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Real~Beginning of the unreal〜  作者: 美味いもん食いてぇ
終章 大切なトラウマ

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222/1049

89

 

 続々と集まって来た人間達に囲まれるのを嫌い、東条とノエルは大学に背を向ける。


「まさ、もういいの?」


「ああ。悪いな、心配かけた」


「全然」


 歩き出そうとして、そうだ、と振り返る。


「朧、こいつの怪我だけど」


「モンスター倒させれば勝手に治るでしょ。まぁ、あんたのせいで動くかどうかも怪しいですけど」


 既に気絶しており、胡桃に抱かれている新を、朧は半目で見る。


「分かってんならいいや。じゃな」


「じゃな」


「はいはい」


 そこで背中に衝撃が走る。


「まささん!カッコよかったっす!」


「お前、あれ見てその感想出てくるって、ヤバいぞ?」


「何でっすか?」


 本気で首を傾げる殴打娘に、東条も頬を掻く。そこにリーダー女性とジャンパー女学生も寄ってきた。


「私達はまささんに救われたんですよ?拗らせド陰キャたらしのまささんの優しさは、肌身で感じています。あれ程怒ってたんです、きっと何か理由があったんでしょう?」


「やっぱり大人の女性はいいですね。包容力が違う。……あと自分で言っといて何ですけど、そのあだ名やめません?」


「ふふっ、嫌です」


(美人だぁ)


 東条がポヤポヤしていると、


「あ、あの、まささんっ」


 今度はジャンパー女学生に呼ばれる。


「どこか行ってしまうんですか?」


「おう。俺の本職は冒険だからな」


「そ、そうですか……」


 露骨に悲しむ彼女に笑みが漏れてしまう。


「またいつか会えるかもしれないし、そん時はよろしく頼むよ」


「は、はいっ。必ず!……あとあの、これ、良かったら受け取って下さい!」


 一通の手紙を渡される。


「これは……。こんな公共の場で、勇気が凄いな」


「後で読んでください!」


 顔を真っ赤にしながらも、真っすぐに見つめてくる彼女に、東条の心が痛む。

 彼女の好意には既に気付いている。自分としても、その気がないのに思わせぶりな態度をとるのは嫌だ。


「悪いけど、これは受け取れないよ。俺の心は今、他の女性の場所にあるんだ。嬉しいけど、ごめんね」


 心を鬼にして、断ろう。


「それはノエルさんの事ですか?」


「え?い、いや。違うけど」


「遠距離恋愛ですか」


「まぁ、そんなとこかな」


「じゃあ条件は一緒です。後で読んでください!」


 周りの女子達からも黄色い声援が飛ぶ。

 彼女の覚悟を前にして、東条は放心した。


 清楚な顔して、とんだ猛獣を内に飼っていたらしい。いや、女は皆猛獣か。


「ふぅ……、強かな人だな」




「私、まささんのこと、好きですから」




「――っ」


 またも黄色い、最早金色の声援が飛び交う。


 これ程の誠実さと度胸を見せられて、はいそうですかで終わるなど、男の名折れだ。思わせぶりにならず、此方の誠実さを見せる方法は……。


(……カメラは、ないな)


 東条は周りに携帯を構えている人間がいないのを確認し、


 一思いに鼻から下を露わにした。


 半分とは言え、彼の素顔を見た誰もが驚愕に目を見開く。ノエルでさえも。


「名前は?」


「あ、あ、風代(かざしろ) 涼音(すずね)です!」


「そうか、風代、俺は一途なんだ。他の女に振り向くことはないと思った方が良い。それでも良いのか?」


「はい」


「そうか、せいぜいがんばれよ」


「はいっ、ぁ」


 微笑みを最後に隠れてしまった口に、風代は露骨に残念がる。彼女は少しポーカーフェイスを覚えた方が良いかもしれない。


「それじゃあ皆さん、またいつか、何処かで」


 去って行く彼等に、やれやれと手を振る馬場。

 ぶんぶんと手を振る殴打娘。

 微笑むリーダー女性。

 そっぽを向く朧。

 気絶する新に、歯を食いしばる胡桃と、二人に寄り添う嶺二。

 陰からこっそり手を振るすらいむ。


 新をボコボコにしたせいで、自分達に敵対的な視線を向ける者も少なくない。

 しかしそれがどうした。他人の目を気にするほど、自分達は暇じゃない。


 最後に、手を振るJKの横で、ニヒルな笑みを浮かべサムズアップする毒島に苦笑し、二人は大学を後にした。





 §





 風代は東条が去って行った方角を、ほけー、と見ながら、彼の口元を思い出す。



(…………包容力、鍛えよ)



 季節は晩冬。彼女の元には、一足早い青い春がやってきた。





 §




最後は爽やかに終わろうぜ!w次で3巻ラスト。19時ら辺に投稿するぜ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 毎日の楽しみになるくらい面白く読ませて貰ってます! ( ´△`)アァ-また1ヶ月耐えねばならんのかぁ…(´・ω・`) 何時までも待ちます!めちゃくちゃ推し作品です!頑張って下さい!!!!…
[一言] 感想が書けなくて絶望してたぜ同士! 書けるようになってて歓喜したぜ同士! 応援してるぜ!
[一言] こんなにしんようできないあとがきをはじめてみた
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