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日常のち冒険~俺は世界を超えて幼馴染を救う~  作者: ヌマサン
第9章 大海の宝玉編
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第152話 海賊団襲来

どうも、ヌマサンです!

今回は前回にフィリスが言っていた海賊団ケイレスが港町アムルノスに上陸します!

海賊団ケイレスの上陸に対して、直哉たちがどう動いていくのかに注目してもらえればと思います。

それでは、第152話「海賊団襲来」をお楽しみください!

 大海に浮かぶ3隻の船が目指すのは前方の港町。


「リディヤ様、もうじき目的地に到着します」


 波に揺られる船上。男は腰に届くほどの長さのココアブラウンの髪を海風になびかせながら、玉座で眠るバーミリオン色のカーリーヘアのリディヤと呼ばれた女性に声をかける。


「……どうかしたの?セルジ。アタシ、まだ眠いんだけど……」


「もうじき、目的地である港町アムルノスに到着するので、起きてくれよ。我が海賊団ケイレスの頭は君なんだから」


 セルジに促されるまま、リディヤは体を起こし、玉座から立ち上がった。そこからのリディヤの動きは粗暴であり、女性とは思えないものがあった。そんな彼女の後ろを文句の一つも言わずにセルジは付いて歩いた。


「あそこが港町アムルノスよね?」


「はい。あの町を抜けたクレイアース湖に我々の目的地である湖底遺跡があります」


「分かったわ。グウィリム!ロレンツォ!」


 セルジの言葉を聞いて、女らしくない獰猛な笑みを浮かべるリディヤ。彼女は左右の大型船にいる二人の男の名を呼んだ。


「オレ様を呼んだか?リディヤの姉御!」


 右の大型船から鼓膜を突き破るほどの大声と共に姿を現したのはスキンヘッドの大男。彼の名はグウィリムである。


「リディヤ!何の用だ?」


 今度は反対側の左の大型船から刈り上げたミッドナイトブルーの髪を持つ男、ロレンツォが姿を現した。


「二人とも、これから作戦開始よ!詳しい指示はセルジに伝えてあるから、セルジから聞いて!」


 面倒なことはセルジに丸投げし、玉座へと戻っていくリディヤ。彼女の自由気ままな性格に3人とも呆れつつも、いつもの事だとサラリと流していた。


 グウィリムとロレンツォの二人は、セルジからの指示を待った。リディヤが玉座に腰かけたのを確認したのち、セルジは改まって作戦のことを語り始めた。


「この3隻の船には我が海賊団ケイレスの総戦力、660名が乗船している」


 セルジは前提条件を整理しつつ、作戦内容を事細かに伝えた。1隻に220名ずつ乗っている団員のうち、グウィリムとカーマインの乗る船からそれぞれ110名ずつ、計220名を港町アムルノスに降ろす。その指揮をグウィリムとカーマインが務める。


 そのような作戦内容を事細かに伝えた。


 こうして、グウィリム率いる110名は岸に船を寄せたタイミングで船から飛び降り、それに続くようにもう一隻の船からカーマイン率いる110名も港町アムルノスに降り立った。


「海賊だッ!」


「逃げろ~ッ!」


「誰か、兵隊を呼んでくれッ!」


 海沿いに居た人々が悲鳴を上げながら、四方八方に逃げ散っていく。それをグウィリムは鼻で笑い、ロレンツォは気に留める様子もなく、任務遂行のために動き出した。


「何事だ!」


 二人の隊が前進していると、港町を巡回している兵士数名が人々の悲鳴を聞いて駆けつける。だがしかし、グウィリムの大槌によって、まとめて吹き飛ばされてしまっていた。


「グウィリム!俺も後から追いかける!お前は雑魚に構わず、前進しろ!」


「へっ、分かったぜ」


 グウィリムは低く、響くような声で笑いながら自分の部隊を率いて行動を開始した。目指すは、前方に見える運河に架かる石橋。それを落として、大型船が運河を通れるようにするのがグウィリムに課された任務なのだ。


 そして、ロレンツォはその援護をするように指示を受けている。ゆえに、グウィリムの部隊に代わって、周囲の王国兵との戦闘の指揮を執っていた。


「おらぁ!どけどけッ!」


 グウィリムの大槌が唸るごとに周囲に居た大勢の人が王国兵、一般市民問わず大槌の纏う大気で宙を舞った。


「ぶっ潰れろ!」


 そして、グウィリム渾身の一撃で、運河に架かる石橋は石片となって崩れ落ちる。その直後、待ってましたとばかりにリディヤとセルジの乗った船が運河へと入る。


「“重力波グラヴィティ”ッ!」


 しかし、先頭を行くリディヤたちの乗った船は上からの重力により、前進することを阻まれた。


「セルジ、これは……!?」


「リディヤ様、ダメです。一度、奥へお下がりください」


 重力魔法の術者を特定しようと船から身を乗り出そうとするリディヤをセルジは固く諫めた。セルジの目配せを受けて、セルジの配下の団員がリディヤを護るべく周囲をグルリと囲むような陣形を組んだ。


 その間にも、セルジは焦ることなく冷静に辺りを観察し、術者の特定を急ぐ。その間に、石橋のかかって居た場所では戦闘が行われようとしていた。


「オラァ!」


 ――ガキィン!


 そんな高い金属音が周囲に響く。火花を散らしているのは、振り下ろされたサーベルとそれを受け止める大槌の柄である。それぞれ、洋介とグウィリムの得物だ。洋介と夏海の二人は、二人でアムルノスの町を散策していた。そこへ、この騒ぎを聞きつけて駆けつけたというわけである。


「ほう、不意打ちとは考えたな。小僧!」


「黙れ、お前に小僧呼ばわりされるいわれはねぇ!」


 そう言って、洋介はより一層サーベルに力を籠める。グウィリムは余裕そうな表情を浮かべながらも、軋む腕を持ち応えさせようと必死に耐えていた。グウィリムは一度、大槌を横に薙ぎ、サーベルを弾いた。そこに大槌を用いて、反対側へとフルスイングする。


「ぐっ!」


 これを間一髪のところで回避する洋介。そこへ斬りかかろうとする団員たち。それをグウィリムは固く戒めた。


「手出ししてんじゃねぇ、そいつはオレ様が叩き潰す!」


 グウィリムの威圧感の籠った耳に突き立つような言葉に、団員たちはたじろぎ、その言葉に異論を唱えることなく従った。


 ――その頃、セルジは重力魔法の発動者を発見していた。


「そのクロスボウ、借りてもいいかな?」


 近くでクロスボウを構え、セルジから話しかけられたことで右と左を交互に見て、落ち着かない様子の団員からクロスボウを借りたセルジは静かに構えた。そして、狙いを定め……引き金を引いた。


 矢は船を出る前に軌道が下にズレ、偶然下を逃げ惑っていた一般市民の首筋を射抜いた。


「……なるほど、今船を押さえている魔法によって、矢が下に落ちたのか。落下の角度と飛距離から計算するに……」


 セルジが目を閉じて一秒ほど。彼は再び、別のクロスボウを構えた。それは建物の向こうにある雲を射抜こうとしているかのようであった。


 周りの団員たちはセルジが何をしようとしているのかが分からず、キョトンとしていた。しかし、次の瞬間に見た光景は団員たちの眼に焼き付くこととなった。


 再び引き金が引かれ、クロスボウの矢は狙いよりも遥か上空へと飛び出し……対象へと一直線に飛ぶ軌道へと修正された。その矢は遮蔽物の陰に居た夏海の肩を鋭く貫いた。


 セルジは先ほどの一矢で重力魔法の効果で矢がどれくらい落とされるのかなどを計算した上で、今回の狙撃を行なったのだ。そんな神業に団員たちは拍手喝采であった。


 居場所がバレ、その場を離れようとした夏海に対して、セルジは抜剣。セルジの引き抜いた剣は刀身が鞭のように伸び、建物の屋上へ。その刃は夏海のわき腹を貫き、返す刀で背中を斜めに斬り裂いた。


「あがッ~~!」


 続けざまに放たれたセルジの神業に団員たちの眼は見開かれていた。夏海の痛みに耐えるような声に、グウィリムと交戦していた洋介の気が逸らされた。


 直前まで激しく、双方の人間離れした馬鹿力での得物のぶつけ合いが行われていたが、これによって勝敗が付いた。


 洋介のサーベルは大槌によって、豪快に薙ぎ払われ、クルクルッと勢いよく宙を舞った。武器を失った洋介の胸部に、遠慮なく柄を離れた大槌の先端部が叩き込まれる。


「グハッ!」


 口から血を吐きながら吹き飛ばされた洋介は勢いよく、石造りの建物の壁へと突っ込んだ。その壁は放射状にヒビが入り、ガラガラと音を立てて崩れ落ちた。洋介はそんな瓦礫に押しつぶされる格好となった。


「さすが、お前の魔槌アシュタランは威力が違うな」


「フン、ロレンツォか。まさか、誰も大槌の先端が柄から離れるなんて予想すら出来んだろうて!フハハハハハ……!」


 グウィリムは機嫌を良くしたのか、肩を大きく揺らしながら豪快に笑っていた。ロレンツォもそれを見て、フッと笑みをこぼす。


「だが、あの小僧もオレ様と純粋な力勝負で渡り合えるとは大したものだ」


 瓦礫の山を見やりながら、グウィリムは口端を吊り上げた。瓦礫の下から漏れ出てくる赤い液体はあと一歩及ばなかったことへの悔しさを表しているようだった。


「――洋介ッ!?」


 何か、直感で感じ取ったのか。夏海は焦りを帯びた眼差しで洋介の居た場所を建物の陰から見つめていた。屋上から降りてきた夏海だったが、脇腹を貫かれたことで、出血が止まらず、傷口も痛みが増すばかりであった。


 ――私の重力魔法を使えば、洋介を押しつぶしている瓦礫を退かせられる。


 そんなことを思いながら、夏海は海賊たちが行きすぎるのを待とうとした。何せ、今動いても攻撃されてしまうのは目に見えているからである。


 しかし、動いて欲しい時に限って人というモノは動かないものである。瓦礫の下から溢れる血は止まることが無い。洋介の命は今、燃え尽きようとしている。それを悠長に海賊団が去るのを待っているなど、夏海には無理であった。


 夏海は物陰から重力魔法を使い、瓦礫を静かに、慎重に持ち上げて、動かしていった。さらに、その瓦礫を海賊たちの間に並べることで遮蔽物とした。そんな小細工で、洋介と自分の姿を海賊団から見え失くした後、夏海は幼馴染の元へと駆け寄った。


 瓦礫を踏み越え、洋介の姿が見え、安心した刹那。瓦礫の山は粉々に吹き飛ばされた。グウィリムの魔槌アシュタランの先端部が柄から離れ、瓦礫の壁へと叩きつけたのだ。


「洋……介……ッ」


 その時に砕けた瓦礫の破片が夏海の肩や背中を中心に突き立ち、洋介に届く一歩手前で夏海は力なく崩れ落ちたのだった。


「グウィリム、よくやった」


「フン。ロレンツォ、貴様の武器でも十分だっただろうに」


 グウィリムは無駄な手間をかけさせられたことに対して不平を述べていたが、ロレンツォ自身、どこ吹く風といった様子であった。


 そんな中、再びリディヤとセルジの乗る船が前進し始めた。これに続くように、グウィリムとロレンツォの部隊もそれぞれ、陸路の進軍を再開した。


 ――海賊団ケイレス。総勢660名という規模を誇り、現在活動している唯一の海賊。その理由はシンプルで、ケイレスが他の海賊団を平らげて、勢力範囲を拡大したためだ。


 そんな海賊団ケイレスは大陸北部にある島に眠る遺跡へ侵入後、著しく戦力が強化されたことや、首領のリディヤとその配下の3頭目であるセルジ、グウィリム、ロレンツォの4人それぞれが王国の中隊一つを壊滅させるほどの実力者であることなどが知られている。


 そんな海賊団ケイレスは10年前に活動を開始し、先代の王国軍総司令を務めていたブルーノと何度も交戦した。そんなブルーノだったが、フィリスの兄であるクレマンが暗殺者ギルドと戦って死亡した翌月にケイレスとの戦いで海に落ち、死体が引き上げられた。


 その後釜として、ブルーノの元で副官を務めていたフィリスが王国軍総司令の座に就いて、現在に至るというわけである。また、ブルーノはジェラルド失踪後に王国軍総司令の地位を受け継いだ男であり、およそ12年の間、職務を全うしたことになる。


 そして、フィリスの代になってからは、海賊団ケイレスは実質的に野放しとなり、放置されることになった。


 そんな10年に渡り、スカートリア王国を苦しめた海賊団ケイレスが港町アムルノスに上陸した。これが、どんな結末を生むのか。この時の直哉たちは知る由も無い。

第152話「海賊団襲来」はいかがでしたか?

海賊団ケイレスとの戦いで、洋介と夏海が倒されてしまうという結果に……

そして、次回は紗希と茉由が動きます……!

――次回「女剣士の敗北」

更新は7/8(木)の20時になりますので、お楽しみに!

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