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日常のち冒険~俺は世界を超えて幼馴染を救う~  作者: ヌマサン
最終章 人魔決戦編
235/251

第198話 決戦に向けて

どうも、ヌマサンです!

今回はベレイア平原での決戦に向けて、スカートリア王国が着々と準備を進めていく話になります!

王国がどんな風に準備をしていくのか、注目していてもらえればと思います!

それでは、第198話「決戦に向けて」をお楽しみください!

 直哉たちがローカラトの町へ帰還したから一週間たった頃。その頃、王城では国王の前で決戦に向けての会議が開かれていた。


「先日、クラレンスからの報告があったように魔王軍との最終決戦が近づいてきている。よって、本日の会議をもってすべての事柄を決定させる」


 国王であるクリストフの声が謁見の間に響き渡る。もはや、この時点で開戦は決定事項であった。


「決戦の日は今日より20日後、場所はべレイア平原!」


 クリストフは声を張り上げながら、集まった貴族たちへと説明を続ける。


「敵は全軍を投じて挑んでくる。もし、万が一にも負けることがあれば、この国が滅ぶことはおろか、この世界から人間という種族は消えることになりかねない!」


 とにかく、クリストフは貴族たちに危機感を煽った。ここで貴族たちが兵を出さなければ、王国としての軍事力は半減してしまう。


 それゆえに、必死にクリストフは訴えかける。だが、金と保身に目がくらんでいる貴族たちの心は大きく動かされることは無かった。


 それは心のどこかにヤバくなれば、魔王に金と財力で命乞いをすれば自分たちだけなら助かるかもしれないという甘さがあるからだった。


 よって、クリストフは一計を案じ、その甘さを潰すこととした。


「これが魔王から届いた宣戦布告状である!」


 クリストフは淀みない声で魔王から届いた宣戦布告状――の偽物を読み進めていく。それは前日からクリストフがクラレンスからの報告を元に書き上げたモノである。しかし、その偽物の宣戦布告状はこの非常時において、大きく貴族たちの心を揺さぶった。


 貴族たちはどこに揺さぶられたのか。それはこの文であった。


『余が勝利した暁には、この世界から人間を一人残らず始末し、すべてを魔族の版図とする。無論、幸福など許さぬ。降伏しようと考える暇があるなら、命尽きるその時まで剣を手にして足搔くがよい』


 ――降伏という道はない。それは魔王からの宣戦布告状に記されている。


 これによって、貴族たちは公爵から男爵までそれぞれが進んで私兵を出すことを願い出た。


 スカートリア王国の貴族の数は200に上り、そこから各地の貴族の私兵を集められれば5万に届く。そこから各地の王国軍を動かせれば何とか十万は集められる。クリストフはそう試算していた。


「皆の者!今回の戦いは総力戦である!よって、国王である私自らも王国騎士団を率いて出撃する!」


 貴族たちも予想だにしていない国王自らの出陣に驚きを隠せなかった。


 そして、そこからの話はとんとん拍子で進み、王国騎士団長であるレイモンド、フェリシア、シルヴェスター、ランベルトの4人が王国北部と西部に駐屯させている王国軍をベレイア平原へと動かすべく、すぐさま王都を発つこととなった。


「クラレンスは居るか?」


「ここにおります。父上」


「そなたは今すぐにローカラトの町へ、この会議で決定した内容を伝えに向かうのだ。新たに王国騎士団から百名を追加し、合わせて六百名の騎士を率いて行くがよい。私も三日後に残るすべての王国騎士団三千を率いて王都を発つ!」


「ハッ!承知しました!」


 クラレンスは父クリストフからの命を受けて、その日のうちに六百の騎士を率いて王都を発ったのだった。


 こうして、王都では戦争の準備が急ぎながらも、だが着実に進んでいっていた。


 そして、国王であるクリストフ自らが王都を発つ前に、王都近辺の守備にどの程度の兵を残すのかや、竜の国へ決戦への助力を乞うのかなど、様々な問題が話し合われた。


 まず、王都近辺に配置されている王国兵としては一万二千がおり、王都にはその内の四千近い兵士が城門の守備などに就いている。そして、王都の東西南北の街道を塞ぐように建設された四つの砦には八千の兵を四つに分けて砦を防衛させている。


 結局、砦の守備兵八千のうちの半分に当たる四千と、王都の守備兵四千のこれまた半分である二千を動かすことに決定した。そして、出発の期日はクリストフが出陣した日から二日の後に王都を発つことも定められた。


 また、決戦に際しては、竜の国への援軍は求めないことが決定した。今のところは不可侵条約によって、竜の国が攻め込んでくる危険性はない。それだけでも、有難いと思っておくべきだという意見が圧倒的に多かったためだ。


 それに加え、竜の国まで援軍を求めに向かっている時間がないことも理由としては大きかった。


 こうして、時間は刻々と進んでいき、クリストフが王国騎士団三千を率いて出陣する日を迎えた。その際には貴族たちの私兵二万二千が王都に集結しており、残りすべては、直接べレイア平原に乗り込んでくる手はずとなっている。


 さらに、前日にはクリストフの元にはレイモンドたち王国騎士団長からそれぞれ集められた兵の数などの詳細が記された書簡が届けられていた。


 王国西部に向かったレイモンドとシルヴェスターからは王国軍二万三千だけでなく、二万九千もの冒険者といった志願兵や傭兵団が集結し、その兵力だけで五万を超えるという嬉しい誤算があった。


 そして、王国北部に向かったフェリシアとランベルトからはその地に駐屯する王国軍二万四千と西の大陸にあるヴィシュヴェ帝国から逃れてきて王国北部に居住している数万の移民の中にいた戦闘員が二千二百ほど加わり、二万六千ほどの兵力にまで膨れ上がり、移民たちからもヴィシュヴェ帝国から海を越えて運んできた武器や食料を大量に調達できた旨も記されていた。


 このような嬉しい報せが立て続けに入ったこともあり、クリストフは内心、心強く思っていた。また、力を貸してくれるすべての者に感謝の念を抱いた。


「皆の者!よく聞いて欲しい」


 クリストフは戦地に赴くものたちを見下ろしながら、その背後に控える王都の民たちを順に視線を移していく。


 そんなクリストフの動きにその場にいるすべての者が動きを止め、王の演説を見守っていた。


「今、我が国は危機に瀕している!それは他ならぬ、魔王ヒュベルトゥス率いる魔王軍によってだ!」


 クリストフは声を張る。その声に全員が緊張感のある面持ちでそれを見ていた。


「そして、今回の戦い。勝った種族が平和を手に入れ、負けた種族には滅亡の引導が渡される!よって、我々に敗北は許されない!!」


 クリストフはそう言い放った後、勢いよく腰に差した剣を抜き払い、剣先を天へと掲げた。


「スカートリア王国国王クリストフ・スカートリアは、今ここに誓う!この場に集いし勇敢なる戦士たちと共にすべてを守り抜くと!そして、今のような皆が笑っていられるような世界であり続けるためにも、必ずや勝利を掴み取って見せる!必勝!!」


 人々はそこに希望の光を見た。このお方なら必ずや勝利を収めて、この王都に帰還する――と。


 そして、それを表わすかのように王国騎士団の者たちや、貴族の私兵たち、王都に住まう民たち。誰しもが喉が千切れるのではないかというほどの大声で「必勝」の二文字を叫んだ。その声は大気の帯びる熱を上昇させる。その声は天地を震わせる。


 王都の民は歓喜に震え、戦場へ赴く戦士たちは体の内に灯る闘志をたぎらせる。


 その間にクリストフは演説の台から跳躍し、空中で三回転して地面に着地。


「進軍開始ッ!」


「「「「「オォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」」」」」


 凄まじい雄たけびと共に総勢二万五千の大軍が王都の南門からべレイア平原を目指して進んでいく。先頭を行くクリストフは疲れてはいたが、疲労の色を見せることなく胸を張り、先頭を切って進んでいく。


 その様はまさに、一国の王たるに相応しい覇気があった。


 ◇


 ――クリストフ率いる王国軍が王都を出発して十日後。


 ローカラトの町に無事到着していた。士気は落ちるどころか、最高潮で維持されている。ここからは四日ほど休息を取った後に全軍がべレイア平原に本陣を移す。


 現在、集結している兵力としては、クリストフとクラレンスが率いてきた王国騎士団三千六百。フィリスと共にローカラトに駐屯している王国兵一千。貴族の私兵五万。アラン水軍司令率いる王国水軍八千。シルヴァン辺境伯配下の私兵千五百。ローカラトを始めとする王国南部に駐屯している王国軍二万。港町アムルノスを始めとする王国東部に駐屯している王国軍一万八千。


 これらの兵力を合わせると、十万と千五百。この時点で十万を超えており、当初のクリストフの試算を遥かに上回る形となっていた。ここに王国北部と西部からの兵や、王都近辺の守備についていた兵たちが八万四千も合流する。それを考えれば、最終的には十八万越えの大軍となる。


 続々と集まってくる味方にローカラトに滞在していた者たちは安堵した。それもそのはず。今は一人でも多く味方が欲しいと思っていたのだから。


 直哉たちがローカラトの町に帰還して二週間と数日。軍を束ねる者たちはてんてこ舞いであったが、町の人々は不安と恐怖に怯えつつも、忙しさからは縁遠い日常生活を送っていた。


 中でも、直哉たちは食材を買ってきて、直哉の家で来訪者組だけで寛之が帰って来たことを祝うパーティーを開いたり、セーラの何でも屋の仕事を手伝ったり、茉由と寛之の屋敷の大掃除を行なったりと平和を謳歌していた。


 他にも、ローカラトの冒険者たちは緊急時であろうと平時のようにクエストをこなし、町の人々の手助けから魔物の討伐まで今まで通りのことを淡々とこなすのみであった。


 そんなローカラトの町に暮らす人々が平和にしている間、フィリスとアシュレイは兵士たちの精神面でのケアや、軽傷者の訓練から食料の手配を行ない、現在は一足先にべレイア平原に赴き、陣営の構築作業に取りかかっている。


 そこにはクラレンス率いる騎士六百と、アラン水軍司令率いる王国水軍八千も同行し、一万人近い人数が居り、大人数で決戦期日に間に合うよう準備を整えていっていた。


 フィリスたち以外の軍も、到着して二日ほど休息を取った後にべレイア平原へ続々と向かっていっていた。


 こうして魔王軍との決戦に向けて、スカートリア王国は投入できる戦力のすべてをべレイア平原に集結させつつあった。


 それ以外では、バーナード率いるローカラトの町の冒険者たちやギンワンたちテクシスの冒険者たちもべレイア平原入りを果たしている。


 まさに『役者は揃った』という言葉が、この状況に置いて最も相応しい。


 ――果たして、これから始まる魔王軍との戦いがどうなるのか。そんなことなど、知る由も無かった。


 人類の滅亡と魔族の繁栄。人類の繁栄か、魔族の滅亡か。


 その明暗を分ける史上最大の戦いの幕が、上がろうとしていた。

第198話「決戦に向けて」はいかがでしたか?

今回はクリストフが王国をまとめ上げて、ベレイア平原へ向かってました。

いよいよ決戦の時が近づいてきた感じですが、次回からついに決戦が始まります!

――次回「悲しむのは今じゃない」

更新は11/28(日)の20時になりますので、お楽しみに!

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