61話
翌日昼頃に目を覚ました東条とノエルは、現在、目についた食品売り場を片っ端から漁りながら大学への道を戻っていた。
「ほい、ほい、ほい」
「詰めろ詰めろ」
手に取った物を殆ど確認せず、後ろに放り投げる。
そんな彼等の背後には、半径二m程に膨らんだ漆黒の球体が浮かんでいた。
中を見れば、食料から日用品まで、使えそうな物が種類問わず詰め込まれている。
頭部以外の武装を捨て、残った漆黒を全て運搬用に回す本気ぶり。
彼等、主に東条は、今回の報酬に過去一番のやる気を見せていた。
――最終的に半径七m程のデカさになった球体を頭部に繋げ、見えてきた大学にニヤニヤと笑みを漏らす。
そんな汚い顔を晒す東条に、ノエルが一つ提案をした。
「西側、ヤンチャしてる人いっぱいいるっぽいよ」
「……手が疼いてしゃあないんだが」
ワキワキと卑猥な動きをする右手を必死に沈める。
「メインはいつ食べる派?」
「……最後に食べる派」
「行こ。汚い人間見たい。紅達は撮れなかったし」
藜組の彼等は、汚いというよりかは最早洗練された闇であった。
下っ端すらも末端まで統率されており、隙が無い。
会った人間にしか分からない、動画映えしない悪意。
ノエルとしては、そんな物見ても面白くないのだ。
「臭い物ほど嗅ぎたくなるってやつ?」
「ちょっと違う」
背中の上で行く気満々のノエルに溜息を吐く。
「……はぁ、いくか」
「いえーい」
(……ちょっと寄り道します。もう少し待ってて下さい、馬場さん)
東条は胸に手を当て、自分を待っているだろう彼女に謝罪した。




