42話
――「……向こうは終わったみたいやで?」
大穴から中の様子を見ていた紗命は、詳細は分からないが雰囲気が落ち着いたことで、固く握りしめていた手を解いた。
「はやっ、流石あの二人、ねッ」
「あぁッ」
凜と葵獅がゴブリンを蹴り飛ばし、殴り飛ばし、二人の勝利を讃える。
ゴブリンの残数もあと数匹。怪我人は出たが、此方も大事無く片付きそうだ。
「……ごめん、あたし魔力切れ。残り頼んだわ」
「あぁ、休んでろ」
水の天蓋が開き、凜を中に招き入れる。
軽く痛む頭に保冷剤を当て、医療班による手当てが始まった。
「お疲れやす」
「ありがと。紗命は魔力多くて羨ましいよ」
「やけど、うちは凜はんみたいに直接戦えるわけちゃうさかい」
「今度教えたげよっか?」
「……ふふっ、ほな、お願いしよかな」
唐突に訪れた緊急事態も、着々と刈り取られ終わりが見えてくる。
彼等は自分達が成長しているのを実感し、再び欠けることなく生活を迎えられることに安心した。
――そうしてできた空気の弛緩を、奴等は見逃さなかった。
だから言ったろ?
悪意ってのは、やられる側が1番嫌な時に来るものなのさ。
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