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Real~Beginning of the unreal〜  作者: 美味いもん食いてぇ
2章

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23話

 

「入れ」


「失礼いたします」


 その二十人の内の一人である彼が、隊服に身を包み姿勢を正した。


「亜門 誠一郎一等陸佐であります」


「あぁ、崩して構わないぞ。お前とも随分顔なじみになってしまったな」


「はい、ですが私はこのままで」


 二人は帰って来てからも同じ場所で過ごしている為、顔を合わせることも多くなっていた。


「相変わらず固い奴だな……。見たぞ?また世界記録を塗り替えたな。おめでとう」


 用紙を叩いて笑う岩国に、亜門は苦笑する。


「私のはそういう能力ですから。他の発現者の方々はどうでしたか?」


「魔法の精度は上がっているようだが、身体能力は以前とあまり変わらんな。肉体の強度が上がっているわけでもないし、怪我もする」


 超常の力を手に入れても、超人になれるわけではない。岩国は例のビデオで見た青年を思い浮かべる。


「……やはりモンスターを殺した数でしょうか?」


「殺した数なら我々も相当数いってるぞ?何か別のカラクリがあるのだろうよ」


 今話題になっている二人の存在は、勿論彼等の耳にも入っている。


「彼等に連絡を試みたと伺ったのですが、その件はどうなったのでしょうか?」


「とりあえず銀行の口座を作れ、と一方的に切られたらしいぞ。なぁ?」


「……はい。申し訳ありません」


 爆笑する岩国に秘書が頭を下げる。


「それはまた……、随分と強気ですね」


「まぁ当然だろう。今一番深淵に近いのは彼等で間違いない。その優位性を捨てるなんて猿でもしないさ。

 それに理由はどうあれ、残された市民の為に食事を配り歩いているんだ。

 我々が彼等に感謝以外の感情を向けることは許されない」


「……重々承知しています」


「……」


 あの日の事を各々が思い出す中、岩国が手を鳴らし空気を切り替えた。


「もうすぐ口座も用意できる。そうすれば我々の知らない情報も沢山入ってくるだろう」


「……では、」


「ああ。ようやく特区に残された市民を救出できる」


 亜門の拳が強く握られる。

 あの日助けられなかった命を、再び掬えるチャンスが来る。


「その為に近場から部隊も集めている。内二人はお前と同じ能力者だぞ。

 能力は……何だったか?」



「はい。一人目が三等陸曹 千軸 楓(せんじく かえで)(男) 


 能力系統はbirther(物体創造系) 能力名『異世界』。


 二人目が一等空曹 彦根(ひこね) 空太郎(そらたろう)(男) 


 能力系統はruler(支配系) 能力名『小さな硝子細工』。


 二人共それぞれ千葉と群馬にて、最前線で戦い続けた英雄です。


 彦根一等空曹に於きましては、一人で群馬の緑化地帯を半壊させた実力者です」


 亜門はまだ見ぬ同僚の暴れっぷりに瞠目する。


「……それは、凄いな」


「と言いましても、特区とそれ以外とでは緑化の規模からモンスターの強さまで、何もかもが違うという調査結果が出ています」


 岩国が頷く。


「そういうことだ。一騎当千の力を持っていても、あの地獄を知っているのはお前だけだ。

 突っ込む時はお前に隊を任せる。頼んだぞ」


「はッ!」


 力強く敬礼する亜門に、彼は満足気に笑う。


「そうだ、この後一緒に飯でも食うか?」


「いえ、残念ですがお断りさせていただきます。家族が待っていますので」


 多忙な亜門は、今は一週間に一度しか家に帰ることが出来ない。その間は愛犬とも会うことが出来ない為、世話はお手伝いさんにまかせっきりの状態。


 久しぶりの帰省日に、上司と飯など行っていられるか。


「そうかそうか。ならさっさと帰ってやりな」


「はっ。感謝します」


 風の様な速さで部屋を出ていく彼に、岩国は苦笑する。


「……あいつ最近俺に冷たくないか?」


「仲間意識とか、帰巣本能の強化によるものじゃないでしょうか?」


 岩国はもう一度、亜門の測定用紙に目を向ける。


 亜門 誠一郎 beaster(獣化系) モデル『狼犬』


「そういうことも分かるのか?」


「いえ。私の能力はあくまで、対象の能力を見て勝手に名前をつけるだけですから」


 そう彼女は、


 seeker(精神干渉系) 『命名権』 我道 美見(みみ) 


 は微笑んだ。



 §




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― 新着の感想 ―
[一言] 能力系のあるある描写やな! ワクワクすっぞ!
[一言] 自衛隊・政府サイドの人物は結構気に入っているので嬉しいです。893さんたちも最高に悪くてカッコよかったです。やっぱり大人っていいですよね…。
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