表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Real~Beginning of the unreal〜  作者: 美味いもん食いてぇ
2章 合流

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

237/1049

13話

 


 ――「てかさ、ここら辺まで来たら、わざわざ大学へ避難させる必要ってなくない?外側に向かってけば、よっぽど早く特区出れるっしょ」


「……君のような勘のいいガキは嫌いだよ」


「タッカー?」


 千軸はキョロキョロと辺りを見回し、東条に耳打ちする。


「ここら辺の人達、下手したら俺達自衛隊より強いじゃん?さっきの四人とか、普通にうちの隊員越えてるし。

 そんな人達には、あのコロニーの脱出を手伝ってもらおうって「千軸隊長」……ごめんなさい」


 東条は汚いお国の事情を知ってしまい、何とも言えない表情をする。


「……大人って汚ねぇな」


「大人は汚いんだよ」


「千軸隊長?」


「……ごめんなさい」


 平然と機密漏洩をする隊長に、女性隊員が溜息を吐く。そんな時、辺りの湿度が変わったのを隊の全員が感じ取った。


「……雨、か?」


 張り付く様な湿った空気に空を仰げば、ポツリ、と水滴が肌を湿らせる。


「……まさ」


「……ああ。ベヒモスだ」


 池袋に近づくにつれ、雨脚は強くなり、霧が濃くなっていく。いつ会うのかと思っていたが、今は池袋で食事中の様だ。


 あの時と同じだ。畏怖に近い安心感に身体を包まれている様な、妙な気分になる。


 千軸が身震いしながら口を開く。


「……何か、変な感じだ。警戒心が削がれる」


「日頃からモンスターと戦ってる奴ほど、気付かない内に安心しちまうんだよ」


 一行は細心の注意を払いながら、デパートへの中へと入って行った。




 ――「……」

「……」


 到着した水族館は、以前の面影がない程に荒れ果てていた。


 綺麗にライトアップされていた水槽は砕け散り、魚一匹泳いでいない。

 トレントがそこら中に生い茂り、その様相は最早植物園だ。


「……四、四に分かれて加藤さんを捜索しろ」


「「了解」」


「お前は俺と来い。まさも」


「了解」


「……あいよ」


 東条は半ば諦めつつも、千軸と女性隊員と共に二階へと進んで行った。



「……やはりいませんね」


「やはりとか言わない」


「あ、すみません」


 女性隊員が慌てて東条に謝る。


「ん?いえいえ、構いませんよ。トレントの数はここで死んだ生物の数ですからね。この現状を見れば想像は付きますよ」


 あっけらかんと言ってのける東条に、二人も目を合わせる。


「……あぁ、最後に館長室見てもいいですか?」


 加藤さんはそこに隠れて命を拾ったのだ。

 一度お邪魔させてもらったが、なかなか快適な場所だった。今も生きているとすれば、そこだろう。


「勿論。場所は?」


「確か、ここら辺に……あった。あれだ」


 トレントを毟り倒し、ノックする。


 返事はなし。


 やむを得まい、と鍵のかかっているドアを引き千切った。


「……、いや、待てよ」


 空の室内を見て落胆しかけた千軸だが、不可解な点をいくつか発見する。

 足を踏み入れようとして、東条を見た。


「これ、土足で良いのかな?」


「いんじゃね?どうせ移動してもらうんだし、私物だけ気をつければ」


「んだな。おじゃまします」


「おじゃまします」


「ます」


 そして三人は室内を物色しだす。


「やっぱり、この缶詰最近開けられたもんだな。キッチンのタワシも皿も濡れてる」


「こたつの電源も付いてます。あとは……、……」


 女性隊員はこたつの下から一冊の本を取り出し、過激な水着美女の表紙を見た後、そっと元の場所に戻した。


「どうした?」


「いえ、何でもありません」


「そうか」


 千軸は希望半分、疑念半分といった顔で考えこむ。


「……でも表はトレントで塞がれてたし、どこ行ったんだ?隠し通路とかあんのかね」


「……いや」


 その言葉に、東条は確信をもって答える。


「多分ここからだわ」


 人一人通れるくらいの窓を指さして。



 東条はトレントを千切っては投げ、屋上を目指す。


「まさ、ここデパートの七階だよ?あんなとっから出たら一直線で地面だ」


「加藤さんは水魔法の使い手だった。動画見たろ?」


「ああ。……てことは、大量の水に乗ってか入ってか、グネグネ屋上まで行ったってこと?」


「そんなとこじゃね?」


「度胸ヤバすぎるでしょ」


 東条は最後のトレントを蹴り飛ばし、曇天の下に顔をだした。


 するとそこには、



「おや、……まささんでしたか」



「加藤さん、お久しぶりです。……とりあえずそれ、下ろしてもらっていいですか?」


 大量のドデカい水槍を此方に向け、嬉しそうに微笑む加藤が立っていた。


友達と熱海までドライブ温泉。楽しかた。渋滞now。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] ノエルって当然戸籍もってないんだろうけど、ここまで目立ってるんだから公安とかに身元調べられてるだろうし、戸籍がないことバレてるよね?どうすんの?
[良い点] 滲み出る強キャラ感 [気になる点] もしや加藤さんって朧とか千軸より強いのかな?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ