30話
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「胡桃、あとどれくらいいける?」
「これで半分くらいですから、あとコンビニ三軒ほどです」
そう言う彼女が集められた物資に触れると、その場にあった全てが徐々に消えていった。
今いる店の商品を包み終えた彼女は、まだ容量には余裕があると立ち上がる。
姫野 胡桃 birther 『抱擁』
彼女は異空間に、現実からは不可侵の空きを作ることが出来る。
容量は凡そコンビニの商品六軒分。
生物、非生物問わず包み込むことが可能だが、生物の場合少しの反抗で飛び出してしまう。
人助けという難題を敢行できているのも、彼女の力があるからこそなのだ。
「分かった。早めに次に進もう」
新は警戒に当たっていた嶺二を呼び戻し、再び外に出た。
――静まり返る欅並木に、三人とも聊かの違和感を覚える。
「……ここらへんよ、モンスター少なくねぇか?木も多いしよ」
嶺二がバットをコツコツと肩に当て、周りを見渡す。
ここに来るまではそれなりに襲ってきたモンスターも、表参道を少し進むとピタリと姿を現さなくなった。
拠点から離れるにつれ人の街の面影が薄れていくのも、彼等にとっては薄気味悪かった。
「自然にできたセーフティスポットかもしれない」
(……本当にそうか?)
希望を見出す新とは反対に嶺二は訝しむが、考えても分からない、と次の目的地に歩を進める。
その時、
「……ん?」
常人より基礎能力の高い新の聴覚が、微かな音を拾った。
「どうしました?」「なんだ?」
集中する新を見て、二人の身体に力が入る。
「……笑い声、か?」
確かに聞こえる。遠くに響く、何かの破壊音と、狂笑。
「人がいるかもしれない」
「おいおい、少しは警戒しろ」
「もしいるのなら助けなくてはっ」
そちらに向かって躊躇いなく歩き出す新に、慌てて二人もついていく。
速足で駆け、木々を縫い、車を飛び越え、立ち止まった先にあったのは、
「表参道ヒルズ」
「……聞こえるか?」
「流石にな」
中から時折聞こえてくる、物を壊すような音と男の笑い声。
新は冷静に考えていた。
一つ。人の声を真似るモンスターがいるとして、そのモンスターと争っている以上、片方は人の可能性が高い。
二つ。モンスターを殺しながら笑う人間がいるとしても、同様に手助けすべき人。
そして三つ。ここから東に直進した位置には、藜組が根城としている場所がある。ヤクザの人間ならば、人を甚振り笑う奴がいてもおかしくない。
自分は世界が変わった後、そういう光景を沢山見てきたのだから。
「行こう。人がいるのは間違いない」
新は腕に光の球を浮かべ、扉を押し開けた。
イルミネーションで飾られた七色のクリスマスツリーが立つ、デパート内の大通り。
上を見上げれば吹き抜けになっており、各階の断面が見て取れる。
中に入れば分かる。小さいと思っていた音はかなりの大きさで響き、声には女のものも含まれている。
「……四階か」
嶺二は階を特定すると同時に、バットに風を纏わせ戦闘態勢に入った。
「俺が先頭を行く。嶺二は胡桃を挟んだ後方を頼む」
「あいよ」
「階段はあち――
ガシャァァアンッッ‼
「「「⁉」」」
突如響く爆砕音に、三人の目線が打ち上がる。
そこには、途轍もない速度でコンクリートとガラスを粉砕した空を翔る何か、と、
宙を舞う真赤なドレスの少女。と、
それを追う、真赤な変態がいた。
§
お知らせ。
第6回カクヨムコンテストに応募することにしたから、皆カクヨム登録してこの作品にブクマとか星とかつけまくってくれ。マジお願いします。
今までは俺自身が出版社選んでやりたいって一心でネットの小説大賞には応募しないようにしてたけど、ポイントや点数が伸びるのはどれもこれも似たような作品ばっか。俺みたいななろうの中でも斜に構えた奴は、一生ランキングの下でちびちび点数稼いでなきゃいけないってのを思い知った。
よって美味いもん、動きます。
カクヨムのコンテストって、読者選考とかいう俺の不倶戴天の敵みたいな選考方法採用してるから、俺1人の力じゃ絶対に残れないんだ!今寝ずに1話から推敲してるから!初期の読み辛さとかもなくなってると思うから!お願いだ!オラに元気を分けてくれ!!もう何でもするから!マジで!ホントごめんなさい!印税欲しい!!(゜∀。)




