えるような激戦であった。


 槍の穂先が交わる事すでに何百回。それでも互いに息一つ切らさずに攻防を続けていた。


「……君は、思っていた以上に強い。さすがは竜の国の人」


「私だって最初から強かったわけではないぞ。お前たちの仲間に一度、敗北しているわけだからな」


 ラターシャの脳裏にヴィゴールとの戦いが蘇る。それはまったく歯が立たずに敗北した苦い思い出。しかし、あれからラターシャはさらなる鍛錬を重ね、強くなる努力を怠らなかった。


 対して、ディアナは生まれながらにして槍術の才能に恵まれ、桁違いの魔力によって八眷属になった天才肌。


 そんな努力型のラターシャと天才型のディアナの槍使い同士の戦いはまったく互角。二人の勝負は両者譲らぬ状態のまま、もつれ合う。


 しかし、そんな互いに相手に隙を与えない猛攻によって、大技の発動が実質的に封印されている状態だが、それによって周囲への被害は少ないのは幸いであった。


 またしても互いの突きが正面から衝突、激しく火花を散らしていた。それからも槍使い同士の激闘が続いていく。


 ラターシャが槍での突きを繰り出せば、それを真正面から受け止めるディアナ。その逆も然りだった。


 お互いの突きは殺意に満ちており、一撃一撃が必殺の気が籠っているが、そう上手くは相手を始末できずにいる。


 じれったさが生じるような長期戦になりそうであったが、じれったさによってイライラするのは戦いの中では良くないことである。ましてや、こんな実力の均衡している相手とである。そんなことをすれば、まず間違いなく敗北する。


 そう感じて互いの全力をぶつけ合う。ディアナは才能で勝ち上がってきたため、ラターシャの槍術のようなしぶとさが感じられなかった。


 ラターシャは長期戦慣れしており、長時間にわたる戦闘でもブレがない。対して、ディアナはこれまで圧倒的な強さで敵を屠ってきたため、接戦になることすらほとんど無かった。


 つまり、長期戦への心得があるのか、ないのか。それがディアナとラターシャの命運を握っていた。


 戦いが続く中で、ラターシャはピンピンしている様子であったが、ディアナは少しずつ呼吸が乱れ始めていた。


 ラターシャはその隙を突くように攻撃を畳みかける。ここで、一気にディアナを叩くと決意したのだろう。


 しかし、ディアナは呼吸を整えてラターシャを迎撃する。ディアナは落ち着くことができれば、槍筋など乱れることはなく、正確に相手の心臓を狙う突きを繰り出すことができていた。


 それはディアナ自身理解している事であり、それこそが自身の強さへの絶対的な自信へと繋がっている。しかし、そのペースを崩すべくラターシャはあの手この手で攻撃を繰り出す。


「フッ!」


「クッ……!」


 ディアナの鋭い突きはラターシャの槍の柄で防がれたものの、今の一撃は防御が間に合っていなければ、確実にラターシャの喉元を貫いていた。


 そんな一撃にラターシャはヒヤリとしたが、防げたことに安堵もしていた。そして、ディアナは防がれたことに対して何の反応をするでもなく、淡々と次の攻撃を繰り出すのみであった。


 ラターシャはそんなディアナの猛攻を右へ左へ往なしながら順次対処していく。とはいえ、完全にラターシャが防戦一方となっているため、第三者の視点から見ればディアナ優勢に見えることだろう。


 しかし、ラターシャは分かっていた。短期決戦をディアナが望んでいること、それによって決着を急いでいる事。


 ゆえに、ラターシャはディアナの体力を消耗させることを狙って、防御に力を割き、自らが有利となる長期戦に持ち込むべく動き出していた。


 そこまで読み取ることもできず、ディアナは連続攻撃を仕掛けているのだが、それは焦っていることの何よりの証拠であった。


 そして、ラターシャは賭けに出た。


「――ッ!?」


 息を吸い込む素振りを見せ、ブレスを吐く前の動作をしてみせたのだ。ディアナはこれには反応した。何せ、この至近距離でブレスの直撃を受ければ無傷では済まない。


 だが、ディアナが攻撃の手を緩めようとした刹那、ラターシャが息を吸うのをやめた。それをディアナは見逃さなかった。


 一瞬の隙を突くかのように、ディアナの鋭い突きがラターシャの腹部へと吸い込まれるように繰り出される。


 しかし、ラターシャは反射的に手にした槍を指先で一回転させ、槍の軌道を少しだけズラした。


 それにより、槍はラターシャのわき腹を貫くのみに留まった。そして、攻撃した瞬間、ディアナに大きな隙が生じたことでラターシャの槍は的確に心臓を貫いた。


 ディアナはとっさに風で自らの肉体を包み込んだが、それを貫通するほどの力が籠められた突きによって、強行突破された。


 ――そして、槍が心臓を貫いた。


 この瞬間、ラターシャの勝利は決定した。


 しかし、ディアナはただでやられるほど甘くはなかった。


「あがァっ!?」


 ダグザシル山脈で直哉を貫いた時のように風の奔流を槍から発生させ、ラターシャのわき腹をぐちゃぐちゃに抉っていった。が、魔法の使用者であるディアナが絶命したために、その攻撃は一瞬しか発動しなかった。


 それでも、ラターシャが負った傷はわき腹の傷から切り裂かれた内臓が見えるほどに酷いものであった。


 そんなラターシャに気づいた冒険者パーティの一つが、回復薬ポーションで大まかな治療を行ない、安全な場所へと移動させていった。



 一方、ディアナが倒されたとも知らず、配下の将軍であるアーシャはミレーヌとラウラの両名と戦闘の最中であった。


 アーシャに敏捷性で勝るミレーヌが地上まで降りてきたタイミングを狙って、短剣で攻撃を仕掛ける。そして、アーシャに膂力も敏捷性でも劣るラウラはアーシャが空中へと戻った時を狙って弓での狙撃を行なう。


 これによって、アーシャは徐々に疲弊しつつあった。アーシャはダグザシル山脈での紗希との戦いを思えば、この二人との戦いは楽だと感じていた。紗希のように自分が地上に逃げても、圧倒的な速さで追撃してくるようなことはないからだ。


 今はせいぜいラウラが矢で狙撃してくるだけであるため、飛来する矢をかわすなり、手にした短剣で斬り払えば済むからだ。


 そして、アーシャは飛翔魔法で空中で旋回し、再びミレーヌへと突貫していく。先にミレーヌを倒し、その後でラウラを倒す。それが最適解だと戦っているうちに理解した。


 先にラウラを狙うことを考えたのだが、ミレーヌが動ける間はラウラと二人同時に相手をしなくてはならないため、どうしても先に近接戦に長けたミレーヌを始末する必要があるのだ。


 それを狙われているミレーヌ自身もよく分かっている。そして、相棒バディのラウラもよく理解していた。


 そんな二人は遠近で協力して、アーシャを仕留めようとするものの、苦悩していた。何せ、自由に空を飛び回れるのだ。


 ミレーヌが短剣を用いた近接格闘で追い詰めても、空中へと逃げられてしまう。そうなれば、いかに狙撃技術の優れたラウラでも手出しはできない。


 そして、ミレーヌの真偽判定魔法でアーシャの攻撃や動きが読めないかを試してみるものの、読めたところで空中に逃げられるため、結果は変わらず、現在に至っている。


「ラウラ、中々手強いわね……」


「そうね。でも、ここで諦めるわけにもいかないわ」


 ラウラは空色のポニーテールを揺らしながら、首を隣に向ける。その隣に立つ銀の長髪を風になびかせるミレーヌは口角を上げて、首を縦に振った。


 ラウラもミレーヌも再び気を引き締めてアーシャとの戦いに臨む。


 アーシャの短剣捌きはミレーヌに比べればそこまで巧みではなかったが、飛翔魔法と合わさることによって独特の持ち味を醸し出していた。それにミレーヌは苦戦を強いられているのだ。


 そして、短剣の間合いを離れれば、飛翔魔法で旋回しながら、機を窺って再度攻撃を仕掛けてくるのである。


 この戦法を打ち破らない限り、ミレーヌに勝利はない。否、勝利も敗北もなくダラダラと戦いが長引くのみである。


 ラウラもミレーヌがアーシャの攻撃を崩さないことには、勝機はないと感じていた。かといって、ラウラ自身は格闘術も短剣も扱えないため、ミレーヌのように近接戦を演じることができないのだ。それをラウラは今ほど口惜しく思ったことはない。


 こうしてミレーヌとアーシャの攻防はもつれ合い、決着の色は見えなかった。しかし、アーシャが接近して再び斬撃を見舞おうとしたタイミングで、アーシャとミレーヌの間に一本の矢が撃ちこまれ、アーシャが怯んだ。


 ミレーヌはその的確な射撃が誰のモノか、瞬時に理解し、短剣での攻撃を畳みかける。アーシャは飛翔魔法で逃れようとするも、敏捷性で若干の利があるミレーヌが補足して離さなかった。


 その立ち回りは直哉たちが大聖堂で戦っている間にゴールドランクにまで上り詰めただけの実力はあった。無論、ラウラも水をあけられまいと、ゴールドランクに昇格している。


 そんなゴールドランク二人組の腕前は魔人であるアーシャ相手に通用していた。そして、訪れる制限時間タイムリミット


「しまった!?魔力切れ……ッ!」


 上空に逃れようとするアーシャを魔力切れという嘘のような出来事が阻止する。そして、動揺している隙を突かれ、一閃。


 ミレーヌの短剣がアーシャのわき腹を断つ。アーシャは手にした短剣で最後の抵抗を試みるも、背後からラウラに肩を射抜かれる。


「ごめんなさいねっ!」


 ドスッと鈍い音がアーシャの左胸から響く。飛ぶ際の負担を軽減するために防具の類を一切つけていなかったことが災いした。


 一撃で急所を貫かれたアーシャは口から血を吐き出しながら、ミレーヌに寄りかかるように絶命する。


 それを抱きとめるミレーヌ。そして、静かに地面へ寝かせた。そこへラウラも駆けつける。


「大丈夫?ミレーヌ」


「ええ、私は大して傷は負ってないわよ。ラウラは?」


「私も大丈夫よ」


 ラウラはミレーヌに治癒魔法をかけ、その間にも二人は戦闘が一段落した安心感から一言二言話をした。そして、ラウラ自身にも治癒魔法をかけ終えた時点で、遠くの方で五千体のハーピィと戦う者たちの元へと駆けていった。


「「“聖砂ノ太刀”ッ!」」


 光と砂が混じった斬撃が宙を舞う数多のハーピィを切り裂く。もちろん、放ったのはディーンとエレナの二人である。二人も直哉たちが大陸中を飛び回っている間に魔鉄ミスリルランクへと昇格していた二人である。


「いい加減くたばりやがれっ!」


 そう言って、大斧が目の前のハーピィを横一文字に切り裂く。こちらは水軍司令のアラン。そして、その周囲では王国水軍の兵士たちが順にハーピィを仕留めていっていた。


「みんな!お待たせ!」


「遅れてごめんなさいね」


 ――そこへ、ハーピィの指揮官であるアーシャを撃破したミレーヌとラウラの二人がやって来たことで、戦況は定まったのだった。

第204話「風の魔人たち」はいかがでしたか?

今回でディアナとアーシャの2人も倒されてしまったわけですが、まだまだ戦いは続きます……!

次回は前半が地上での戦い、後半は神との戦いになるので、お楽しみに!

ーー次回「天地の戦い」

更新は12/16(木)の20時になりますので、お楽しみに!

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