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Real~Beginning of the unreal〜  作者: 美味いもん食いてぇ
2章

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39話

 


 翌朝、宛がわれた教室で目を覚ました二人は、寝袋から這い出した後朝食を貰うべく大体育館に向かっていた。


「あれに並ぶのか」


「めんどくさ。コンビニ行こ?」


 長蛇の列を見て並ぶ気を無くしたノエルが、腹を鳴らして駄々をこねる。


「ここらのコンビニ漁り尽くされてるって話だったろ」


「うーー」


 不承不承と最後尾に付いたノエルの気を紛らわせるため、簡単な指遊びをしていると、


「あの、すみません」


 自分達の後ろに並んだJKの集団が話しかけてきた。


 先頭の一人がスマホを両手で握りしめ、残りはその子の後ろでじっとこちらを見ている。


「はい?」


「私達と写真を撮っていただけませんか‼」


 思いっきり頭を下げる彼女達に少々面食らうが、そういうことなら仕方ない。

 というか大歓迎だ。


 人生で三度あると言われるモテキ。遂に自分の所にも来たか、と東条は心の中でガッツポーズをした。


「全然いいっすよ。ノエルは?」


「ん」


 二人の了承が得られたことに、JK達が手を取ってキャッキャと喜ぶ。


「有難うございます!やった!」


「よくやったわ!」


「殴られなくてよかったね!」


「うん!」


 何やら誤解混じりの会話が聞こえてくるのだが。初対面のJKを殴るわけがないだろう。


「おいおい、俺はそんなサイコパスじゃないぜ?」


「す、すみません。でもやっぱり、ちょっと怖くて」


 苦笑する彼女に、つい笑いが漏れる。


「じゃあそんな勇気ある君を称して、好きなだけ撮るがいいさ!」


「有難うございます!じゃあツーショットからっ」


「来い来い。苦しゅうないぞ!」


「ピース」


「ピース」


「……女に甘い」


 鼻の下を伸ばしているのが目に見える彼の姿に、ノエルは深い溜息を吐いた。



 ――個人、全員、と撮り終わっても、列の先までまだ長い。


「カオナシっち筋肉凄いよね。身体触らせてー」


「存分に触るがいい」


 ジャンパーを脱ぐとすかさず抱き着いてきたギャルに、変な笑いが漏れてしまう。


「ムキムキー!凄い凄い」


「えー?ほんとだ!」


「ヤバ!」


(何だここ。天国か?)


「ノエルちゃんのもち肌の方がヤバいし!」


「ホントなにこれ?人間?」


「化粧品何使ってるの?」


まにもつかっえあい(何も使ってない)


「「「えー⁉」」」


(……姦しい)


 高笑いを浮かべる東条の隣で、ノエルもまた彼女達に大人気であった。




 ――(白飯と汁物、少しのおかず。やっぱ豪華だな)


「……足りない」


 朝ご飯は大事というし、一番気を使っているのかもしれない。貰った食事に別々の感想を抱いていると、


「カオナシさーん。ノエルちゃーん。一緒に食べよー」


 先の彼女達に誘われ、日向の下、ブルーシートの上で一緒に食事をとることになった。


 ――「そのカメラってずっと回してるの?」


「JKは需要が高い。視聴率稼げる」


「酷いっ。私達の身体が目当てなのね!」


「それにしか興味ない」


「「「キャー!」」」



「ノエルちゃんとカオナシさんってどういう関係なの?」


「親子?」


「ちゃうちゃう、飼い主とペットみたいなもんだ」


「勿論ノエルが飼い主」


「はっはっ、ほざけ」


 二人のフレンドリーさと漫才染みたやり取りに笑いが起こる。


「我儘だし食欲バグってるし大変なんよこいつ」


「まさだって勝手に荷物の中にエロ本詰めるのやめてほしい。捨てるの面倒」


「それここで言う⁉あと毎度毎度そっと捨てんのやめろよ!親に見つかったみたいで気まずいんだよ!」


「「「ははははっ」」」


 開けた体育館前の一角で楽しく談笑している彼等。

 その声は響き、当然周りの者にも聞こえてくる。


 殆どの人がJK達を羨ましそうに見ていたが、中にはそれを不快と感じる者もいる。


 数人の大人達は舌打ちをし、尚も騒がしいブルーシートに近づいていった。


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