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Real~Beginning of the unreal〜  作者: 美味いもん食いてぇ
3章

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43話

 

「こんな所で何をしてたんだ?」


「あ?何もしてねぇよ。テメエ等こそ何の用だ?」


 新にガンを飛ばす毒島を、嶺二が押しのけお返しとばかりにガンを飛ばす。


 どれだけ仲が悪いのか、全面的に毒島に原因があるのは明白なのだが。


「まさに用があってね。君達が連れて行ったと聞いたから探していたんだよ」


「俺?」


「ああ」


 今日は色んな奴に話しかけられる。そろそろ疲れてきたから解放してほしいというのが本音なのだが。


「時間貰ってもいいかい?」


「別にいいけど」


「それじゃあ移動しよう」


 毒島とその部下にガンを飛ばされながら教室を出ていく二人に、東条とノエルもついていく。


 その去り際、ニヤリと笑う毒島が東条の背中に囁いた。


「明日、昼頃ここで(ボソッ)」


「お、おう」


 無駄に含みのある言い方。行動一つ一つが悪役なんだよな~、と思わずにはいられない東条であった。




 ――ノエルの蹴る石がコロコロと廊下を反響する。


「彼が何か迷惑をかけなかったかい?」


「いや別に?」


 安心したように溜息を吐く新から、日頃から毒島一派に手を焼いている彼の姿が窺える。


「彼の素行不良には悩まされていてね。暴力で全部解決するし、夜な夜な女性を部屋に連れ込んでるみたいだし、上げたらキリがないよ。

 ……性事情はまぁ分かるから、合意の限り何も言わないけどさ」


「何であいつが俺達の言う事聞いてんのか、不思議なくらいだぜ」


「ははっ」


 そんな彼等の愚痴に付き合っている内に、目的地に到着する。


 東条が教室に入ると、既に中には三人が集まっていた。


「あっ、おはようございますノエルちゃん!まささんっ」


「おはー」「おはー」


 小走りで向かって来る胡桃がノエルに抱き着こうとし、手を払われた。


「よう」


「おざっす」


 手を上げる馬場に、手を上げて返事する。


 そして、


「……(ペコ)」


「(ペコ)」


 例の朧君と簡単に会釈を交わす。


 東条とノエルが適当に座ると、壇上に立った新が此方を見て話し始めた。


「ここにいる五人が主に全体を纏めてる人間だ。四人はもう面識あると思うけど、正宗、君は初めてだろ?」


「え、ああ」


 いきなり振られた朧が驚いて顔を上げる。


「一応挨拶しといてくれ」


 新の強引な友達作りに、気まずい視線が交差した。


「……(ペコ)」


「(ペコ)」


 本日二度目の会釈。


「よし。単刀直入に言うけど、今日の集会にまさを呼んだのには理由があるんだ」


「はぁ」


 再び自分に向けられる綺麗な視線に、東条は気の抜けた返事をする。


「まさには、まだ俺達が行っていない場所だったり、危険な生物がいて近づけなかった場所に、俺達を連れて行ってほしいんだ。

 食料調達は、これからは最低でも青山まで足を運ばなくちゃいけなくなる。危険も今まで以上に増す。まさがついてきてくれればっ、物凄く心強いん



「え、嫌だけど」



 ……え?」


 断わられると思っていなかったのか、新は口を開けて放心している。胡桃も似たようなものだ。


「そもそも俺今日ここ出てくぜ?」


「そ、そんな」


 既に新は二人を含めた上で計画を立てていた。


 東条の性格を間違った方向に解釈したが故の、失策。


 新は慌てて壇上から降り、東条に近寄る。


「何で……そんな早く」


「何でって、俺がここに留まる理由がないだろ。あぁ、最低でもあと一日は顔を出すけど、今日は近くの高級ホテル行くし。な?」


「ん」


 二人のこれからの予定は、周辺を探索しホテルに泊まり、明日毒島に会ってから探検に出発する。


 こんなところだ。

 二人の中では、既にこの場所との関係性は終わっている。


 しかし、彼等の内心など知らない新と胡桃は、その唐突な事実を容易に受け入れることなどできない。


「……ノエルちゃん、もうお別れなんですか?」


 胡桃が目尻に涙を浮かべ、ぎゅっと両手を握る。


「ん。楽しかった」


「っ外には危険が沢山なんですよ?ノエルちゃんなんて、パクって食べられちゃうかもしれないんですよ?」


「問題ない。まさがいる」


「……うぅ」


 思い切ってノエルを不安がらせようとした胡桃だったが、パートナーとの強い絆を見せつけられるだけに終わった。


 逆に東条はノエルの言葉に感動する。


(そんなに俺を信じてくれてるのか(しみじみ)


 が、


「いざとなったらまさを囮にして逃げる」


「おい」


「……ふふっ、それは酷いです。グスっ」


 結局いつものノエルだった。


 お別れの空気が濃くなる中、最後に新が声を絞り出す。


「……まだ、沢山の人が助けを求めている」


「そうだな」


「まさも他人の為に動ける人間じゃないか」


「見方によってはな」


「……俺が、俺達が造ったこの場所を、凄いと言ってくれたじゃないか!」


 新は昨夜の事を思い出す。


 東条が自分に言ってくれた言葉は、確かな重みと温かさを持っていた。

 あの言葉が嘘ではないと、自身の心が分かっている。


 だからこそ理解できないのだ。

 自分と違う行動をとろうとする、東条という男が。


「ああ凄いぜ?でもだからって、俺がお前等に力を貸す道理はねぇだろ。んじゃな」


「……っ」


 躊躇いなく背中を向ける二人に、新は、命令でも、依頼でもなく、ただ、懇願した。


「……友の頼みでも、ダメか?」


「ダメだな」


 間髪入れずに返ってくる、ドライな現実。


「……そうか」


「じゃな」


「ああ」


 扉を潜っていく彼等を悲し気に見送る新の肩に、嶺二は慰める様に手を置いた。


「……前に言ったろ。誰だって考えてるこたぁ違うんだよ」


「……ああ」


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