22話
§
100m走
――2秒58
世界記録 約10秒
走り幅跳び
――17・2m
世界記録 約9m
砲丸投げ
――51.3m
世界記録 約23m
走り高跳び
――10.2m
世界記録 約3m
400m走
――10秒32
世界記録 約43秒
110mハードル走
――5秒14 ※五度の跳躍で走破
世界記録 約12秒
円盤投げ
――151m
世界記録 約74m
棒高跳び
※棒が破損のため垂直飛び――7.2m
世界記録 約6m
槍投げ
――283m
世界記録 約98m
1500m走
――50秒
世界記録 約3分30秒
陸軍施設の一角、担当官は測定結果を用紙に書き込み、その常識外の数値に何度目かの溜息を吐いた。
そしてそんな彼の前には、
定期的な計測で世界記録を塗り替える人外、
首にタオルをかけ、スポーツドリンクを飲む二足歩行の人狼が立っている。
「亜門一等陸佐、これで測定は終了です。お疲れ様でした」
「ああ、お疲れ様」
徐々に人の姿に戻り去って行く彼を、担当官は尊敬と畏怖の目で見送った。
「此方、今日の測定結果でございます」
「有難う」
岩国は執務室にて、我道の秘書に渡された資料に目を通す。
特区から帰還した後、彼等はすぐに未知の力を解明するべく研究を始めた。
そうして分かったのが、今まで地球上に確認されていなかった新元素の存在。
巷に倣って、魔素(仮)と命名されたものだ。
この突如現れたダークマターについては謎が多すぎる故、安全地帯より危険地帯の方が含有量が多いという以外、詳細は殆ど明らかになっていない。
ただ一つ、
『摂取量に応じて人間に超常的な力を発現させる』
という、世界を根本から壊しかねない特性を秘めている事実を除いて。
それらは魔法と呼ばれ、帰還した自衛官約八百人の内、七十七人にその傾向が見られたことから、凡そ十分の一という高確率で発現することが分かった。
その多くは安全地帯にいた者と同様、些細な現象を起こすに止まったが、更にその十分の一、七人の自衛官は超常と呼ぶに相応しい力を手に入れた。
未だ安全地帯からこのレベルの魔法を発現したという情報が出ないことからも、日本中に魔素は拡散されたが、超常の力を発現するには最低でも危険地帯レベルの濃度に身を晒す必要があると予測できる。
この事実がマスコミに露呈すれば、日本中のモノ好きがこぞって危険地帯に足を踏み入れようとするだろう。
混乱下にある今の状態でそんなことが起これば、今度こそ取り返しのつかないことになる。
当然ながら救助した一般人の中にも超常発現者はいたが、今は無理を言って施設の中で訓練や研究の協力をしてもらいながら快適な生活を約束している。
……そして、そんな彼等とはまた別に、異端の力に目覚めた者もいた。
日本全土の自衛官と保護された一般人の中で、その力が確認されている人物はたったの二十人。
確率、条件、能力、全てにおいて規則性が無く、その一切が不明。
唯一共通するのが、現代世界の法則を無視した破格の特殊能力。
――執務室に乾いたノック音が響いた。
最初の方の数字は見辛いと思ったから横になってるだけね。




