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日常のち冒険~俺は世界を超えて幼馴染を救う~  作者: ヌマサン
第11章 聖都攻略編
223/251

第187話 七魔将ルイザ

どうも、ヌマサンです!

今回はクラレンスとルイザの二人が戦う話になります……!

七魔将との戦いも今回で折り返しになりますので、引き続き戦闘が続きますが、よろしくお願いします!

それでは、第187話「七魔将ルイザ」をお楽しみください!

「ハッ!」


「フッ!」


 短く息を切りながら、二つの斬撃が衝突した。その衝撃波は周囲へ風の奔流を起こした。


 それを気にもかけず、クラレンスとルイザの両名は激しく剣をぶつけ合う。ルイザの片手剣ブロードソードと竜聖剣イガルベーラ。双方ともにオリハルコン製の武器。だが、同じ金属を用いたとしても切れ味は聖剣である竜聖剣イガルベーラの方が上だった。


 クラレンスはそれを理解したうえで、ルイザに容赦なく斬撃を見舞う。その太刀筋には魔王軍に対しての憤怒が現れていた。


 王城を踏み荒らし、数多の騎士と非戦闘員である城仕えの人間を殺戮した。そして、自らの叔父であるウィルフレッドこと、オリヴァー・スカートリアを殺害した。


 それだけではない。父であるクリストフと自分も尊敬してやまない四騎士団長に重傷を負わせたり、王都で幾人もの冒険者と数百名の国民を殺した。


 王都と王城だけでもこれほどまでの被害を出さされている。そんな魔王軍相手に憤怒の感情を引っ込めて戦えという方が無理というモノであった。


 互いに鍔迫り合いをした後、互いに剣を払って間合いを取る。クラレンスは即座に膝を曲げて前傾姿勢を取った。


 瞬間。クラレンスの姿はルイザの眼前へと移動していた。純粋な脚力一本で間合いを詰めたのだ。その早業にルイザは驚愕した。


 直後、眼にも止まらぬ速度で竜聖剣イガルベーラが斬り上げられる。ルイザは咄嗟に片手剣ブロードソードの刃で斬撃を受けた。


 ――が、その衝撃は凄まじく、ルイザは力負けして吹っ飛んだ。


 後方へ吹っ飛び、地面へと放物線を描いて墜落した。武術大会で紗希をも圧倒した剣士はそれを見逃さない。間髪入れずに追撃をかける。


 横薙ぎに放たれた一閃をルイザは横へ跳んで回避。しかし、その際に髪ゴムを斬られ、一つ結びにしていたパンジー色の髪がほどかれた。


 そこから流れるように突き出される剣をルイザは軌道を逸らして受け流す。その間に間合いを取る。


 しかし、それすらも許さないとばかりに空中で身を翻しながら、頭上から一撃を叩き込んでくる。


 ――衝突。


 そこからは片手剣ブロードソードと竜聖剣イガルベーラが凄まじい量の斬閃を交わし合う。傍から見れば耳障りな金属音が超音波のように周囲へと解放される。


 そんな凄絶な剣士の戦いが展開され、クラレンスはルイザに逃げるという選択肢を与えなかった。


 ルイザの斬撃は軽々と弾かれ、繋がるように放たれた斬撃も往なされる。攻守が入れ替わることすらなく、ただ一方的な猛攻がルイザへと浴びせられた。ルイザは防御すら間に合わなくなり、彼女の右の二の腕から鮮血が散った。


 そこからのルイザの斬撃のすべてがクラレンスに先回りされたかのように一つ残らず易々と防がれる。


 お返しだとばかりに振り下ろされる縦一閃はルイザの片手剣ブロードソードと交わり、激しく火花を散らした。


 だが、力と敏捷性なら僅かにクラレンスを上回っているルイザはそれを力づくで押し返した。そこからは並みのモノなら目で捉えることすら出来ないレベルの仮借のない斬撃の嵐がクラレンスへ。


 しかし、フッと細められた瞳はそれらすべてを鮮やかに打ち払う。ルイザの足掻きをあざ笑うかのように顔色一つ変えずに全てを迎撃していた。


 クラレンスの圧倒的な速度で放たれる高速の斬撃。そして、これまでの戦場での場数がモノを言う巧妙な技。それらすべてがクラレンスの活力となり、ルイザを圧倒していった。


「クッ!」


 ルイザの一太刀が無様に斬り払われ、ルイザは体勢を崩す。そこへ間髪入れず、回し蹴りが叩き込まれる。


 もはや実力差は目に見えていた。魔鎧セベリルの身体能力上昇の効果が無ければ、ルイザが勝っていただろうが、鎧によって身体能力は五分であった。そして、五分であれば剣技に勝るクラレンスに敗北する要素など一つも無かった。


 竜聖剣イガルベーラは風を斬り、ルイザの片手剣ブロードソードと甲高い金属同士の衝突音を響かせた。


 剣と剣とが交わったのは一瞬。そこからは流れるように互いの斬撃が放たれる。


 だが、その中でダメージを負ったのはクラレンスの方であった。


 後がないと覚悟しているルイザの斬撃により、クラレンスの剣が弾き返されたのだ。そこには明らかな覚悟の差があった。


 剣を持つクラレンスの両腕が頭上へ。それを逃がさず、下方から振り上げられる片手剣ブロードソード。ルイザは反撃の機会を得て、怒涛の連撃へと結びつける。


 クラレンスは鎧ごと切り裂かれて胸部に負った裂傷からの出血が動くたびに激しくなり、激痛が常に共にあった。


 そんな激痛が伴う状態でルイザとの戦いに集中する方が難しかった。


 そんな中、ルイザの蹴りがクラレンスの鳩尾に入る。その衝撃で胸部の傷が広がり、クラレンスの表情は苦しみに歪んだ。


 それにルイザは心の中で卑怯な手を使ったことを詫びながら、攻撃を続けた。しかし、次の閃撃はルイザの頬を斬った。


 慌てて相手の眼を見てみれば、底知れぬ闘志が燃え盛っていた。クラレンスはまだ諦めていない。たとえ、胸部からの出血が激しくとも。


 そこからのルイザの猛攻はクラレンスの斬撃の嵐によって、相殺される。傷を負っているなど微塵も感じさせない剣捌きにルイザは冷や汗が滴った。


 ――執念。それは王城を踏み荒らした魔王軍に負けて堪るかという強い意思であった。


 クラレンスの斬撃の加速は留まるところを知らない。もはや、ルイザには防ぐことすらギリギリの状態であった。反撃する隙すらも与えられなかった。


「自分は何としても、あなた方を倒し、ユメシュ殿への義理を果たさなければならないのです!」


 ルイザは自らの戦う理由を口にし、自らを鼓舞しながら必死でクラレンスの猛攻を防いでいた。


 そして、ルイザはついに魔法を使った。


 ルイザの召喚魔法・影装。その魔法で影で出来た盾を召喚し、クラレンスの剣を防いだ。その一瞬。ルイザの片手剣ブロードソードがクラレンスの頭部目がけて突き出される。


 クラレンスはとっさに首を傾け、これを回避。しかし、突きからの横薙ぎにクラレンスの浮き通るような銀髪の何本かが持っていかれた。


 地面を転がり、ルイザの間合いから一時的に離脱したクラレンスは、再び自らの意思で肉薄する。


 肉薄と同時に鍔ぜり合う双方。それを左へ流し、ルイザが体勢を崩したところに竜聖剣イガルベーラの柄頭で彼女の頬骨を横へ薙ぎ払うように殴打。


 ルイザの口からは血が吐き出されると共に白い物体がいくつか零れ落ちた。


 あまりの衝撃にふらつくルイザの足をクラレンスが力強く踏みつける。そこから流れるようにルイザの顔面に肘うちを叩き込む。


 そして、トドメとばかりに回し蹴りで間合いの外へ叩きだされる。口と鼻からの出血が激しいルイザは、地面の上に叩き伏せられた。


 目の前に立つクラレンスという男は傷を負っていても、ルイザとの戦闘を続けている。もちろん、斬られてすぐの頃は痛みに表情が歪んでいたが、今はそんな気配すら感じさせない。


 ――まるで、痛みを克服したかのように。


 ルイザはそんなことはあり得ないと自らの脳内に浮かんだ言葉を打ち消す。刹那、真正面から斬りかかって来たクラレンスへこれでもかと影の矢の一斉射撃を見舞う。


 それを顔色一つ変えず、剣一本で迎え撃つクラレンス。そして、瞬く間に影の矢を斬り払っていく。ものの数秒でクラレンスの斬撃は影の矢をすべて切り裂き、ルイザ本体へとその刃を伸ばした。


 ルイザは片手剣ブロードソードを縦にしてクラレンスの横一閃を防御ガード


「やはり強いな。魔族というのは」


 クラレンスはそう独り言ち、一度剣を引く。そこから数秒ほどにらみ合いが続き、再び戦端が開かれた。


 双方負傷しているが、それを感じさせない圧巻の剣技を発揮していた。


 ……双方負傷しているといっても、ルイザの方の傷は悪魔の肉体再生能力によって徐々に回復しつつあるのだが。


 こうして激しい斬撃の応酬が続く、終わりの見えない戦闘。


 長きにわたる戦いであったが、それは見ているモノを不思議と飽きさせずに見入らせるハラハラドキドキするモノが確かにあった。


「“影剣シャドウソード”!」


 ルイザの左手に影の剣が呼び出され、右手の片手剣ブロードソードと合わせて二刀流となった。ルイザの狙いはクラレンス以上の手数をもって、一太刀でも傷を多く与えること。


 悪魔であるルイザとは違い、人間であるクラレンスの外傷が癒えることはないのだから。


 影とオリハルコンの斬撃を織り交ぜた剣舞はクラレンスへと襲い掛かる。たとえ、敵が二刀流となって手数で圧倒しようとしても、クラレンスは手にした剣一本でその手数を上回るのみであった。


 ルイザが一太刀浴び、二太刀返せば、クラレンスは負けじと三太刀浴びせ返す。そんな高速で行なわれる剣のやり取りは数分間にも及んだ。


「うぐっ!?」


 ルイザが地面を滑り、戦闘衣バトルクロスを土ぼこりに染め上げる。だが、直後に迫りくる天敵クラレンスにルイザは四肢を震わせて立ち向かう。


 この尋常ではない速度で交わされる瞬速の駆け引きは二人の戦う後ろでゴーレムたちと交戦しているライオネルたち親衛隊と王国騎士たちを勇気づけた。


 クラレンスの戦いに触発された者たちの怒涛の攻撃がゴーレムを次々に破壊していく。そして、動作の一つ一つが士気を上昇させるクラレンスの猛攻は瞬く間にルイザを参らせた。


 剣と剣とが交わること数百合。互いに息が上がっているにも関わらず、剣を振る手が止まることは無かった。


「しまった!?」


 そして、獰猛な輝きを放つ竜聖剣イガルベーラが駆け抜け、ルイザの影の剣を両断した。


 それでも激しい戦闘は続く。


 互いの得物が激しくぶつかり合い、耳に刺さる音を響かせる。


 再び一刀流での戦闘に戻るが、ルイザの斬撃は加速する。いや、加速させざるを得なかった。


 二刀流でも及ばなかった手数を一刀流となったことでさらに減らしているのだ。多少の無理をしてでも、加速させなければ死が待つばかり。


 今のルイザの想いはクラレンスに勝つことよりも死にたくないという感情が勝っていた。


 それではルイザは勝つことは出来ない。なぜなら――


「フッ!」


 ――目の前の相手を見ていないからだ。


 ついにルイザの持つ片手剣ブロードソードが真正面から叩き切られた。瞳を驚愕に染めるルイザを見やりながら、クラレンスは後方へと跳躍。


 跳躍中にクラレンスの持つ竜聖剣イガルベーラへ魔力が収束されていく。


「“竜螺旋・大蛇オロチ”」


 剣から解き放たれる八頭竜。その八つの輝きは。


 猛々しい炎をまき散らす炎竜。帯電し、黄の光を放つ雷竜。透き通るような青い水を纏う海竜。氷粒をこぼしながら、凍てつく冷気を纏う氷竜。大気を纏い、風の奔流そのものである天竜。太陽光と見間違えるほどに眩い輝きを放つ聖竜。岩石と砂を周囲に巡らせる地竜。真っ黒な闇を纏う闇竜。この八つ。


 ルイザは直撃の寸前。全魔力を賭して、影の鎧を召喚して全身の防御を固めていた。しかし、八の竜が螺旋状に渦巻き、そんな鎧ごとルイザの身を食らう。そして、天へと昇っていく。


 八の竜の輝きは天へと上った後、聖都フレイスを覆う結界と衝突し、爆散した。


 クラレンスの目の前には粉々になった鎧の破片などと共に灰が降り注ぎ、それによって生じた影は大聖堂へと駆け抜けていった。


「まず一人」


 剣先を地面へ向けながら、独り言ちるクラレンス。彼はそこで止まることはなく、後方で未だに数百体に及ぶゴーレムとの戦いを続ける親衛隊五名と騎士たちの元へ、援護を共に戦うべく駆けだすのだった。

第187話「七魔将ルイザ」はいかがでしたか?

クラレンスがルイザを撃破して、親衛隊たちを助けるべく次の戦場に向かっていってました。

まだまだ戦闘自体は続きますが、七魔将との戦いはあと3話で終わりますので、もうしばらくお付き合いください!

そして、次回は洋介とイライアスの二人の戦いになります!

――次回「七魔将イライアス」

更新は10/26(火)の20時になりますので、お楽しみに!

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