表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Real~Beginning of the unreal〜  作者: 美味いもん食いてぇ
3章 おはよう絶望。さよなら人間。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

255/1049

31話

 


「……」


「……」


 ノエルとベヒモスは互いに見つめ合いながら、相手の出方を窺っていた。


 辺りを打つ雨音が、やけに大きくノエルの耳に響く。


「……こ、こんにち」


 しかしそこで、彼女の後方から、待ち伏せていた大量のゴリラが一斉に飛び出した。


「ゴアァアッ‼」「ゴルアア‼」「ゴンルアァッ‼」――


 ベヒモスの綺麗な白い睫毛が、ピクリ、と動く。


 ノエルは動かなかった。


 勿論ゴリラには気付いていた。その気になれば殲滅も容易い。


 しかしノエルは動かなかった。


 一切の攻撃態勢を取らず、その場から一歩も動かなかった。



 ……そしてその判断は、間違っていなかったのかもしれない。





「ファォォ――ォン」





 どこか幻想的で、雄大さを感じさせる弦楽器の様な声。


 彼の声が辺りに伝播し、空を、大地を、自然を、包み込んだ。


 刹那、


 周囲に降り注いでいた雨の全てが縦に引き延ばされ、数万の極細の雨糸が天と地を繋いだ。


「――っ……」


 ノエルは自身の周りに広がる不思議な光景に目を奪われる。


 まるで天から垂れる、幾千、幾万もの蜘蛛の糸の中に、一人ぽつんと立っている様な感覚。


 しかしそれが与えるのは慈悲や救いなどではなく、怖気すら感じる程の、粛然たる死である。


「(そ~)イっ」


 興味本位で触ってみると、皮膚が千切れ血が飛んだ。原理は超高圧の水流と同じだろうか。


 ノエルは指を銜えながら、後ろを向く。


 身体中を串刺しにされ、空中に縫われたまま絶命するゴリラ。

 こうして見ると一種の芸術の様にも見える。


 そんな芸術達は、ベヒモスの瞬きと共に地べたの泥に落ちる。


 再び何事もなかったかのように降り出した雨に、ノエルは只々戦慄した。



 彼は自分には興味が無いようだし、早くこの場を去ろうと考える。


 しかし、


「…………あ、」


 ベヒモスがデパートの上に聳える巨大なトレントに鼻を巻き付けたのを見て、思わず声を上げてしまう。


 あれは、まさが大事そうにしていたトレントだ。根元には、確か仲間達の墓標がある。


 ベヒモスの動きが止まり、ゆっくりとノエルに顔を向ける。


 彼女は意を決して口を開いた。


「あ、あのっ、その樹は、食べちゃダメ!」


「…………ファォォ」


 三本の鼻の内の一つが、ノエルの方へ寄ってくる。


「――っ」


 ノエルは恐れを振り払い、身体強化を纏って戦闘態勢に入る。たとえ勝ち目が無かろうと、こんな所で死んでたまるか。


 そんな彼女の覚悟はしかし、



「……へ?」



 ポンポン、と優しく頭を叩く鼻によって霧散してしまった。


「な、なに?」


「ファルルルル」


 樹から鼻を離したベヒモスは、ノエルを優しくこねくり回す。


 まるで幼子の成長を喜び、慈しむ父母の様に。


「わ、わぷっ、ノエル、今急いでる、からっ、わぷ」




 ――「ファォン」


 ノエルを一通り撫で尽くした後、満足したのか、ベヒモスは鼻を引き去って行く。


「はぁ、はぁ、……なんだったの?」


 ノエルは湧き上がる疑問に目を白黒させながら、音を立てず霧の中に消えて行く巨獣を見送った。





 §




カクヨムコン中間選考通過、協力してくれた皆有難うな!!

あと当初からの目標であった30000ポイントも達成してた!!

これからもよろしく!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] まさ様がお世話になった(してた)トレント様、 無事で良かった (^o^; ベヒモス様本当に静かに不思議… (ありがとうございます!) ノエル様(๑•̀ㅂ•́)و✧♡
[良い点] ベヒモスの圧倒的力!それを見てもまさの大事にしてた物を守ろうとするノエル、可愛い! [気になる点] まさの纏ってる闇も簡単に貫けるのか?少しは耐えれるのか。 [一言] 意味深なベヒモスさん…
[良い点] 伏線となるのか、もしれないと思いますた。ベヒモス死にそうね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ