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日常のち冒険~俺は世界を超えて幼馴染を救う~  作者: ヌマサン
第8章 王都動乱編
158/251

第131話 魔王軍の七魔将

どうも、ヌマサンです!

今回は引き続き、王都での話になります。

前回同様、続々と戦端が開かれていきます……!

それでは、第131話「魔王軍の七魔将」をお楽しみください!

「……ギンワン、予約した店はこっち」


「そうなのかね」


 ミズハはいつものような落ち着いた雰囲気を残しつつも、高揚しているようにも感じられる。


 ギンワンはそんなミズハを見ながら、表情を緩める。そんな二人にヒサメ、ビャクヤ、ムラクモ、アカネの4人が続いていく。


 ここは王都の西通り。ここにはミズハが「王都に来たら絶対に来たい」と言ってやまなかったレストランがある。そのために、ギンワンはウィルフレッドからの誘いを断り、テクシスの冒険者6人でそのレストランに向かっているのである。


「……にしても、あの二人本当に楽しそうだ」


「そうよね!あの二人は仲のいい兄と妹って感じよね!」


 アカネは上手い具合にムラクモと話を合わせているつもりなのだが、微妙に言いたいことが違っていた。ムラクモはカップルみたいと言いたかったのだが、アカネは兄妹と言ったのだ。そのことで、ムラクモは言いたいことが上手く言えずに少し頬を膨らませていた。


「ヒサメちゃ~ん!槍、俺が持とうか?」


「大丈夫よ、だから触らないで。あなたの触った槍なんか使ったら変態がうつりそうだもの」


 ビャクヤが槍まで手を伸ばすものの、ヒサメに手を払われた。ヒサメは心底嫌そうな顔をしているが、ビャクヤはヒサメにかまって貰えただけで嬉しそうであった。


「……何をニヤニヤしているの?」


「いやぁ、変態なヒサメちゃんも悪くないなって思ってさ~?」


 ヒサメはそんな様子のビャクヤを哀れみの情を感じさせる瞳でビャクヤを見ていた。さすがにビャクヤもこれ以上はマズいと悟ったのか、それ以上は口を閉じて何も言わなくなった。


 それと、ヒサメたちがなぜ槍を持っているのかと言えば、昼間に王都郊外までピクニックに出かけたためだ。王都郊外でも魔物が出ないわけではないのだ。そんなわけで、万が一に備えて全員が武器を携帯しているのだ。


「……ギンワン?」


 ミズハが突然、歩みを止めたギンワンに対して疑問の言葉を投げかけた。


「全員、散開しろ!」


 その言葉に弾かれるように5人はバックステップでその場を離脱した。直後、凄まじい轟音と共に石畳が爆ぜた。


 石畳が爆ぜた時に舞い上がった土煙が収まると、そこには大斧を大剣で受け止めるギンワンの姿があった。ギンワンと対峙する中年男はロイヤルパープルの髪をオールバックにしているのが、特徴であった。


「今の一撃を受け止めるとはやるのぅ、小童」


「君は一体、何者かね?」


 ギンワンと一言ずつ交わした後、右手に大斧を握りしめている中年風の男はギンワンの大剣を使い、バネが伸びるようにギンワンとの距離を空けた。距離を取ったタイミングで、すでに左手に大剣を提げていた。


「ワシはイライアス。魔王軍八眷属が一人ユメシュ配下、七魔将が一人じゃよ」


 ギンワンたちは“魔王軍八眷属”という言葉に激しい憎悪を覚えていた。ゆえに、それぞれが武器を構え、即座に戦闘態勢を整えていた。


「ミズハ、君は近くの一般人を避難させてくれるかね?」


「……分かった」


 ミズハは長杖を片手に、周辺の人々に今すぐにこの場を離れるように言って回り始めた。それと同時にムラクモも姿を消していた。


「お主らの仲間は一人、逃げたようじゃが」


「いや、それはないかね」


 ギンワンの言葉にイライアスが顔をしかめると、そのタイミングで一本の矢がどこからともなく飛来した。イライアスは迫りくる矢を左手に持つ大剣で切り裂いた。今のに気づかなければ、確実に左目を射抜かれていた。


「なるほどのぅ、逃げたわけではないという事か……!」


 イライアスはフンと勢いよく鼻から息を吐き出し、大斧と大剣とを構えてギンワンたちと対峙したのであった。


 ◇


「ディーン、このレストランの料理、おいしかったね!」


「そうッスね!今まで行ったことのあるレストランで一番おいしかったッス」


「フフッ、二人にも気に入って貰えて良かったわ」


 ここは王都の北西部。ミズハたちが行こうとしていたレストランの前に、エレナとディーン、ミレーヌ、ラウラの4人が居た。


 ミレーヌも前々からおいしいと評判のこの店に来てみたかったのである。それで、ラウラも誘って一緒に向かっている途中でディーンとエレナの二人とばったり会ったことで、4人で一緒に行こうという流れになった。そうして、レストランで食事をして出てきて今に至るというわけである。


「ミレーヌ様、お待ちしておりました」


 そんな4人の前に現れたのは、ミレーヌと同程度の身長の女性。パンジー色の髪を一つ結びにしており、何とも生真面目そうな雰囲気を感じさせる。


「えっと……あなたは誰?」


「ハッ!自分はユメシュ配下の七魔将の一人で、ルイザと申します。この度は、ミレーヌ様を始末するようにという命を受けて参りました」


 突然、自分の名前を呼ばれたミレーヌは戸惑いつつも、問いを投げかけた。女性はその問いかけに対して、明瞭に答えを示した。が、答えの内容は戦慄するモノであった。


 ルイザの答えはミレーヌが4人の内の誰なのかをあぶりだすための手段だった。今の話で、ディーンとエレナが剣と杖を構えてミレーヌの前に立ったことで対象の確認が済んだ。


「それでは、お命頂戴します!」


 ルイザは腰に佩いていた片手剣ブロードソードを引き抜き、ミレーヌへと斬りかかった。だが、ルイザの片手剣ブロードソードがミレーヌに届く前に隣にいたラウラが矢を速射した。


 その矢はルイザが緊急停止したことで、回避されてしまった。ルイザが止まらずに進んでいれば、首を寸分違わずに射抜いていたことは間違いないだろう。


「……まさか、避けられるとは思わなかったわ」


「優れた弓の使い手が居られたのですね。自分、感服しました!」


 ラウラがルイザの判断の速さに感心するような言葉をこぼしていた。そんなルイザはピシッとした態度でラウラに一礼をした。正直、隙だらけなのであるが、全員が罠だと思って攻撃するのを躊躇してしまった。


「ですが、自分の任務はミレーヌ様の殺害なので、あなたの事は後にします!」


 ルイザの行動はミレーヌを始末するという一点に収束されたモノであり、ミレーヌ以外の3人など目もくれなかった。


「“聖刃”!」


「“砂嵐サンドストーム”!」


 ミレーヌの前に立ち塞がるディーンとエレナから魔法が同時に放たれる。


 ――ガキィン!


 ルイザは、ディーンの数多の光の刃やエレナの砂の砲撃を軽快なステップを踏んで回避し、二人を跳躍で飛び越してミレーヌへと斬撃を見舞った。


 だが、ミレーヌもそんな一太刀で斬り伏せられるほど弱くはなかった。ルイザの片手剣ブロードソードを腰に差した二本の短剣をクロスさせて受け止めていた。


 ルイザがミレーヌに斬撃を受け止められて動きが止まった一瞬。そこにラウラが逃がすまいと矢を放った。


 ルイザはハッと我に返るやいなや、ミレーヌとの距離を取り、矢をかわした。


「ハッ!」


「やあっ!」


 ルイザが飛び退いた場所に居たディーンとエレナの剣や杖での物理攻撃はルイザに力づくで弾かれてしまっていた。


 二人の苦戦にミレーヌが出ようとしたが、ラウラにそれを制止された。


「ラウラ、二人が……!」


「ミレーヌ、あのルイザって人の狙いはあなたを殺すこと。だから、迂闊に前に出ないで」


 ラウラはミレーヌに自重を促しながら、ルイザがディーンとエレナの二人から離れるように矢を3連射して、少しづつルイザを遠ざけた。その間にディーンとエレナをミレーヌの近くまで戻らせた。


「ミレーヌは自分に向かってきた攻撃だけを防いで」


「……分かったわ」


 ミレーヌはラウラの言葉に納得はできた。だが、心もとないパーティ編成である。ルイザは前衛タイプであり、ミレーヌたちは前衛がディーン一人だけであり、後衛がエレナとラウラの二人。これでミレーヌが前衛として、バリバリ動ければバランスも辛うじてとれるだろう。だが、ルイザの狙いがミレーヌである以上、率先して前に出ることなどできなかった。


「これじゃあ、満足に戦えない……!」


 ◇


 王都の各地で魔王軍の手の者が暴れ出す中、王都の南東地区でも火の手が上がった。ここにある宿屋に宿泊しているのはジョシュアやマリエルたち運送ギルドのメンバー5名。そこにセーラを加えた6人であった。


 そして、そこを襲撃したのはバートラムやイライアス、ルイザと同様、ユメシュ配下の七魔の一人であるカミラであった。


 カミラはチリアンパープルの色の髪をショートヘアにした女性で、セーラより数センチだけ背が高いモデル体型である。左右の手にそれぞれ槍を一本ずつ提げている。


「アタシはカミラ。あなた達を出来る限り早く始末するように、との命令でここに来たんだけど」


 カミラの目的はウィルフレッドたちの退路を断つことにある。すなわち、彼らをここまで輸送してきたジョシュアたち運送ギルドのメンバーを殺さなくとも動けないようにすることが目的である。


 これにはウィルフレッドたちを逃がすことなく、この場で全員始末するという執念を感じさせるものがあった。


「マリエル、みんなと一緒にこの場を離れるんだ」


「で、でも、マスターは……?」


 ジョシュアの袖を引いて、彼を見上げるマリエルは父親から離れようとしない娘のようであった。


「大丈夫ですよ。ワタクシもここに残りますから」


 セーラはそう言って笑いかけるが、マリエルは戸惑っている様子であった。


 カミラはモタモタしているジョシュアたちを待つほど、気が長いわけでは無かった。むしろ、仕留める好機と捕らえて攻撃を仕掛けてきた。


「ハァッ!」


 カミラがジョシュアの背に向けて突き出した右の槍を蹴りで弾いたのはセーラ。カミラもセーラの身のこなしを警戒してか、バックステップを踏んで後退し、改めて様子を窺っていた。


 セーラはその間に糸魔法でマリエルの体をグルグル巻きにしてしまった。それを見たジョシュアは他の運送ギルドのメンバーにマリエルを抱いて、この場を離れるように指示を迅速に下した。


 ジョシュアも瞬時に指示出しを終えると、槍を片手にセーラの隣に並んだ。


「助かったよ、セーラ」


「フフッ、ワタクシは大したことはしてませんよ。そんなことより今は……」


「そうだね、今は目の前の敵をどうにかする方が先だね」


 セーラはレイピアを、ジョシュアは槍をそれぞれが構えてカミラと対峙した。


「それじゃあ、先にアンタたち二人を始末してから先に進ませてもらうわ!」


 カミラがそう言い終えると同時に槍に黒いオーラが纏わりついていった。一体、どんな魔法なのかとセーラとジョシュアは神経を尖らせたのだった。


 今、この瞬間とき。ユメシュ直属の部隊での王都制圧作戦が本格的に始動した。


 果たして、直哉たちはユメシュの魔の手を潜り抜け、ユメシュの計画をとん挫させることが出来るのか。


 ――ついに、王都での動乱の火蓋が切って落とされたのだった。

第131話「魔王軍の七魔将」はいかがでしたか?

イライアスにルイザ、カミラの3人ともユメシュの配下です。

そんな強敵たち相手にどんな戦いを繰り広げていくのか、楽しみにしていてもらえればと思います。

――次回「総司令の実力」

更新は5/6(木)になりますので、お楽しみに!

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