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日常のち冒険~俺は世界を超えて幼馴染を救う~  作者: ヌマサン
第11章 聖都攻略編
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第182話 聖都攻略会議

どうも、ヌマサンです!

今回はフィリスたちを救出した後の話になります。

また、会議を開始していく中で、途中で参加してくる人物がいます……!

一体、誰が来るのかを予想しながら読んでもらえればと思います!

それでは、第182話「聖都攻略会議」をお楽しみください!

 俺たちはフィリスさんを救出した後、迅速に海岸部にある陣地へと撤退した。アラン水軍司令たち陣地に残っていた人たちは、フィリスさんが無事に戻って来たことに安堵した様子だった。


「アラン水軍司令、心配をかけたな」


「ああ。ホント、総司令が無事で何よりだったぜ」


 陣地に帰還したその日は、フィリスさんと同行していた兵士の人たちの治療が行われた。


 ただ、俺たちは帰りにフィリスさんから聞かされた情報について、一度集まって話をしようということになった。


 集合場所は俺たち来訪者組用に与えられたテント。人数的には10人ほどが入れる広さだ。そんなテントを貸してもらったことに申しわけなさを感じながら、俺たちは中央で床に座り、円形状に集まった。


「それで、早速フィリスさんから聞いた話について話していこうと思うんだが……」


 俺たちがフィリスさんから聞いた情報。それは寛之が敵側として参戦していること。そして、フィリスさんはそんな寛之と戦い、負傷したということも。


 聖都フレイスは黒い結界で覆われており、何でもその内部から撤退してきた際に唯一後を追ってきたのが寛之だったそうだ。


 そんな寛之相手にフィリスさんとアシュレイさんが二人がかりで挑んだものの、まったく歯が立たずに敗北したのだという。


 寛之は力も動きの速さも肉体の耐久性において、二人を遥かに上回っており、中でも魔力量においては人間とは比べものにならないほどだったそうだ。


「……私は寛之さんを止めたいです。それで、どうしてこんな事をするのか、寛之さんの口から直接聞きたいです!」


 茉由ちゃんは両方の拳をギュッと握りしめて、目に涙をためながら寛之への想いを述べた。その言葉に俺たちは深く同意した。なぜ、寛之が魔王軍の側についてのか。それだけは何としても確かめなければならない。


「だが、実際問題としてホルアデス火山で戦った寛之は強かった。俺や夏海姉さんたちで束になっても、勝てなかった」


 洋介はホルアデス火山での事を思い出したのか、悔しそうに唇を噛みしめていた。それは紗希や武淵先輩も同じだった。


 俺と呉宮さんはあの時、寛之と戦うことが無かったからイマイチ実感が湧かないのだ。でも、四人の強さは俺も良く知っている。そんな四人が束になっても勝てなかったのだとすれば、冗談抜きで八眷属にも匹敵する強さなのかもしれない。


 そんな寛之相手に話し合いが出来るのか。話し合いに寛之が応じる以前に、俺たちがやられてしまう方が先なのではないか。そんなことを思った。


 話し合いは寛之とは一度話をするべきだ、というところは全員の意見が合致した。だが、それ以上のことは決定することは出来なかった。


 その日は陣地で夕食を食べた後、すぐにテントに戻り、俺たちはゆっくりと休息を取ることにしたのだった。


 ◇


「ふぁ~」


 俺は大きくあくびをしながら、体を起こす。辺りをぐるっと見回してみれば、紗希以外は眠っているようだった。紗希のことだ、どうせ朝練をしているのだろう。


 そう思って、テントの外に出てみれば、紗希とフィリスさんが木刀で激しく打ち合っていた。まさかフィリスさんまで朝練をしているとは思わなかったので、ちょっとビックリした。


 にしても、二人の剣捌きは鮮やかであった。ついつい見とれてしまうほどの洗練された美しさがそこにはあった。


「おや、直哉じゃないか。随分と早起きだな」


「まあ、ふと目が覚めただけですよ。いつもはもっと遅いです」


 木刀を提げたフィリスさんとにこやかに言葉を交わす。その間、紗希はそっぽを向いていた。


「直哉、紗希とケンカでもしているのか?」


 突然、フィリスさんが耳打ちしてきたが、内容がその通りだったため、俺はコクリと頷いた。


「そうか……。これから戦いだというのに、お前たちがいがみ合っているのでは、勝敗に大きく関わって来る。戦いが始まるまでに仲直りしてくれ」


「そう言われましても……」


 俺は心の中で『仲直り出来るなら、もうとっくにやってるよ!』と叫びながら、紗希の方へと視線をやった。だが、紗希の纏う空気は近寄りがたいものがあり、俺には話しかける勇気が出なかった。


 そうしている内に『また後でいいか』という囁き声が頭を巡りはじめる。そして、俺はその言葉に負けた。


 朝からそんなこともあり、俺は紗希とのことをどうするかを考えながら、フィリスさんの招集に応じ、テントでの聖都フレイス攻略に向けての作戦会議に加わった。


 テントの中にはフィリスさんとアラン水軍司令、ユーリさんといった王国軍に関わる人たち。そして、俺たち来訪者組が加わって会議が行われた。そのテントの入口にはアシュレイさんが警備についていた。


「さて、全員よく集まってくれた。今から聖都フレイス攻略に向けての軍議を行なう。まず――」


 まずは敵戦力の確認が行われた。フィリスさんたちが戦ったのはホムンクルス二千体ほどとゴーレム二百体。それを東西南北4つの門に均等に配置しているとして、そこにアラン水軍司令たちを襲った部隊を加えれば、一万近いホムンクルスと千に及ぶゴーレムがいると推定された。


 それに対して、味方の戦力は重傷者を除いた動ける兵士の数が一万と八百。内訳としてはアラン水軍司令率いる水軍が六千八百、フィリスさん率いる王国軍が三千五百、そしてユーリさん率いる五百。中でも、水軍はこの陣地から動かせないため、フィリスさんとユーリさん率いる四千ほどしか動かせない。


 そんな数で3倍近い敵と戦うなど無謀もいいところだった。正直、リラード伯爵の私兵が加われば五千に届くから、せいぜい倍近い兵力差まで詰められただろう。まあ、ないものねだりをしても仕方がないのだが。


 そして、会議は限られた兵を分散させるのではなく、一点突破を狙って陣地から見て距離的に一番近い北門を攻撃する案でまとまりそうであった。


 また、問題は敵の司令官たちをどうするかであった。寛之だけではなく、ラルフやダフネといったユメシュ配下の七魔将がいる。もちろん、ラルフとダフネ以外の七魔将がいることも考慮して動くべきだろう。


 仮に七魔将が全員いるとすれば、そこに寛之を加えて八人。そこに俺たち来訪者組を一人ずつぶつけても、二人は自由に動けてしまう。それを誰が抑えるのかというところで、全員が黙り込んでしまった。


 何もかもが敵よりも足らないことに俺たちは不安な気持ちを抱いた。だが、そんな暗い雰囲気のテントに数名の人物が到着した。


「ここが軍議をしているところか」


 低いトーンで、圧のある声がテント中に響く。俺と紗希は日本に居る時から毎日のように聞いてきた声に安心感を覚えた。


「よう、みんな元気にしてたか?」


「親父!」


「お父さん!」


 俺と紗希は迷わずに親父のところに駆け寄った。親父は俺たちの頭をわしゃわしゃとしながら、フィリスさんたちの方へと向き直った。


「俺はジェラルドだ。元々こっちに用があったから、どうせなら手伝ってやろうかと思ってな」


 親父がそう言って、ニヤリと笑みを浮かべると、テントの奥の方に居るフィリスさんやアラン水軍司令は口をポカンと開けたまま、凍ったように動かなくなっていた。


 そして、ユーリさんは恐る恐る親父に近づいていき、握手を求めていた。それを見て、フィリスさんやアラン水軍司令の二人も親父の方に駆け寄り、握手を求めていた。中でも、フィリスさんは涙の粒をボロボロこぼしながら握手をしていた。


 こうして、親父が有名人だということを再確認した俺なのであった。


「来たのはジェラルド殿だけではない」


 そんな声がテントの外から聞こえてきたかと思えば、テントの入口に立つ6人の男女――クラレンス殿下と親衛隊の面々だった。


「クラレンス殿下!到着なされたのですね……!お迎えも出来ず、申し訳ありません……!」


 フィリスさんがクラレンス殿下の前へ進み出、頭を下げる。その隣ではアラン水軍司令もペコリと頭を下げていた。そんな二人の肩に手を置き、顔を上げるように促している殿下に器の大きさのようなモノを感じた。


「会議の邪魔をしてしまったようだが、会議の内容と進行度合いを教えてくれないか?」


 クラレンス殿下はフィリスさんが立っていた場所に立っていた。恐らく、一番身分の高い人間が立つ場所なのだろう。そういうところを見ると、王国の身分社会が見えるようであった。


 そんなことを俺が思っている間、フィリスさんが責任を持ってクラレンス殿下たちに作戦の説明をしていた。


「そうか、敵との兵力差がそれほどまでに広がっているのであれば、一点突破の作戦は良いかもしれない。だが、敵もそれくらいの事は読んでいるのではないか?」


 クラレンス殿下の言葉に俺たちはぐうの音も出なかった。だからといって、兵力を分散させるのも気が引けるというもの。


 結局、クラレンス殿下の率いてきた九百名の騎士を加えて、聖都フレイスに攻め込むのは四千九百となった。とはいえ、それでも倍以上という兵力差は埋めることが出来なかった。


 そんな兵力差に頭を抱えてしまうところだったが、会議としてはそこで解散ということになった。


「そうだ、お前たち。ちょっとこっちに来てくれ。渡したい物がある」


 俺たちは親父に呼ばれて、テントの裏へ。そこで呉宮さんと武淵先輩にそれぞれ弓と槍が手渡された。


「あの、これは……?」


 何を渡されたのか、呉宮さんはそれを親父に質問した。その問いに対して、親父は詳細な説明をしてくれた。


 まず、呉宮さんに渡した弓は星魔弓サティアハといい、そのまま矢を番えて撃つことも出来るのだが、魔力を矢の形に変えてそのまま放つことも出来る。魔力を矢の形に変えるには、精密な魔力操作の技術が必要とのことだった。また、それが出来れば、応用技として自らの魔法を矢の形に変えて放つことも十分に可能とのことだった。


 続いて、武淵先輩が受け取った槍は星魔槍テミトリアという槍で、持ち主の意思に呼応して、長さを自由に変えられるとのことであった。


 星魔弓サティアハも星魔槍テミトリアも、西の大陸にあったヴィシュヴェ帝国の帝都に封印されていた代物なのだそうだ。


「あと、俺が使っている聖剣アルデバランもその二つの武器と同系統の古代兵器で、正式名称は星魔剣アルデバランだ。ま、どうしてかと言われれば、一々説明が面倒だから、聖剣という説明で通して来ただけなんだがな」


 まさかの親父の提げている大太刀と同じシリーズものだったということには驚いたが、これで全員の武器が古代兵器アーティファクトになった。


 親父がこの二つを取りに西の大陸に向かっていたのだと思えば、かなり有難かった。ましてや、これから魔王軍との激戦が待っているのだから、なおさら。


 星魔槍テミトリアを受け取った武淵先輩は試しに槍を長くしたり、短くしたりしていた。そこからは試しに三段突きをしてみせたりして、実際に扱えそうかどうかを確かめていた。


 また、隣の呉宮さんは星魔弓サティアハに矢を番えて、近くの木の幹に向かって試し撃ちをしていた。


「どう?呉宮さん」


「うん、今まで使っていた弓とは比べものにならないくらい使いやすいよ。何というか、こう……手に馴染む感じ!」


 そう語る呉宮さんの表情は嬉々としていた。そんな様子の呉宮さんは親父が言っていた魔力を弓の形に変えて放つということをやっていた。


「やあっ!」


 バシュッ!と矢が弓を離れていく音が響くと、キラキラと輝く魔力の矢は近くの木の幹を貫通した。


「スゴ……!」


「だ、だね……!私もビックリしちゃったよ……」


 二人で見つめる先にある木の幹には円形状の穴が空いており、少々木には申し訳ない気分になってしまうところではあった。


「でも、これくらいの威力が出せれば、私も直哉君の力になれるよね!」


「うん、その時は是非とも力を貸してくれ」


 呉宮さんが笑顔を咲かせているのにつられて、俺も笑顔で言葉を返した。


「ほう、かなり上手いこと魔力を矢の形に出来たもんだな。見ていてビックリしたぞ」


「ありがとうございます。でも、魔法を矢の形にするのはまだまだ難しそうです」


「まあ、こういうのは焦らないのが一番大事だからな。焦らずに何度も練習して出来るようになればいい」


「……はいっ!」


 親父が呉宮さん相手に星魔弓サティアハを扱う呉宮さんのことで話していたが、俺は中々話に入れず、静かに二人が話しているのをただ見ているだけだった。


「……で、直哉とはどこまで進んだんだ?」


「へっ!?」


「ちょっ、親父!」


 弓の話から急に話が変わったのには驚いたが、呉宮さんが顔を真っ赤にしていて見ている俺も恥ずかしかった。


 ……結局、親父には呉宮さんとはキスまでしかしていないことを伝えると、「なんだ、つまらん」と言われた。まったく、つまらんとは何だ!つまらんとは!


 俺は親父に詰め寄って色々と小言を言っている内に、陽が傾き始めたため、夕食を食べるためにその場を俺たちは離れたのだった。

第182話「聖都攻略会議」はいかがでしたか?

ジェラルドが新しい武器である星魔槍テミトリアと星魔弓サティアハを夏海と聖美に渡してましたが、これで武器の面での心配をしなくて済みそうな感じになってました。

そして、次回は早速聖都フレイスを目指していくので、どうなっていくのかを楽しみにしていてもらえればと思います。

――次回「進軍開始」

更新は10/11(月)の20時になりますので、お楽しみに!

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