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Real~Beginning of the unreal〜  作者: 美味いもん食いてぇ
4章 HERO

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49話

 


 千軸が灼魃殲徠を放つ直前、危険を感じた将軍は、近くにいたゴリラを強引に纏い、全力の身体強化で防御態勢を取っていた。


 命の壁と将軍の執念は、人間の希望の炎さへをも防いで退けたのだ。


「……嘘、だろ」


 誰かが呟く。


 人間の気持ちは、その一言に全て込められていた。


 千軸とて同じ気持ちである。


「カヒュ、……あれ、でも、……届かないのか……」


 彼は残った左目を見開き、乾いた笑いを漏らした。


 そこには、今度こそ避けようの無い諦念が混じっていた。


 猿達は将軍の帰還に雄叫びを上げ、続々と統率を取り戻していく。最早挽回の余地はなく、死んだ目を浮かべる人間達。


 そんな中、渡真利は千軸を地面に寝かせ、一人立ち上がった。


「何、を」


「……大丈夫です。今度は、私が守りますから」


 千軸はぼやけ遠のく背中に声を絞り出す。

 その背中に、覚悟と慈愛が見えて。


「だ、めだ」


「――ブフゥッ」


 将軍が渡真利に向かって地を蹴った。


「……千軸隊長」


「そば、にっ」



「カッコよかったですよ」



 ――振り返った渡真利は、涙を流し満面の笑みを浮かべた。



「ゴルァアッ」

「――ッ」


 涙を飛ばし、地を蹴る彼女と将軍の距離が一気に縮む。


 拳がぶつかれば自分がどうなるか、彼女は理解している。

 それでも、命を懸けて民を守った彼の前で、なん度も立ち上がった彼の前で、諦めるなんて絶対にしちゃいけない。


「アアァァァアアアッッ‼︎」

「ブルォォォオオオッッ‼︎」


 人とモンスター、互いの意地と命を懸けた拳が今、――ぶつかった。


「え?」「ゴ?」



 ……一枚のガラス板に。




「……やぁ、遅くなったね」




 その声に誰もが見上げる、屋根の縁。


 逆光を浴びる赤黒い少年が、十本の光る糸を引き連れ飛び降りた。


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