00A 失われた伝説を追い求めて
宇宙の闇だけがキャノピースクリーンに広がっている。生命維持装置と連動した単調な電子音が、明滅を繰り返すディスプレイの文字と相まって孤独を刻む。
ただ命を繋ぐだけの日々を過ごすうち「私」はこの逃亡生活にすっかり倦んでしまっていたようだ。そんな気がするだけかもしれないが。
惑星シャンバラを遠く離れ、先日の襲撃ではついに母船『ブルフロッグ』を失い今は還る術もない。現在「私」の乗る小型宇宙船『クラポー』は探査採取を目的とした作業用の船外機だ。地球へ向かっているのも燃料を遣り繰りする慣性航行だ。
地球を目指しているのは偉大な錬金術師アレックス=クロウディを救うためだ。
主人であり師でもあるアレックスは、今は国家転覆を謀った犯罪者の汚名を着せられ亜空の牢獄に封じられている。
地球は辺境であるが錬金術師の太祖である『はじまりの5人』の生まれた星だ。そして地球には彼らの弟子がまだ残っているかもしれない。「その力を借りることができるならばもしかしたら」という師の言葉に一縷の望みをかけて、「私」はカミーリャを連れてシャンバラから逃走したのだ。
しかし「私」は母船を失ったとき、カミーリャをも同時に失ってしまった。彼女なしに弟子らの助力を得ることは難しいだろう。言ってみればもうすでに「私」が地球へ向かうことは無駄なのかもしれない。それでも「私」がやれることはもうそれしか無い……。




