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Real~Beginning of the unreal〜  作者: 美味いもん食いてぇ
3章

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182/1049

50話

 


 §



 遠方で繰り広げられる蹂躙を、彼は内心興奮しながら見ていた。


(あんなもん、あの人達に渡しちゃダメでしょ)


 只でさえヤバい二人が、現代兵器という分かりやすい危険を手に入れてしまった。


 皇居で拾った武器を使っていることはあったが、動画のコンプラ的に大丈夫なのだろうか?そんなこと気にし無さそうではあるが。


(絶対藜組から買ったよな。……俺も欲しくなってきたな。……でも金ないな)


 二人に触発され、武器類の魅力に引き付けられる彼であった。



 §



 ――三十分後。


「……終わったか」


「ん。満足」


 赤い殻とぷりぷりの肉片が散乱する、毒々しい程青くなった一帯。


 ライフルを運ぶスベスベサンショウウオを除いて、そこに生存を許された生物はいない。


 夥しい数の屍の上に立つ二人は、頬についた返り血を煩わし気に拭った。


「殺ったね~」


「疲れた」


 改めて辺りを見てみれば、広がっているのは正に虐殺の跡だ。

 少々殺りすぎた感が否めない。


「六十四。まさは?」


「負けた~っ。五十八」


「よしゃ」


 勝負はノエルの勝利。

 ライフルは貫通力が高いが、頭部付近を粉砕しないと生命活動を停止しないザリガニ相手には、分が悪かった。


「……お、ありがとな」


「ヌムィ~」


 ズボンを引っ張られて下を向けば、可愛い彼等がライフルを持ってきてくれていた。


 受け取るとすぐに散開し、そこらに散らばるザリガニを食べ始める。相当お腹が空いていたらしい。


「先ホテル行かね?シャワー浴びてぇ」


「ん。海鮮臭い」


 自分の臭いを嗅いで顔を顰める東条とノエルは、荷物を纏め再び歩き出した。


 そんな二人の足に彼等が密集し、ヌムヌムと身体を擦り付ける。まるで別れを惜しむ様に。


「おーよしよし、お肌スベスベだなお前ら」


「ぷにぷに、ぷにぷに」


 二人にとっては遊び半分、只の気紛れでも、彼等にとっては正真正銘の救世主なのだ。


 今日という日を、彼等は忘れないであろう。


「ヌムゥウ」「ヌミィウ」「ヌゥゥゥ」「ヌゥ~ヌムヌム」――


「じゃーなー死ぬなよ~」


「なよー」


 一通り撫で終わった後、立ち上がった彼等に見送られ、東条は悠々とホテルを目指すのであった。




 ――ホテルに到着し、使われた痕跡のない空き部屋に荷物を置く。


 拾ったザリガニの肉片とワニの足を冷凍庫に入れた後、ノエルはそこで、東条は別の部屋でシャワーを浴びた。


 時刻は昼の三時。


 ライトアップされたままの東京タワーも目の前に見える。


 焦る必要もない。

 ふわふわのバスローブに身を包んだ二人は、洗濯機を回し、テレビをつけ、缶ジュースを手にベッドに座り、一時の休憩をとる。


「さっきのビデオ撮ってたん?」


「もち」


「鬼映えだろ」


「ん」


 ノエルがキーボードを弾く音、

 今にも壊れそうな洗濯機の稼働音、

 垂れ流されるテレビの音、

 ボーっとする中、無機質な音が心地いい。


「あいつ等の名前決めた?」


「ワニがランナー」


「めっちゃ走ってたもんな」


「ザリガニはテナガエビザリガニ」


「そのままだな」


「サンショウウオはヌムヌム」


「ヌムヌム言ってたしな」


 安直ながらもしっくりくる。


 ……東条はそのまま枕に頭を預け、少し休もうと目を閉じた。


 ノエルはパソコンを閉じ、スマホを弄り出す。


 数秒後、東条のスマホに一件のメールが届く。


 気怠げに手を伸ばし、メールを開くと、




『そのまま読んで。ノエル達を見てる奴がいる』




 彼の眠気は秒で飛んだ。


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― 新着の感想 ―
[一言] 癒しが……ほしいんか……? ロボット犬ってのがあってだな……
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