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Real~Beginning of the unreal〜  作者: 美味いもん食いてぇ
3章

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54話

 

「友達、ですか?」


 東条の提案に朧は首を捻る。


「そうそう。お友達になったら、お互い何処にいるか分かっても不思議じゃないだろ?」


「え?」


「最近じゃアプリで人の位置が分かるんだ。便利なもんだよ」


「いや、え?」


「ノエル、蔦解いてくれ」


 淡々と進んで行くお友達契約に、朧は既についていけていない。


 拘束が解かれた彼は、言われるがままスマホを取り出し、言われるがままGPSアプリを入れさせられてしまった。


「よし、これで俺達も友達だ」


「え、あ、はい。……え?」


 朧は差し出された握手に応じてようやく、自身に起きている事態を呑み込む。


 目の前の男は、カオナシと呼ばれるこの男は、はなから自分を助ける気などなかったのだ。


 危険と判断した存在を排除するのではなく、監視する為、勢いと諭した口調で焦る自分を誘導したのだ!

 その所業、正に


「策士!策士だ!」


「何の事やら」


 東条は、納得いかないとむくれるノエルをわしゃわしゃする。


「これじゃあノエル達の場所も分かっちゃう。プライベートもクソもない」


 プライベートだなんだと言っていたのは誰だったか。ノエルは東条を睨む。


「大学内は別として、

 無断で一㎞圏内に入らないこと。

 俺達に近づく時は必ず連絡すること。

 俺達の場所を他者に漏らさないこと。

 これ守らせればいいだろ」


「そんなのこいつの匙加減。抜け道いくらでもある。携帯置いて自分だけ来ればバレないし」


「そこまでするか?なぁ」


「あ、ああ」


 二人の会話に入れないでいた朧が頷く。


 正直そこまでしてついていこうとは思わない。というかそんなことしないからこの制約を解いてほしい。彼の切実な思いだ。


「それに俺らを見てたってことは、ノエルのシャワーシーンも見てるってことだよな?」


「――っ」


 朧は突然の追及にぶんぶんと首を振る。


「見てない!ちゃんと目を逸らした!」


「目を逸らすって行為はよぉ、見ちゃいけない物を見た時にするんだよ。

 お前は見てんだよ、こいつの裸体をよぉお」


「み、見てない!」


「……ノエル、今のチャンネル登録者数何人だっけ?」


「五千万」


「とまぁ、俺達は日本人口の半分くらいに映像を拡散できるんだわ。勿論中には海外の人間もいるし、ぶっちゃけ殆どこいつのファンだ。

 悲しいことにな」


「……(ごくっ)」


 東条は朧に肩を組み、耳元で囁いた。


「ノエルが裸見られたって泣く動画を、お前の顏付きで流したら……どうなっちまうのかな?」


 朧の脳内に、最悪のイメージが走馬灯の様に流れる。


 新聞に載り、

 ニュースで取り上げられ、

 住所は特定され、

 家では毎日悪戯電話が鳴り響き、

 大量のピザが届く。


 そしてつけられる、変態ロリコン野郎の二つ名。


 彼は悟った。

 二人を追ったその瞬間から既に、自分の命はこの悪魔共に握られていたのだということを。


「くぅッ、……好きにしてくれ」


「よろしい。これでいいだろ?」


 崩れ落ちる朧の肩ををポンポンと叩き、ノエルに向き直った。


 しかし未だ不満なのか、彼女は口を尖らせている。


「……何でそんなにこいつの肩持つ?」


「んー、そーだな。

 確かにこいつの能力、危険度だけでいったら群を抜いてると思うぜ。俺達の首に届き得る数少ない生物だな」


 犯罪、強盗、何でもござれ。姿が見えないというのはそれほどに恐ろしい。


「だったら」

「だからこそ、だ」


「……」


「組長の時と一緒。ヤバい奴なら仲間にしちまえばいい。

 契約でも、脅しでも、相互利益の関係を築いて和平を結べばいいんだよ」


 そこで、朧がおずおずと手を上げる。


「俺の利益って何ですか?」


「バラさないでやること」


「とても利益でした」


 とても利益だった。


「それにこいつ、絶対大物になるぜ?

 今後、必ずモンスター関連の仕事が台頭してくる。狩でも調査でも、こいつの能力ならトップクラスに有用だろ。

 ここまで生き残って、そこまで強くなってんだから、モンスター殺すのに躊躇いないだろうし。

 どうよ?」


「確かに、そんな仕事が出来たらぜひやりたいですね」


「いいね。思ってたのと違って結構話せるし、人間的に面倒臭そうな部類でもない。

 ここで仲良くなっとけば、後々金になると思うぜ」


「……先行投資」


「そゆこと」


 ノエルは一度朧を見て、納得した風に頷いた。


「ん。いい考え。まさにしては上出来」


「そりゃどーも」


 彼女は朧を葉っぱでぺシぺシ叩きながら、ドスの効いた声で見下ろす。


「今のところは殺さないでやる。

 強くなれ。有名になれ。金を生め。何かしたらお前の性癖をバラすからな」


「っお、俺は断じてロリ「黙れ」――っ」


「返事は『はい』か『イエス』だけだ」


「……はい」


「よろしい」


 突如起きた騒ぎも一段落し、東条は再度ベッドに倒れ込む。

 朧はこれからどうすればいいのかあたふたし、

 寝っ転がるノエルの腹が鳴った。


「まさ。お腹減った」


「あ?勝手に食えよ」


「……まさいつもノエルの裸「よぉし分かった何が食いたい‼さっきのエビとワニの足でいいな⁉いい‼そうしよう‼」……早めにね」


「任せろ‼行くぞ朧!飯だ!」


「俺もですか?」


「当たり前だ‼ついて来いっ」


「……はぁ」


 奥のキッチンにズンズンと歩いていく東条に、朧は呆れながらもついていった。


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― 新着の感想 ―
[一言] ははっ、ノエルちゃんつよすぎー
2020/12/29 21:01 退会済み
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