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Real~Beginning of the unreal〜  作者: 美味いもん食いてぇ
4章

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79

 

 ――夕食を貰いに、体育館へ向かう三人。


「だいぶ遅くなっちまったな。出発は明日にするか」


「ん。眠い」


「さっき寝てたろ」


 東条とノエルにとって、予定などその日の気分でしかないのだ。


 有栖は、国相手に終始堂々としていた二人を、半ば呆れながらも尊敬していた。


「私の人生これからです。二人についていけば将来安泰です。うぇへへへへ(ボソッ)」


「使えなかったらすぐ切り捨てる」


「うぇへ、私能力だけはありますからね。二人共、私無しじゃ生きていけない体にしてやりますよぉ(ボソッ)」


「……やっぱり契約保留にしね?」


「ノエルも不安になってきた」


「そ、そんなこと言わないで下さいよ(ボソッ)」


 体育館前に着くと、東条を見つけたジャンパー女学生と殴打娘が駆け寄ってくる。後ろにはリーダー女性と胡桃もいる。


 その光景を目にした有栖は、そそくさと二人に背を向けた。


「なんだ、一緒に食わないのか?」


「知らない人がいる食事の場って、苦手なんです(ボソ)」


「すらいむの濃い性格ならすぐ馴染めると思うけど」


「へへっ、馴染めなかったからこんな人間になってんですよ。一人で静かに食べるのが好きなんですよ。その点トイレはいいですよ?とても静かですし、鍵もあるからプライベートも確保できます。食事中にお腹が痛くなってもトイレに行く必要がありません。だってトイレなんですから。へへへっ(ボソ)」


「そ、そうか」


「それじゃあ、また後日」


「おう。強く生きろよ」


「ん。強く生きて」


 陰鬱と歩いていく彼女を見送り数秒後、殴打娘のダイビング頭突きが鳩尾に刺さった。


「いった~、腹筋バキバキっす!」


「鍛えてるからな」


 東条の腰に抱き着く殴打娘に、口を尖らせるジャンパー女学生。

 彼女はもじもじしながらも、意を決して口を開いた。


「あ、あの、まささん、一緒に食事「見せて下さいっす!」――っ⁉」


「ぅおっ」


 強引にたくし上げられ露わになる、引き締まった肉体装甲。そんな男の美は、初心なJKには少々刺激が強かった。


「見るっす!カッコいいっす!カッタ!」


「は、はははしたないですよ!(固いの⁉どれくらい固いんですか⁉それに傷だらけで、男らしい……、私もちょっとだけ、)」


「こらこら、まささん困ってるでしょ」


 ジャンパー女学生は伸びかけた手を高速で引き戻した。


「……まさ、鼻の下伸びてる」


「伸びてねぇよ。てか何で分かるんだよ」


 殴打娘がリーダー女性に引き剥がされる光景に、胡桃もクスクスと笑う。


「ふふっ、人気者ですねまささん」


「ええ。今世紀最大のモテキが到来中です」


 服を直す東条は辺りを見回し、いつも胡桃と一緒にいるあの男がいないのを不思議に思う。


「今日は新と一緒じゃないんですね」


「え?ええ。なんかまささんに会いに行った後、すぐにご飯食べて自室に行ってしまって。Xtube?ていうのを見てました」


「俺に会いに?今日は会ってないけど」


「え?そうなんですか?……様子もおかしかったし、また後で聞いてみます」


「うぃ」


 別に自分が気にすることでもない。

 そんなことよりも。


「食事だったか?いいぜ」


 そう言って女学生を見ると、彼女の悲しげだった表情に一瞬で花が舞った。


「は、はい!……やった~っ(ボソ)」


(聞こえてるぞ~)


 食事の列に並ぶため、五人で入口へ歩いていく。


「そいや汗の臭い嗅いでごめんね」


「っそ、その話はもういいです!」


「あははっ、いい匂いっす!」


「やめて下さい!」――


 濃密な一日の終わりに、女性達に囲まれ夕食を摂る。何と充実した過ごし方だろうか。


 自らの性欲に忠実に色ボケる彼を、暗雲から覗く月が静かに見下ろしていた。




 ……そして翌朝、東条は知ることになる。





 親切と怨恨は、表裏一体だということを。







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― 新着の感想 ―
[一言] これは新が二人が善人だと勝手に勘違いして自分の思ってた人間ではなかったからって逆恨みしちゃう? ノエルは自分達に害を及ぼす者や敵対した者には容赦ない感じだからまずそう
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