21話
ドゴォォォオオンッ‼‼
「「「「⁉」」」」
突如鳴り響く爆音に、大学内にいた全員の身体が跳ねた。
濛々と立ち昇る砂埃は大学をぐるりと囲み、天高く打ち上げられた水飛沫が彼等に降り注ぐ。
「何が起きた‼」
彦根が見張りの隊員に無線で呼びかける。
『壁が破壊されましたッ‼土煙を見るにっ、橋までの道も爆破された模様です‼』
「なっ、」
彦根は驚愕する。
壁の周囲は常に誰かが見張っていた。何者かが近づけばすぐに気づくはずだ。
壁に描かれていた不可思議な画も消した。
一体何が。
パニックになる避難民。
彼等の近くに、とさ、と何かが落ちてきた。
「ひっ」
それは腕だった。自分達を守ってくれるはずだった、自衛官の腕。
場は一気に混乱に呑まれる。
我先にと逃げ出す人間達。
しかしその恐怖に、出口など無い。
――白猿はドームの屋根に座り、遠く見える爆煙に笑う。
白猿は、大学を囲む壁とレインボーブリッジまでの道を守る壁に沿って、地中一mに大量の拳大の石を設置させていた。
勿論只の石ではなく、自らが『炎』の呪いを描いた爆弾である。
壁面に描かれた謎の文字や画には何の意味もなく、地下の爆弾を悟らせないためのブラフ。
【ruler 呪言戯画久遠図】
白猿の魔力で刻まれた画や文字は、その意味と同じ力を持つ。
相手の命に直接干渉する呪いは、使用する魔力が膨大過ぎて自身の命に関わるため刻めないが、それ以外はわりと何でもありの危険すぎる能力。
――人間から壁を奪った白猿は、次いで楽しそうに指を振った。
大学の周りに群生するトレント達。少ないとは言え、その数は優に百を超える。
ざわざわと風に揺れる、トレントの葉。
一枚が風に吹かれ、ひらひらと空を舞った。
……よく見ると分かる。白猿の血で刻まれた、『出口』の呪詛。
果たしてトレントに茂る葉、全てにこの文字が刻まれているとしたら、……次に起こる惨事など、誰だろうと予測は付く。
「「「「――ッ⁉」」」」
大学内にいた実力者は、見えずともその異変に気付いた。
自分達を一瞬で取り囲んだ、夥しい程の数の魔力反応に。




