46話
二度目の加速をし、その勢いのまま水球に飛び込み破裂させながら、貫通して紗命を救助する。
「紗命っ!紗命っ‼」
少女を抱き留め、頻りに腕の中で揺らす、……すると、
「ぇほッげほッっ――」
咽ながらも、その目を覚ました。
「……ふぅ~~~~……」
安心してその場にへたり込む彼を、朧げな目で見つめる紗命。
段々と焦点があってきて……、
「――っ、」
絶句した。
彼の垂れ下がる左腕、右掌、そして首から下の左半身が、赤々と焼け爛れていた。
「桐っ、手当てをっ!」
「ん?……こりゃひでぇ、また男らしくなっちまった」
東条は炎柱に打たれた際、折れた左腕を強引に曲げ頭部を庇い、どうしても空いてしまう手首と力瘤の間を右掌で埋めた。
そしてなけなしの魔力をガードに固め、左半身を犠牲にする代わりに、再度加速したのだ。
ケラケラと笑う彼から視線を外し、急いで自分のリュックを漁る。
(軟膏と、ガーゼと包帯っ、あと添木も、あとは、あとはっ――…………)
そこで、
ふ、と何かが視界に入った。
……だらりと転がる、赤肌の死体。
既にこと切れた、赤肌の死体。
彼女の黒い部分が噴き出した。
水を操り死体を空中につるし上げ、ぎちぎちと首を絞めていく。
「……死ね……死ね、死ね、死ね、死ねっ、死ねッ、死ねッ、死ねッッ――」
繰り返される怨嗟が語るのは、仲間を傷つけた怒り、
……などではない。
自分を危機に晒した、怒り、憎悪、嘲り、殺意、……恐怖。
彼女を彼女たらしめるものが、一気に溢れ出た。
――「……落ち着け。……もう死んでるよ」
彼女の手を掴み、優しく声をかける。
気付けば、首をバキバキにへし折られた赤肌が、力なくぶら下がっていた。
「……ぅ、ぅうっ、ぐすっ、ひぅ――」
自分の胸へ顔を沈め、静かに嗚咽を漏らす少女を、東条は躊躇いながら抱き寄せた。
もし左腕に全ての魔力を集めていなかったら、文字通り黒焦げになっていた事だろう。
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