表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
日常のち冒険~俺は世界を超えて幼馴染を救う~  作者: ヌマサン
第9章 大海の宝玉編
188/251

第160話 乱入者

どうも、ヌマサンです!

今回は前回のラストで乱入してきたレイクサーペントとの戦いから始まります……!

水中の戦いで、どうやってレイクサーペントを倒すのか、そこを楽しんでもらえればと思います!

それでは、第160話「乱入者」をお楽しみください!

 ――シャァァァ!


 レイクサーペントは人間など丸呑みできそうなほどに巨大な口を開けながら、こちらへと突進してくる。俺たちは生存本能に従ってその場から緊急回避した。


 レイクサーペントが突っ込んだ壁は放射線状にヒビが入り、クレーターのように凹んでしまっていた。


 回避したのも束の間、レイクサーペントの長い尾での薙ぎ払いが繰り出される。俺以外は即座に回避に成功していたが、俺は考え事をしていたこともあって、完全に逃げ遅れた。


 体を突き抜けるような衝撃に体内の空気が余すことなく吐き出される。正直、長時間潜っていたことでほとんど空気も持ち合わせが無かった。俺以外のみんなもそうだろう。そんな状態で壁へと一直線に突撃した。


 俺は意識が落ちる前に、紗希にレイクサーペントを倒すように頼んだ。本音を言えば、酸素ボンベがこの世界に無い事を恨みたいところだ。しかし、恨んだところで突然肺に空気が入るわけではない。だから、紗希に託す。


 俺は体が壁から底へと沈んでいく感覚を味わった。もう、意識も感覚も朦朧としていて何が起こっているのか、情報処理が追い付かなかった。


 どれだけの強さでも、水中で呼吸できなければ死ぬ。そんなことを身をもって体験したようだった。仲間の足を引っ張ってまで生きようとは思えないが、それでも死にたくない!


 矛盾した感情と共に沈んでいく俺の体。だが、次の瞬間には水面上へと放られていた。武淵先輩が親指を立てているのを見れば、何が起こったのか分かった。


 一度、全員で酸素を補給するために重力魔法で浮上したのだ。そして、全員で目一杯の空気を吸い込んで再び水中へ。


 俺は自分の体に治癒魔法を付加エンチャントしながらレイクサーペントへと戦いを挑んだ。


 洋介が力任せに斬撃を振るっても、茉由ちゃんが斬り上げを放っても、レイクサーペントの鱗には傷一つ入らなかった。それもそのはず、水中で物体が移動すると何とか抵抗という力が働いて水の抵抗を受けてしまうのだ。


 それによって、地上で居る時のような火力の斬撃が繰り出せないのだ。それは武淵先輩の槍でも呉宮さんの短剣でも、それは同じであった。さらに絶望的なのが、この中で桁違いの剣速を誇る紗希の斬撃でようやくかすり傷が入ったということ。この調子では紗希よりも剣速の遅い俺の斬撃が通らないことは確実である。


 レイクサーペントは俺が攻撃を躊躇したことを見抜いたのか、あっという間に距離を詰めてきた。どうにでもなれという思いの元振るった一太刀。しかし、洋介ほどのパワーもなく、紗希ほどの速度もない俺の斬撃が紙をペーパーナイフで切るかの如く、あっさりとレイクサーペントの鱗を切り裂いた。


 レイクサーペントは絶叫しているようであったが、この切れ味はさすがイシュトイアと言わざるを得なかった。俺はレイクサーペントが痛みに荒ぶっている間に紗希へと近づき、紗希にイシュトイアを貸した。


 俺の斬撃でもイシュトイアであれば、ダメージを入れられた。ならば、俺とは桁違いの剣速を誇る我が妹にイシュトイアを振るって貰えればさらにダメージが入りやすいのでは、と考えたのだ。


 結論から言えば、俺の考えは正しかった。


 ……ただ、予想を遥かに上回る戦果が上がってしまったが。


 ――薪苗流剣術第三秘剣・久遠


 紗希が放った直線状に斬撃の嵐を浴びせる凄絶な技は、剣に触れた途端にレイクサーペントは体をバラバラに解体され、赤い血肉を周辺に散らした。


 あれほど巨大で、脅威にしか思えなかった魔物を瞬く間に解体してしまった紗希に俺はシンプルに畏怖の念を覚えた。水圧を受けている状態でこの威力なのだ。地上で受ければ、レイクサーペントは目に見えない大きさまで切り刻まれていたかもしれない。


 何はともあれ、レイクサーペントを倒すことに成功した俺たち。安心していたのも束の間、今度はテンタクルスの触手が襲い掛かって来る。


 巧みに俺たちは攻撃をかわしたり、武器で受け止めたりしたことで防ぐことが出来ていたが、あくまで時間稼ぎに過ぎなかった。


 そんな時、入り口の方から気配を感じた。俺以外の全員も感じ取ったらしく、タイミングを合わせて入口を振り返ってみれば、そこにはリディヤ、セルジ、グウィリム、ロレンツォの4人が鉄格子を破壊、武器を引っ提げて侵入してくるところだった。


 4人とも魔鎧セベリルは装備していないものの、武器はそのままであった。まさかとは思ったが、戦いの傷が癒えないうちに来たというのだろうか。


 俺たちがあっけに取られている間にテンタクルスへと近づいてくる。リディヤたち海賊団ケイレスには大海の宝玉は渡すまいと俺たちも急いで追いかけた。


 リディヤさんたちはそれぞれが持つ古代兵器アーティファクトで、テンタクルスの触手を斬り払い、豪快に薙ぎ払い、打ち据えていく。いかに水中で攻撃の威力が落ちるとはいえ、さすがは古代兵器アーティファクトと言わざるを得ない奮戦ぶりであった。


 リディヤさんたちが大海の宝玉に辿り着こうとした時、空間の天井部に巨大な穴が開けられた。その先から凄まじい魔力と殺気を感じ、俺たちは動きを止めてしまった。


 この相手を威圧するかのような存在感には覚えがある。ユメシュやディアナ、ヴィゴールたち魔王軍八眷属だ。つまり……その可能性は高いわけだ。


 天井の穴から湖の水が滝のように流れ落ち、空気を吸うことが出来ていた水面より上の部分は湖の水で押しつぶされた。これで、俺たちは手持ちの空気以外で呼吸することはできない。


 ――逃げるか、戦うか。


 究極の二択を迫られたわけだが、すぐに結論は出なかった。その間に巨大な魔力を放つ存在は俺たちの前へと姿を現した。その人物は藍色の髪をしたスーツ姿の男。手にはサーベルを提げ、辺りをキョロキョロと見回していた。


 そして、男は俺たちには目もくれず、大海の宝玉へと弾丸の如き速度で泳いでいった。


 リディヤが大海の宝玉へと手を伸ばしていたにも関わらず、それより早く大海の宝玉は男の手中に落ちた。


 大海の宝玉を奪い返そうとリディヤは男へと斬りかかる。それを一瞥した男はサーベルを横薙ぎに一閃。次の瞬間にはリディヤを突き飛ばして庇ったグウィリムが胴を境目にして上下真っ二つに切断されてしまっていた。


 彼の持つ魔槌アシュタランが彼の手から滑り落ちていく。


 そんな光景を見て取り乱すリディヤ。そんな彼女を横目にセルジが魔剣ユスティラトの刃を伸ばして男を攻撃するが、男は華麗な泳ぎでユスティラトの追撃を振り切って見せた。


 セルジが刃を戻している間に魔棍セドウスで飛び掛かっていくロレンツォだったが、一刀の元に首を刎ね飛ばされてしまった。


 剣身が戻り、二人の敵討ちとばかりに男へと斬撃を見舞ったセルジだったが、軽々と受け止められてしまっていた。そればかりか、男の大上段からの一撃で頭頂部から股下までを縦に切り裂かれた。


 配下の三頭目が目の前で惨殺されたのを見て、動揺したリディヤも瞬く間に心臓をサーベルで貫かれてしまっていた。水中を漂う4人の亡骸と4つの古代兵器アーティファクト。俺たちは無様なことに、何も出来ずにただ見ていることしか出来なかった。


 情けない気持ちではあったが、俺たちにまごついている暇はない。男の射すくめるような瞳は確実に俺たちを捉えていた。俺は恐怖から反射的に竜の力を解放してしまった。


 俺は武淵先輩に合図をし、遺跡から全員を逃がすように頼んだ。呉宮さんと紗希は反対している様子だったが、武淵先輩は問答無用で重力を上へと操作した。


 幸いにも、男が湖底神殿へと侵入してくる際に破壊した天井からの脱出という選択肢が残っていた。迷わず、俺たちはその選択肢を選び取った。


 だが、それを呑気に見過ごすほど敵は甘くなかった。男はサーベルと共に武淵先輩たちの方へと加速。俺はその進路を阻むように立ち、サーベルを受け止めた。


 俺が男のサーベルを真正面から受けたタイミングで、武淵先輩たちは神殿の天井を抜け、湖へと出ていた。


 それを横目で確認しながら、男のサーベルを弾き返した。男は俺が弾き返したことを受けて、フッと笑みをこぼした。その笑みが何を意味するのか、俺には分からなかった。


 しかし、次の瞬間。その笑みの意味を理解せざるを得なかった。男の手に魔法陣が浮かび上がった。俺は何の魔法なのかを理解しようとしたが、それより早く腕を、足を、撫でるように切り裂いていった。


「なっ……!」


 今の俺は竜の力を解放している。トラックで刎ねられても、王城の4階から落下しても大して傷を負わなかった。それほどの強度を誇る竜の鱗をこうも容易く切り裂かれた。その事実だけが記憶に残された。


 ――圧縮して打ち出された水の刃はドラゴンの鱗をも切り裂く。


 脳内に直接響いてくるかのような声であったが、音が入って来るのは間違いなく耳からだった。男の方を見てみれば、当然のように口を開いて話をしている風だった。水中で息が出来ているという異様な様子にどうすればいいのか分からず、体の動きを硬直させた。


 ――私はベルナルド。魔王軍八眷属の一人、水のエレメントを司る者です。


 やはり八眷属だったか。俺はそう、心の中で頷いた。それであればこれほどの威力の攻撃を繰り出せてもおかしくはない。


 そして、先ほどベルナルド自身が言っていたが、俺の腕と足に一文字の傷を刻んだのは圧縮された水の刃。使ったのが魔法であれば、刃が命中する前に破壊してしまえば対処可能だ。


 次の瞬間、最大速度で肉薄してきたベルナルドのサーベルを反射的に防いだ。これに、ベルナルドも感心した様子であった。だが、油断することはできない。


 俺はお返しとばかりに斬撃を見舞うも、易々とかわされてしまった。これが地上であれば、浅い傷を刻むくらいは出来るのに。


 再び魔法が発動される。放たれた刃は水の中であるため、見逃してしまいそうになるが、目を凝らせば見えないモノでは無かった。水の刃は俺に触れた途端、粉々に砕け散った。


 その光景にベルナルドも目を見開いて驚いている様子だったが、その隙を逃がすほど俺も甘くはない。


 すかさず、接近して斬撃を見舞う。が、水中であるため、思うような速度が出ない。なのに、ベルナルドは地上で動き回っているかのように自由自在に動き回っている。


 自由自在な動きをしてみせるベルナルドから幾度となく放たれる斬撃。それは着実に俺の体にダメージを加えていた。このままいけば、俺はズタズタに切り裂かれて殺される。


 助かるためには俺が地上に出るのが得策。だが、それを見逃してくれるほど敵が優しいとは思えない。


(それでも、やるしかないんだ!)


 俺は地上へ戻るべく、水面を目指してただひたすらに泳いでいく。それを斬撃と共に追跡してくるベルナルド。


 俺は次々にダメージが入り、血を垂れ流している足を懸命に動かして上へ。上がっていくにつれ、地上に出た時に足が動くのかどうかが不安になってくる。今のところ、腕や胴体を狙った攻撃はイシュトイアで弾いているから無傷だ。それもどうなるのか、分からない。


「プハァッ!」


 俺は水面から顔を出し、肺を新鮮な空気で満たす。刹那、俺は水流に呑まれ、空中へと放り出された。


 それをベルナルドは追撃してくる。水面を地面でも蹴るかのように宙へと。高度が下がり、落下してくる絶妙なタイミング。そこに俺より数十センチ高く跳んだベルナルドから大上段の振り下ろしが叩き込まれる。


 俺は勢いよく落下し、再び水中に戻される――かに見えた。


「まさか……!どうして君が空を!?」


 ダグザシル山脈で崖下から上がる時と同じように、靴に飛翔魔法を付加エンチャントしたのだ。これなら、俺は空を鳥ほどでは無いが飛ぶことが出来る。そして、空を飛べないベルナルドを圧倒できる。


 ――ベルナルドが理解に苦しんでいる間に、俺の猛攻が始まった。

第160話「乱入者」はいかがでしたか?

実は今回のタイトルの乱入者はレイクサーペントだけじゃなくて、ベルナルドのことも含んでいるんですよ……!

そんな二番目の乱入者によって、海賊団ケイレスのリディヤとセルジ、グウィリム、ロレンツォの4人が全員ともやられてしまうという結果になってしまいました……

そんな4人を殺したベルナルドと直哉の戦いがどうなるのか、次回のお楽しみということで!

――次回「湖畔の戦い」

更新は8/1(日)の20時になりますので、お楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ