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Real~Beginning of the unreal〜  作者: 美味いもん食いてぇ
2章

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156/1049

25話

 


 §



 彼等の朝は早い。


 戦闘職以外にローテーションで回ってくる食事当番は、周りが起き出す前に目を覚まし、自主的に炊き出しを用意する。


 殆どがレトルトなのでそれ程の手間はかからないが、量がバカにならないためサボってはいられない。


 そうして食事の用意ができた頃、皆がぽつぽつと起き始める。


 一日に二度しかない、貴重な栄養補給の時間だ。


「どうぞー」


「ありがとうねぇ」


「どうぞー」


「あざす」


「どうぞー」


「ありがとうは?」


「ありがと」


「はーい」


「どうぞー」


「……ちッ、少ねぇな」


「……あ?」


 人の数が多くなればなるほど、そこに溜まる不満や欲は大きくなる。


 死と隣り合わせのコロニーの中で、いざこざが起きないはずがないのだ。


 小声でぼやいた高年男性に、配給係のギャルが食ってかかる。


「何だよおっさん、いらないなら返してくんない?他の人にあげるから」


「誰もいらないなんて言ってないだろ」


 二人の言い合いに周りの視線が集まる。


「取ってきてくれる人達に感謝も出来ないような奴が、これに手を付ける資格はないよ」


「「「そーだそーだ」」」


「ちっ」


 女性の怖い所はその数だ。一人を怒らせると、もれなく仲間もついてくる。まるで狼。獣の群れだ。


「っ何を偉そうに、お前達も大したことは何もやってないだろ。女は黙ってろ」


「うわー、典型的男尊女卑の老害じゃん。話す価値無いわ」


 嘲笑するギャルの態度に、高年の頭に血が上る。


「そもそも戦闘職だかなんだか知らないがっ、外に行けるならもっと持ってこれるだろっ。どうせつまみ食いでもしてんだろーよ」


「おいおっさん、それくらいにしとけよ」


 高年に声を掛けたのは、配給食を持った青年の集団。この場所で戦闘を担っている者達の一部だ。


 他の者と比べても、健康的な見た目をしている。

 高年男性は彼等の配給量を見て、更に顔を顰める。


「ほら見ろっ、俺達と比べて明らかに多いじゃないか!」


「今に始まったことじゃないだろ。それにこっちは命掛けてんだ。これくらいの贔屓許してもらわなきゃやってらんねぇぞ」


「俺達の命なんてどうでもいいってか!」


「……守ってもらってる分際で、うるせぇな」


「「「――っ」」」


 青年から魔力が放たれる。


 彼の魔力は、快人や東条は勿論、快人の下についていた中年等よりも稚拙、矮小であったがしかし、その圧に全員が押し黙り、息を呑んだ。


 幾分か重くなった空気に、体育館中が静寂に包まれる中、


「おいおい、どうした」


 食事を貰う為訪れた嶺二の声が響く。その姿を見た青年は慌てて魔力を引っ込めた。


「このおっさんが飯が少ねぇって喚いてんだよ」


 金属バットを担ぐ嶺二に射竦められた高年は、精一杯その目を睨み返す。


「そうか。なら勝手に外行っていいぞ。新には俺から言っといてやる」


「――っそんなの「無理だろ?なら無駄な体力使うな。お前のくだらねぇ一言で周りの人間が不安になんだよ」


「っちッ」


 嶺二はは舌打ちを残して去って行く高年の背中に溜息を吐く。


「お前等も、皆を下に見る様な発言はするなよ?」


「……ああ、悪かった。カッとなっちまった」


 後に漂う気まずさと不安の残香に、嶺二は頭を掻いた。


「……まぁ、気持ちは分かるけどよ」



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― 新着の感想 ―
[一言] これ希望者は魔物と戦ったり物資集めに参加する為の訓練なりレベル上げ(?)なりさせて貰えるんかな それがあるのにやらない選択をしたんならこのおっさんが普通に馬鹿だし無いんなら戦力になるかもしれ…
[一言] おかわりー
[一言] マサ達が関わらなくてもしばらくしたら食料のために殺すやつが出てきそうな雰囲気だなー
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