表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Real~Beginning of the unreal〜  作者: 美味いもん食いてぇ
第1巻 第1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/1049

5話

 

 近くまで来ると、途端に爽やかな緑と優しい土の匂いが漂ってくる。


 赤をぶち撒けた心が水に溶けていくように思えるのは、きっと間違いではない。


 木に登ろうとする前に、自分がかなりの返り血を浴びていることに気付いた。


 すぐに服を脱ぎ、包丁とフライパンの血を拭い、武器以外を纏めてリュックに押し込む。


 そこで、


「ゲエェっ、グゲっ」「グアッガ」「ギグッ‼」


 新しいゴブリンが三匹、エスカレータで下の階から上がってきた。


 シュールだ。


 血溜まりを見つけ、バタバタと走っていく。躊躇いもなく死体を漁り、棍棒とナイフを見つけるや否や、ナイフの取り合いが始まった。



 (……何やってんだあいつら)



 彼は木の葉の陰からその様子を見ていた。


 ただ、恰好はパンイチリュックに靴靴下と、ゴブリンをどうこう言えない状態で。



 しかしこの場所、思った以上に快適だ。


 樹冠がデカく枝張りも広い、かつ葉量が多いため隠れるには最適なのだ。当面の住居は手に入れたと、内心でほくそ笑む。



 ゴブリン達は、最後は殴り合いで勝敗を決めていた。


 そしてナイフを手に入れたのは、元からナイフを持っていた奴。欲張りが過ぎる。


 さっきの戦いも含め、彼は奴らを分析する。


 ゴブリンはスリーマンセルが基本で、中でもナイフ持ちが少しだけ他の二匹より強い、と言っても誤差の範囲。


 加え鼻が利くが、新しい三匹はトイレの方に向かわないため、そこまでの嗅覚はないと見た。


 あと顔がキモイ。


 二つのナイフを持って意気揚々と上りエスカレータを逆走するゴブリンに、不貞腐れたようについていく二匹。


 死体はほったらかしのため、大した仲間意識はないのかもしれない。





 辺りが再び静かになると、木の幹に寄りかかり、楽な態勢を作った。


(……疲れたな)


 葉の間からさす人工の光を見ながら、先ほどのことを振り返る。


 ゴブリンを殺した時、確かに来るものはあった。


 しかし吐くほどではなかった。すぐに慣れもした。


 それは普通のことなのか、奴らが人を殺すからか、自分がおかしいのか、考えて、


 どうでもいい事だとすぐにやめた。


 楽に殺せるならそれに越したことはない。それよりも、


 三十㎝ほどの間隔をあけて浮遊している『円』を見る。


 落ち着いて分かったが、これを操っているのは自分だ。


 いや、それは直感で分かったのだが、そういうことではなく、今この状態にしているのも、自分、なのだ。


 手を前に出し、掌の上に『円』を『呼ぶ』。


 すると、移動、ではなく、最初からそこにあったかのように現れている。


 操作の仕方が無意識に分かるのだ。


 試しに形を変えてみるも、限界がない。直径三十㎝ほどの『円』ぶんの質量の中であれば、自在に形を変えるが、自分から一定以上は離れない。


 スマホで情報を漁ってみるが、似たような事例は出てこない。



 ところでこの力、操作方法は分かるのに、能力がまるっきり分からないのだ。


 普通こういった力は、能力も全部分かるものではないのだろうか。


 彼は今まで培ってきた妄想力をフル回転させる。


 ゴブリンを吹っ飛ばしたことからも、有名どころならカウンターか、反射、全身ピアス男みたいな引斥力の線も考えてみる。


 目の前の葉っぱに向かって色々試してみるが、虚しさが後に残るだけ。


 ただでさえ疲れているのに、余計疲れてしまった。


「……寝るか」


 諦めた彼は太い枝に腰掛け、幹に背を預けたまま、深い、されど心地いい、森の中に誘われるように眠りに落ちていった。



彼の前に現れた黒い円、その能力は果たして何なのか。


面白いと感じたら、評価とブックマークをお願いします!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 「円」は平たい円ですか?それとも球ですか? 「円」の操作は飛ばすではなく瞬間移動みたいなものですか?
[気になる点] 球なのか円なのか‥
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ