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Real~Beginning of the unreal〜  作者: 美味いもん食いてぇ
3章 おはよう絶望。さよなら人間。

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252/1049

28話

親と高級寿司。

うめぇ〜(* ´ω `*)

 

「……チク……ショウ。……立て、ねぇ」


 赤く染まる視界には、近づいてくる二匹のゴリラとワーウルフ。


「アォォォォォン」「ホッホッホッ」「ゴルアァアッ」


 三匹は勝利の雄叫びを上げ、強敵の打倒を祝福した。


 この場所を占拠しろというのが王の命令だ。

 どれだけ殺されようと、任務を達成してしまえばそれは勝利を意味する。


 ワーウルフがとどめを刺そうと紅を見下ろし、腕を振り上げる。


 紅がワーウルフを睨みつける。


 互いの瞳が交差した時、ワーウルフは血に濡れた爪を振り下ろした。




 ダァァンッ‼




「「「「⁉」」」」


 一発の弾丸によって、ワーウルフの手が弾かれる。


 紅を含め、その場にいた誰もが予期せぬ銃声に首を向ける。


 未だ聳える雷壁の外側。

 そこには、ガクガクと震えながらもライフルを構える康と、彼女を救うため集結した部下が立っていた。


「姉御っ、これ解いてください‼助けに行きます‼」


「そうだ姉御!早くしねぇと死んじまう‼」


「姉御‼」


 紅は健気な部下達の声に、乾いた笑いを浮かべる。


「……バカどもが」


 三匹は瀕死の紅を捨て置き、迷うことなく一斉に雷壁に飛び掛かった。


「ヒっ」

「ゴルォアッ‼」「ガルルルルッ」


 三匹はバヂヂヂヂヂヂ、と激しい音を立てながら無理矢理壁を突っ切ろうとする。


 肌が焦げようとお構いなしのその狂気に、彼等も、ヤクザと言えど流石に恐怖を感じてしまった。




「ゲホっ、……」


 紅は鉄塔に手をつき、ゆっくりと立ち上がる。


「……そんなへっぴり腰で、……どうやって私を助けるんだい(ボソ)」


 ポケットから煙草を取り出し、バチっ、と火をつけた。




「すぅ……ふぅぅぅ」




 立ち昇る煙の行く先には、憎たらしい程青い蒼天が自分を見降ろしている。



 お前はちっぽけな存在だと言わんばかりに、傲慢に自分を見降ろしている。



 この世はクソだ。クソの掃溜めだ。


 悪い奴が得をして、良い奴が損をする。


 なんてしょうもなくて、救えない世界だろうか。




 ……だが、私はそんな世界が堪らなく好きだ。


 そんな世界に生きる仲間が堪らなく好きだ。




 そんな世界に存在するちっぽけな私自身が、……堪らなく好きだ。




「……死ぬ気なんざ、毛頭ねぇよ!」


 絞り出せ。

 掬い上げろ。

 足りないのなら奪い取れ。


 己から、空気から、自然から、

 奴等を殺すだけの魔力を、奪い取れ!


 極限まで高められた集中力が、体内と体外の魔力の循環を成功させる。


 限界を超えた肉体に無理矢理魔力が供給され、頭はガンガンと割れる様に痛み、身体の至る所から血を吹き出す紅はしかし、


 爆発的な魔力の膨張と溢れ出る電撃を全身に纏い、その万能感と快楽に恋する乙女の如く頬を歪める。


「アハハハハッ、これがまさの言っていた極地か!成程!とてもいいな‼こんなに気分が高揚するのはいつ以来だ‼……それにしても暑いっ」


 羽織っていたコートの留め具を外し、放り投げる。


 幹部の証であるポケットチーフだけ取り出し、ジャケットも脱ぎ捨てた。


 どくどくと溢れる血で真っ赤に染まるワイシャツの背中部分、大きく裂かれたその下には、大翼を広げ羽ばたく、巍然たる朱雀の和彫りが刻まれていた。


「あ、姉御?」


「ゴルォ」「ゴアッ」「ガフゥゥウ」


 自身の血で更に赤く染まった髪の毛をかきあげ、笑う彼女を、部下でさえ訝しみ、そして三匹は警戒する。


 彼女の全身から漏れ出るのは、純粋な狂気、純粋な悪だ。


 紅は煙草を銜え挑発的な笑みを浮かべたまま、三匹を睨みつけた。



「おら来いよ」



「――ッガロァアアアッ」


「ハハぁッ‼」


「ガア⁉」


 大地を踏み抜き急接近するワーウルフの爪撃を、手刀で腕ごと切り落とす。


 驚愕する顔面を掴み、


「オラァッ」

「ギャば――」


 渾身の力で鉄塔に叩きつけた。


 轟音が鳴り、ぶっとい支柱がひん曲がりボルトが吹き飛ぶ。


「オルァッ、オルァッ、オルァッ、オルァッ‼」

「――」


 一撃ごとに地響きが鳴り、耐えられなくなった鉄柱がぶっ倒れた。


「アっはっはっ、悪いなボス!壊しちまったわァ‼」


 頭部が無くなったワーウルフをゴミの様に放り投げる。


 血溜まりの中で大笑いする女に、二匹は目配せし同時に魔法を放った。


 しかし電撃は彼女の纏う力場によって消滅し、土棘は腕の一振りで粉々に消し飛ぶ。


 圧倒的な状況だがしかし、紅に向かって康が悲痛な叫びを上げた。


「姉御ォ‼それ以上の流血はほんとにっ、ほんとにヤバいです‼」


 紅は自身の足元に広がる血の池に目を向ける。


 この全てが自身から漏れ出たものだとは、なんとまぁ驚きだ。


 それなのに全身は熱くなるばかり。

 頭痛など最早感じない。本格的に身体がヤバい証拠だろう。


 紅は煙草を血溜まりに吐き捨てた。



「……そうだな。終わりにしよう」


 そう呟いた彼女を中心に途轍もない電磁力場が発生し、あまりの高圧電流に血が蒸発して大地が融解を始める。


升天(シュンティェン)(天高く昇れ)――」


 鉄が溶け、電線が弾け飛び、近くの建物から火災が発生する。


 蒸発した血液を纏った雷光は紅い輝きを帯び、赤雷となって彼女を照らした。


 紅は獰猛に笑う。



 ――この狂った世界に。



 ――死にゆく畜生共に。



 ――そして、自分の強さに。




「――『赤龍(チー・ロン)』」




 赤色の轟雷が大地を走り、二匹に襲い掛かる。


 土ゴリラは壁で、雷ゴリラは電磁バリアで迎え撃つが、拮抗などしない。


 一瞬で呑み込まれ、雷音を轟かせる赤き龍と共に蒼穹へと消し飛んだ。


「……」


 訪れる静寂。


 二匹の立っていた場所には、ガラス状に溶けた地面以外何も残っていなかった。






「――っ姉御!」


 紅がぶっ倒れると同時に雷霆監獄が解ける。


 部下達はボロボロと涙を零しながら、急いで彼女の応急処置を始めた。


「ったく、泣いてんじゃないよ」


「だっでぇ」


「私はもう動けん。運べ」


「勿論っすよぉ」


「あとお前等はここの消火と復旧作業に当たれ。技師は生きてる配線繋げとけ」


「「「うっす」」」


 女性組員に処置をされながら、紅は空を眺める。


「……煙草」


「どうぞ」


「…………すぅぅ……ふぅぅぅ……(だいぶぶっ壊しちまったなぁ……。あぁボスに何て言われるか。考えただけでもウゼェ)」


 あんなカッコつけてたのに~。とバカにしてくるボスの顔が浮かぶ。


 この時の紅はまだ知らないが、この戦いで特区の三分の二の電力供給がストップした。


 今現在大規模な停電が発生しているわけだが、あれだけの戦いを繰り広げておき、それだけの損害に止めたのは、偏に彼女の魔法操作技術がずば抜けているからである。




「……はぁ……疲れた」


 相変わらずムカつく青空だが、今だけはこの気持ち良さも悪くはないと思えた。





 §




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― 新着の感想 ―
[一言] 紅良いなぁ。言動的にまさと気が合いそうでもありますし。
[良い点] シンプルな技名 [一言] いーねえ彫物俺は天女と昇り鯉が好きやけど同士は入れるとしたらどんなんがいい!?
[一言] 技名、バカセンス感じるね。 次も楽しみに待ってます。
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