50話
「――っ無事か‼」
額から血を流す葵獅が階段から顔を出す。
敵がいないのを確認してから、隣合って座る二人に駆け寄った。
「葵獅はん」
「紗命、無事で良かった。……お前は、大丈夫なのか?」
包帯をグルグル巻きにされ、左腕に添木をされた東条に視線を移す。
「だいじょばない」
「だろうな」
全身からだいじょばないオーラを出す彼を、葵獅はひょい、とお姫様抱っこした。
「すまないが急ぐぞ。下もマズいことになってる、紗命は動けるか?」
「えぇ」
「着いたら水でバリアを張ってくれ」
「分かった」
走る二人に後は任せ、東条は上目遣いで懇願する。
「優しくしてね?」
「黙ってろ気色悪い」
葵獅は腕の中の大きな赤子を睨みつけつつも、その運搬には最善の注意と敬意を払う。
彼がいなければ、間違いなく紗命は死んでいたのだから。
「……ありがとうな」
「……自分のためだよ」
きっと本音なのだろう言葉を、正直な奴だと笑って流した。
人の為、己の為。
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