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Real~Beginning of the unreal〜  作者: 美味いもん食いてぇ
終章

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55/1049

52話

 §




 ――そして二日後。




「……ん、おはよぅ、桐将。なんか食べる?」


 横で休んでいた紗命が、東条が起きた振動を感じ取る。


 彼女の目の下には、心配と睡眠不足からか、濃いクマが浮かんでいた。


「……おはよう。心配かけたな」


「ちょ、まだ動いたらあかんてっ」


 自力で起き上がる東条を、慌てて制止しようとする。


「なんかもう大丈夫っぽい」


「寝言は寝て言い。ほら、無理しいひんで」


「いやマジで」


 ギプスを振り回す東条に目を見開き、おでこを合わせる。


「熱は……あらへんみたいやね。骨折と、火傷の痛みは?」


「お、おう。ないぞ?」


「……包帯外すな?」


 言うが早いか身体中の包帯を取っていく紗命の顔が、みるみると驚愕に染まる。


「こら、凄いわぁ……」


 見るも無残だった焼け爛れた傷は、凄惨な痕は残したものの完全に治癒していた。


「今回ヤバいの二体殺したからな。それだけ治りも早かったんだろ」


「……とりあえず、良かったわぁ」


 身体を伸ばす東条の前で、張り続けていた緊張から解放された紗命が、ぐで~、と溶ける。

 その姿に微笑み、毛布をそっと掛けた。


「ありがとうな、紗命」


「妻として当然のことやでぇ」


「残念だが人違いだ。夢は眠ってから見てくれ」


「ふふっ、……」


 限界だったのか、彼女はそのまま可愛らしい寝息を立て始めた。




 周りで寝ている怪我人を起こさないように、そっと外へ出る。


 冷えた空気を肺に流し込み、寒空の太陽に目を窄めた。


「む?東条殿?もう動いて大丈夫なのか?」


 通りがかった若葉が驚きに目を丸くする。


「はい。心配かけました」


「いや、無事で何よりじゃが……。そうだ、お主の家、入口前に移動しておるぞ」


「分かりました。ひとっ風呂浴びてきますわ」


 揚々と去って行く彼に、呆気に取られてしまう。


「……会う度に傷が増えていくのぉ」


 その後ろ姿に、戦慄に似た何かを感じた。




 

 ――「お、英雄のご帰還だぞ」


「うぉっ、なんすか」


 シャワールームから出てきた東条は、盛大なお出迎えにビックリする。


 彼の前には、休んでいる者を除いた全員が集結していた。


「起きたなら何か言ってけ」


「まぁまぁ、東条さんの気持ちも分かりますよ」


 先頭の葵獅と佐藤が困った笑みを浮かべる。


「葵さんも佐藤さんも、元気そうで何より」


「「……こっちの台詞だ」です」


 今度こそ呆れ果てる彼等は、シャツから覗く左腕の戦闘痕に目を向けた。


 生々しく、生涯消えないだろうそれ。


「……お前の身体はどうなってるんだ」


「早すぎるとかいう次元じゃないですよね、もう」


「いや、正直俺も今回はヤバいと思ったよ」


 質感の変わってしまった肌を撫でる。

 完治といっても全てが元に戻るわけではなく、感覚もどこか鈍い。


 しかし命があるだけ万々歳。彼は何も気にしていなかった。


「あぁ、そんなお前のおかげで今の俺達がある。ありがとう」


 一斉に頭を下げられ、驚きと羞恥でむず痒い気持ちになるが、


 まぁ、悪い気はしない。


「……くるしゅうない。面を上げい」


 彼等は苦笑しながらも付き合ってくれる。


「皆が動けるようになったら祝勝会だ。今はリハビリでもしとけ」


「……驚いた。てっきりそーゆーのは嫌いなのかと思ってた」


 特に佐藤さんは、と加えると笑って否定される。


「今まではそんな余裕が無かっただけですよ。

 ただ、張り詰めているだけじゃいつか綻びができる。適度なはっちゃけも必要でしょう」


「おぉ、分かってらっしゃる」


 今回の戦いで各々見えた物も多い。


 武力面然り、精神面然り。



 壁を乗り越えるにつれ、彼等はこの死地に適応しているのだ。




俺も看病されたい。


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― 新着の感想 ―
[一言] あの…今まであとがきでカッコいいことばかり言ってたのにいきなり自分の欲望出されて笑っちゃいましたw
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