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日常のち冒険~俺は世界を超えて幼馴染を救う~  作者: ヌマサン
第10章 大地の宝玉編
198/251

第169話 新たな魔鎧

どうも、ヌマサンです!

今回は直哉たちとゲオルグたちが本格的に戦う話になります……!

そんな戦いがどんな風に決着へ動いていくのかを楽しんでもらえればと思います。

それでは、第169話「新たな魔鎧」をお楽しみください!

 幾度となく響き渡る金属同士がぶつかる音。その際に生じる衝撃波が地面を撫でていく。


 洋介たち3人はそれぞれ、魔人相手であれば鎧を付けていなくても務まるほどの実力はある。そんな3人が鎧を装着していてなお、勝負は互角。均衡を保っていた。


「やるな、お前ら」


「そっちこそ!」


 互いに間を取った両者。大男の左右に槍使いの女性と剣士の少女が並んだ。対して、洋介の左右に夏海と茉由の二人が並んでいた。


「お前らが付けてる鎧。古代の産物(アーティファクト)か」


「……だったら、何だってんだよ」


 息を整えながら、洋介は切り返す。それを大男はフッと嘲笑をこぼした。


「旧式の鎧で俺たちと渡り合えてることに関しては、素直に褒めておいてやるぜ」


 旧式。その言葉が洋介たちの頭の片隅に留まった。嫌な予感と共に。


「俺たちが身に付けているのは魔鎧レイアティア。魔王様から我ら魔人の将軍に支給されたモノだ。性能面ではお前たちが身に付けている魔鎧セクメラギや魔鎧セベリルを上回っている」


 自分たちの装備の事をひけらかす大男に「それほどの余裕があるのか?」とツッコミを入れたそうな洋介、夏海、茉由の3人だったが、自分からペラペラしゃべってくれているので、黙って聞くことにしたのだった。


 大男の話の中に登場した魔鎧レイアティアの性能は魔鎧セクメラギや魔鎧セベリル同様身体能力の向上の効果が付いている。警戒すべきは、そこに追加されている2つの性能。


 1つは魔力増幅の効果。これによって、魔法の威力が向上する。そして、もう一つは魔法半減の効果。これは文字通り、自らにかけられた魔法の威力を半減させる効果となっている。


 要するに魔法面での強化が施された、より無敵に近づいた鎧。少なからず、洋介たちの鎧よりも性能が上なのは間違いなかった。


「……話は終わりか?ついでに聞いておくが、アンタらの名前は?」


 洋介がそこまで言った時、傍らの夏海が洋介の服の袖を引っ張った。


「洋介、人に名前を聞く時は自分からよ」


 夏海のささやきに『確かに』と洋介は深く頷いた。


「俺は弥城洋介だ。俺の左に居るのが武淵夏海で、右が呉宮茉由だ」


 夏海と茉由は自分の名前が呼ばれたタイミングで、それぞれが一礼をした。


「オレはブランドンだ」


「私はクリスタ」


「……サンドラ」


 洋介の名乗りの後、ブランドン、クリスタ、サンドラの3人はそれぞれが名乗った。また、クリスタとサンドラは夏海と茉由のマネをしたのか、名乗ると同時に一礼をしていた。


「ここまでの戦い、互いに一度も魔法を使わずじまいだったが、生憎オレたちは先を急いでるんだ!」


 ブランドンの言葉が終わるやいなや、ブランドンは紅色のオーラに包まれた。それに続くように、クリスタは背後に炎の矢を無数に番え、夏海へと照準を定める。そこから一瞬、遅れてサンドラは地面から炎の巨大な花を咲かせた。


 それには洋介たちも驚いた。全員、火属性の魔法の使い手か……と。しかも、展開速度からしてかなりの熟練度である……と。


 紅色のオーラを纏うブランドンの大斧に真正面から魔槌アシュタランをぶつける洋介。先ほどとは桁違いの膂力に洋介は怯んだ。そして、オーラを纏うことと、突然のパワーアップという言葉に洋介は思い出したことがあった。


 それはダグザシル山脈でのサイモンとの戦い。サイモンもリーフグリーンのオーラを纏った直後に今のブランドンのように桁違いの力を発揮していた。そこから導き出される答えは一つだった。


「炎の身体強化魔法!?」


「そうだ。オレにここまでさせるとは、お前も大した男だ」


 ブランドンの大斧を魔槌アシュタランの柄で間一髪のところで受け止めた洋介。そんな二人は、互いの息がかかるほどの距離で競り合っている。


「洋介!」


「“炎矢フレイムアロー”!」


 洋介へと駆け寄ろうと地面を蹴った夏海目がけて、クリスタから捌ききれないほど大量に炎の矢が贈られる。


 夏海は立ち止まり、重力魔法で炎の矢を下へと落下。その矢は地面へ突き立ち、燃え盛る。


 直後、接近したクリスタから神速の突きが見舞われる。夏海は槍の穂先で突きを弾き、易々と攻撃を貰うような事はしなかった。その辺りに夏海の槍使いとしての熟練度を感じる。


 その後も夏海とクリスタの槍撃の応酬は続き、そう簡単に決着が着く気配は無かった。


「……“炎花”。食い散らかせ」


 サンドラの一言と共に意志を持つかのごとく、花を咲かせている炎の植物は一切の躊躇もなく、茉由を攻撃した。


 そんな炎の花へ茉由は魔剣ユスティラトで斬りかかっていく。が、その花は燃えているのだ。近づくだけで熱く、肌を焼かれるような感覚がある。


 それを言えば、ブランドンの紅色のオーラも、クリスタの操る炎の武器も然りである。どれもかすったりするだけで肌が焼かれるような感覚を覚えてしまう。


 ただでさえ熱い空間で、火属性の魔法を操る魔人たちと戦う。正直、これ以上熱いと感じる局面での戦闘は今の状況でしか成立しないだろう。


「ハッ!」


 茉由は目にも止まらぬ斬撃に冷気を纏わせて炎の花へと見舞う。狙うは茎の部分。そうすれば、花の部分を落とせる。そう考えたのだ。


 しかし、その考えは甘かった。本体の前から炎の触手が地面を突き破って茉由を襲った。


「……ッ、“氷魔刃”!」


 二閃。スパッと爽快な音と共に触手は氷の刃によって半ばから両断され、触手の先端部はドサリと地面へ落ちた。


 だが、触手を落としたところで本体は無事。開いた花は茉由を頭部から喰らわんと噛みついてくる。茉由は必死でその攻撃を回避、回避、回避。とにかく回避しまくっていた。


「今!“氷魔斬”ッ!」


 回避する中で炎の花に生まれたわずかな隙。それを見逃すことなく、茉由は全力の一撃を叩き込む。“氷魔斬”を受けて左右真っ二つに斬り裂かれた花は火の粉となった散っていった。


「“雷霊槌”ッ!」


「フッ!」


 茉由が炎の植物を両断したことで勢いづき、洋介と夏海はそれぞれ攻勢に出る。洋介の一撃は周囲に電撃を発散し、それを受け止めたブランドンを強制的に5メートルほど後退させた。


 後退させられたブランドンとクリスタは互いに目を見合わせていた。それは洋介と夏海の実力が予想以上だったことに驚いているようだった。


 一方、サンドラの方も茉由に押されっぱなしであり、戦況としては魔人サイドが不利となっていた。


「サンドラ!()()をやってくれ!」


 ブランドンの叫びに応えるように頷くサンドラ。そんな彼女の魔法である炎の植物が隙間なく生え、壁となった。これによって、洋介、夏海、茉由の3人は完全に分断される格好となった。


 こうして、各個対峙するハメになった3人。こうして、魔人との第三ラウンドが開始されるのだった。


 ◇


「ラァッ!」


「うぐっ!?」


 ゲオルグの鉄拳が直哉の腹にめり込む。直哉は苦しそうな声を出しながら、真後ろへ吹き飛ばされる。聖美はそんな直哉を不安げな眼差しで見送りながら、矢を番えて放った。


 しかし、鏃がアダマンタイト製だったとしても、鏃以外の部分は木製。炎の使い手であるゲオルグには命中前に燃やされてしまうため、相性は最悪であった。


 それでも聖美は諦めることなく、必死に矢を番えては放ち、番えては放つということを繰り返した。


「んな攻撃、聞くわけねぇだろうが!」


「くっ!?」


 聖美に球体の炎が命中する。これによって、肌と服は焼かれ、弓も矢も焼き切られてしまった。直哉たちに暗殺者ギルドから助けられてローカラトの町にやって来て以来、ずっと使ってきた愛着のある弓。


 そんな弓が目の前で燃やされ、跡形も残らなかった。それは聖美にとって、目の前で共に戦いを潜り抜けてきた相棒を燃やされたようなものだった。悲しくなるし、どう戦えば良いのか、不安な気持ちで胸が苦しくなる。


「死ねッ、このアマッ!」


 ゲオルグの拳が聖美の頭部を打ち砕かんとした時、それを阻む者が立ち塞がった。


「チッ!まだ生きてやがったのか!」


「生憎、俺は結構しぶとさには自信があるんだ」


 打ち出されたゲオルグの拳を腕を交差させ、真正面から受け止める直哉。拳を打ち出したことで、比較的隙が多いゲオルグの腹部を蹴り飛ばし、間合いを取った。


「呉宮さん、大丈夫?何だったら、休んでおいてくれても……」


「ううん、私も戦う!私だって、まだまだ戦えるよ!」


 聖美は涙を拭った聖美の表情に心配を払拭した直哉は聖美に短剣を構えさせ、二人がかりでゲオルグに攻撃を仕掛けることを持ちかけた。


「……分かった。直哉君と初めて近接戦闘での共闘だね」


「そうか、そうなるのか。じゃあ、二人のデビュー戦は白星で飾ろう」


 直哉はイシュトイアを構え、その隣に腰を低く落とした聖美が両手に短剣を構えて並んだ。二人の決意を固めた表情を見て、ゲオルグは鼻で笑った。人間が決意を固めたところで、大して戦況に変化はない……と。


 竜の力を解放している直哉が肉薄し、イシュトイアでの一太刀を浴びせる。間髪入れずに聖美からの短剣が煌めくこと二度。


 吸血鬼の力を解放した聖美と竜の力を解放している直哉は機動力に関しては同等であったため、ほとんど同時攻撃のようなマネが出来ていた。しかも、その敏捷性はゲオルグをわずかに上回っている。


 これによって、二人の間髪入れずの連携攻撃が成り立っていた。非常にハイレベルな近接戦は、二対一ということもあってゲオルグをじわじわと押しつつあった。


「あまり、調子に乗ってんじゃ……ねぇ!」


 ゲオルグの怒りを表しているかのような猛々しい炎は直哉と聖美を炎の勢いそのままに吹き飛ばしてしまった。


「ぐっ!」


「きゃっ!」


 ボールのように地面を跳ねながら、二人は地面を転がされた。しかし、徐々に勢いは落ち、無事に停止することが出来た。


 直哉は竜の鱗のこともあり、大して火傷を負っている様子は無かった。対して、聖美は皮膚がただれるほどの大やけどであったが、吸血鬼の再生能力のおかげで徐々に癒されつつある。ものの数分で何事も無かったかのように再生するであろうことは明白であった。


 竜と吸血鬼。二人とも、人間離れした戦闘能力を有していることにゲオルグは厄介だと、この時点では心の底から思っていた。


「もう一度!」


 直哉が再度突撃を仕掛けていく。それと並ぶように聖美も並走している。


 その後も息の合ったコンビネーションでゲオルグは後手に回る羽目になり、思うように反撃が出来ない状態が続いた。


 近くで応援を頼めそうなマルティンは紗希と目にも止まらぬ速さでの高速戦闘を展開しており、決着する気配もない。かと言って、部下3人を呼び寄せたところで直哉と聖美の敵ではないことは明らかだ。


 ……そもそも、ブランドンとクリスタ、サンドラの3人は洋介たちと交戦中であるため、とてもゲオルグに加勢する余裕などないのだが。


 ゆえに、ゲオルグ一人でどうにかするしかないわけだが、中々策が思いつかず思考が脳内をグルグルと同じところを巡るばかりであった。


「ハッ!」


「やぁっ!」


 直哉の持つイシュトイアと聖美の持つ短剣が交差し、ゲオルグの胸部にバツ印の傷を刻んだ。さすがのゲオルグもダメージを受ければ、攻撃の威力と精度はともに落ちるだろう。そう踏んでいた直哉。だが、ゲオルグの瞳からは闘志など失われてなどいなかった。


「……テメェら、もうまとめて消し炭にしてやらぁ」


 ――その怒りを帯びた低めの声は、直哉と聖美の二人を射すくめるのに十分であった。

第169話「新たな魔鎧」はいかがでしたか?

まだまだ戦いは白熱していきますが、戦いの行方を見守ってもらえればと思います。

次回も戦いが続いていくわけですが、まさかの人物が登場するので、誰が出てくるのか、良かったら予想してみてくださいな!

――次回「予想外の再会」

更新は8/28(土)の20時になりますので、お楽しみに!

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