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日常のち冒険~俺は世界を超えて幼馴染を救う~  作者: ヌマサン
最終章 人魔決戦編
234/251

第197話 アシュレイの秘密

どうも、ヌマサンです!

今回からは最終章「人魔決戦編」が始まります!

ですが、決戦に入る前に、アシュレイの秘密が明かされます……!

それでは、第197話「アシュレイの秘密」をお楽しみください!

「直哉君。ここって、べレイア平原だよね……?」


「ああ、遠くだけどローカラトの町も見える」


 直哉が北の方を指差すとローカラトの町が確かに見えた。それを見た全員がここがべレイア平原だということを認識した。


「直哉!聖美!これは一体何が起こっている!?」


 直哉と聖美が話しているところへ、フィリスが駆け寄ってきた。直哉たちはすぐにこうなった経緯と、1か月後に魔王とべレイア平原で戦うことになった話を伝えた。


「総力を投じての決戦か……。だが、私としては魔王の言葉など信用するつもりはない。一度、我々は王都へ帰還し、国王陛下に報告したのちに対応を決定する」


 直哉としてもフィリスの言い分に異論を唱えられるほどに魔王を信じられていなかったため、異を唱えるような事は出来なかった。


 その後、フィリスの提案で直哉たちを含めてベレイア平原にいる者たち全員でローカラトの町まで撤退することとなった。


 だが、そこに予想外の来客があった。


「やはりここに居たか。死にぞこない共め」


 大槌を引っ提げて現れたのは体中に雷を纏う大男。


 そのオーラは今までに接してきた八眷属と同等。そして、今までに見たことのない顔。よって、答えは一つであった。


「お前が雷の八眷属か?」


 答えを導き出した直哉からの言葉に男は鼻で笑った。それはまるで、己の力を誇示するかのようであった。


「ああ、そうだ。オレ様が雷の八眷属カーティス様だ」


 直哉と聖美はフィリスたちを守るべく、最前線へと進み出る。その手にはイシュトイアと星魔弓サティアハがそれぞれ構えられていた。


「ちょうど先代の王国軍総司令の墓参りに来てみれば、魔王様の空間転移で死にぞこない共が飛ばされてくるとは思わなかったぜ」


 ヘラヘラとした態度で直哉たちを見下ろすカーティス。そんな男から放たれる濃密な殺気に王国兵は気絶してしまっていた。


「しかも、守能寛之。お前が人間共と一緒に居るってことはもう魔王軍じゃねぇってことで良いんだよな?」


 カーティスは残虐な笑みを浮かべながら寛之へと言葉を放り投げる。だが、寛之にカーティスまで届く声で返事をする体力などもう残されていなかった。


「返答ナシか。じゃまあ、とりあえず死んどけ」


 カーティスが軽く腕を一振りすると、頭上から特大の雷が降り注いだ。が、それは半透明の障壁によって阻まれ、相殺された。見れば、寛之が息を荒げながら障壁を展開していた。


「オレ様の雷を相殺するとはやるな。だが、もう大して魔力も残ってないんだろ?それくらいはオレ様にはお見通しだぜッ!」


 カーティスがさらなる一撃を叩き込もうとしたタイミングで、真っ白な光線が双方の間に撃ち込まれた。


「なんだ、レティーシャか。何しに来やがった?」


「もちろん、戦いを止めに来たでありんす。今、その者たちに手出しすることは魔王様の命によって固く禁じられているでありんすから」


 レティーシャの言葉の中でも『魔王様の命』という部分をカーティスは気にしている様子で、手にしていた大槌を地面にドスンという音と共に突き立てた。


「チッ、しゃあねぇや。魔王様の命とあっちゃぁ退くしかねぇか」


 レティーシャに襟首を掴まれたカーティスは南方へ飛び去っていった。登場時に比べれば、ダサい帰還に直哉は笑いを堪えるのがやっとであった。


 とにもかくにも、魔王軍八眷属であるカーティスをやり過ごした直哉たちは三日かけてローカラトの町へと帰還した。その間にジェラルドの死が伝わると、その場に居た者全員が喪失感を覚え、深い悲しみに暮れていた。


 ただ、その前に。南の大陸での戦闘における戦死者の遺体を腐らないうちにべレイア平原に埋葬した。


 ローカラトの町にはクラレンス率いる王国騎士団がおり、死傷者の確認がフィリスとの間で行なわれた。


 また、クラレンスたちは最初からローカラトの町に転移させられており、すでにアランたちからは無事の知らせが届いていた。


 そんなアランたちは船と共に港町アムルノスに転移させられており、兵士たちを休ませてから物資を輸送するという内容も合わせてクラレンスに報告されていた。


 そして、今回の聖都フレイスでの戦いにおいての死傷者の内訳はといえば。


 王国軍の死者が千七百。重傷者が八百名で、軽傷ですんだ者は一千。死者が半数近くに上るという大損害であった。そこにフィリスたちが単独で行なった戦闘における重傷者二千五百が加わると、さらに損害が大きいことが分かる。


 対して、王国騎士団の方は死者が九十で、重傷者は三百。軽傷者は五百十。王国騎士団は王国軍に比べれば死傷者が遥かに少なかった。それはクラレンスとその親衛隊のメンバーが獅子奮迅したことが一番の理由であった。


 そして、ユーリ率いるローカラト辺境伯の私兵五百は六割に当たる三百が戦死し、百が重傷、残り百が軽傷という状態で、死者の割合だけみれば、王国軍よりも酷かった。また、指揮官のユーリ自身も数えきれないほどの手傷は負っているものの、どれもかすり傷ばかりであるため、決戦でも槍を振るって参加する気満々だった。それも、兵たちの仇を取ると息巻くほどに。


 また、アランたち王国水軍の方は、あの後一度も戦いにならなかったことで、死傷者の数は変わらずであった。


 そんなこんなでローカラトの町は大量の負傷者がなだれ込んだことで大騒ぎであった。


「はぁ……分かった。俺たちの持ってる薬品とか全部使ってくれ。その代わり、足らずは王都から新しく運んできてくれ。魔王軍との決戦に向けての分も含めてな」


 ローカラト辺境伯であるシルヴァンはため息をつきながらも、倉庫にある薬品や包帯をすべて使っていいと許可を出した。


 その後は兵士を大勢死なせたユーリへの説教が行なわれたりしたものの、辺境伯自身もローカラトの町やその近辺の村々の住民たちを一時的に疎開させるべく、疎開先の選定などの準備に追われていた。


 さらに、王都への報告には手紙をしたためることとなったが、念のため手紙と共にクラレンスたち王国騎士団も直々に王城へ戻ることとなった。もちろん、重傷者は連れていけないために町に残していく形になった。そうして、クラレンスは親衛隊5人と騎士五百名を連れて、即座に町を発った。


 また、その間の各隊の指揮は王国軍総司令であるフィリスが担うこととなった。そして、ローカラトの町郊外には新しく幕舎を設営し、フィリス自身も決戦に向けての兵馬と食料の調達やらで忙しくしていた。


 直哉たちが魔棍セドウスを寛之に渡そうとしたが、寛之に要らないと受け取りを拒否され、引き続き夏海が所持することになった。


「来訪者の人たち。少し話があるんだけど……」


 来訪者組全員で郊外の陣地で食事を摂っているところへ、アシュレイがやって来た。直哉たちも食事中であったことから、食事をし長良でよければと話を聞くことを快諾。アシュレイは彼らに混ざるように席に着いた。


「それで、アシュレイさん……でしたっけ?俺たちにお話というのは……?」


「えっと、それはアタシの素性のことなんだけど……その前に、ここで聞いた話は他言無用でお願いできる?」


 早速本題に斬り込んだ直哉たちだったが、アシュレイからそう言われれば断る理由も無かったため、了承した。


「実は、アタシはアンナ・スカートリアなのよ」


「ああ、スカートリア王国の女王だった……って、えっ!?」


 直哉は頷いていたが、途中で驚いていた。それは直哉だけではなく、その場に居た紗希たちも全員がそうであった。


「驚かせて悪いんだけどね……。アタシは18年前のべレイア平原で魔王ヒュベルトゥスと戦った時に代償魔法を使ったんだけど――」


 そう、アンナ・スカートリアは魔王ヒュベルトゥスとの戦いの中で古代魔法アルトマギアである代償魔法を使い、魔王を退けたものの、その後の消息は不明となっている。


 それはローカラトの町での戦いの後にウィルフレッドから全員が聞かされた話だ。しかも、つい先日魔王ヒュベルトゥスと相対した直哉たちからすれば一人で魔王に立ち向かったアンナに尊敬の念を抱いていたところであった。


「アタシは確かに死んだわ。持てる生命エネルギー、命のすべてを賭けて攻撃を放ったんだもの」


 アシュレイは淡々と語っていくが、直哉たちは脳内で情報を整理しながらであったために話についていくのも一苦労であった。


「でも、次の瞬間には赤ん坊の姿で目が覚めたの。どことも知らない村でね」


 そして、アンナはどういうわけか自分が生きていることを理解し、数年かけて現状の把握に努めた。


 そうしているうちに、自分が目覚めた場所はスカートリア王国の北端に位置するハヌマ村であること、自分の名前はアンナ・スカートリアではなく、アシュレイであることなどが判明した。


 そして、物心がついた頃からはずっと剣の修行に励み、その際には前世でジェラルドから教わった剣術の基礎基本を忠実に守り、訓練に訓練を重ねた。


 そうして、二年前にハヌマ村を出て、王都を目指した。村自体が貧しかったため、道中で装備を整えながら、魔物を討伐したりして金を稼いでいった。こうして、二年がかりで王都の近くまでたどり着いた時、フィリスと出会い、今に至る。大体、そんな感じの話だった。


「ね?結構ビックリしたでしょ?」


 アシュレイはクスリと笑っていたが、ここまで来るまでの努力が尋常ではなかった。直哉たちもその過程にドキュメンタリー映画を観たような気分になってしまっていた。


「正直、聖都フレイスに攻め込む前の会議の時、アタシは入り口で警備をしていたんだけど、クラレンスを見た時はビックリしたわ。本当に大きくなったなって」


 しみじみとした表情でクラレンスのことを語るアシュレイからは母としての一面が表れていた。たとえ、最後に会ったのが18年前だとしても我が子だと感じるモノがあるのだろう。本人曰く、一目で分かった……と。


「あと、紗希さん……よね?あなた、クラレンスのこと好きでしょ?」


 アシュレイは人差し指を紗希の方に向けていたが、向けられている紗希の方は顔を朱に染めて俯いていた。


「まぁ、クラレンスと視線を交わしているだけで両思いなのはすぐに分かったんだけどね」


 少し自慢げにアシュレイは語っているが、それもやはり母の勘であった。生まれ変わってなお、我が子の心境は手に取るように分かるのだろう。


「紗希さん。改めてお願いしておくわ。クラレンスのこと、よろしく頼むわね」


 アシュレイの言葉に紗希の頭はパンクした。頭からは白い煙が立ち上っていた。それもそのはず。好きだという想いすら伝えていない相手の母親から「息子のことを頼む」と言われたのだから。


 その後は、アシュレイから紗希への質問攻めが続いた。どういったところを好きになったのかや、好きになったキッカケや出会いの話、片っ端から質問が浴びせられていた。


 だが、紗希が限界を迎えているのは誰の目から見ても明らかだったため、直哉がストップをかけ、話題を逸らした。


 その夜はそうして更けていき、直哉たちとアシュレイは幕舎の外で別れた。その後、直哉が紗希を落ち着かせるのに苦労したことは言うまでもない。

第197話「アシュレイの秘密」はいかがでしたか?

アシュレイが実はアンナ・スカートリアだったということが明らかになったわけですが、そのことを知っているのは現段階では直哉たちだけです。

そして、次回はベレイア平原での決戦に向けて、スカートリア王国王城での会議の話になります!

――次回「決戦に向けて」

更新は11/25(木)の20時になりますので、お楽しみに!


※先日、本作が累計3万PVを達成しました!

これも、皆さんが日ごろから本作を読んでくださっているおかげです!

完結まで一気に走り抜けようと思いますので、引きつづき応援のほど、よろしくお願いします!

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