表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Real~Beginning of the unreal〜  作者: 美味いもん食いてぇ
第3巻 1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

136/1049

5話

 


 ――「ふぅ」


「できたか?」


「ん。そっちは?」


「完璧」


 ノエルは立ち上がり、土の棒で串刺しにしたコカトリス、だったものを肩に担いだ。


 首と尻尾を落とし、逆さに吊るし、羽を毟り、内臓を取り除く。初めての下処理ではあったが、上手くできたのではないだろうか。


 その証拠に、見た目はよく見る食用の鶏だ。サイズ感がおかしいだけの……。


「よいしょ」


 ドスン、と支えに置かれ、東条が用意した巨大な焚き火の上に掲げられる。


 チャッカマンでトレントに火をつけるのは、中々骨の折れる作業だったのだろう。


 黒い顔に慣れた今、ノエルには漆黒の上からでも精神的な疲労が見て取れる。


 しかし準備は終わった。あとは回しながら待つだけだ。


「どれくらいかなー?」


「結構かかるだろ。火力もまああるし、気長に待とうや」


「ん~」



 ぐるぐるぐるぐる――



「まさの黒いので回せないの?」


「無理無理。持ち上げる、とか握る、とか、簡単な操作しかできないのよ」


「ん~」



 ぐるぐるぐるぐる――



「こ~たい~~」


「まだ五分だぞ。……たくっ」


 寝っ転がってブローチを弄っていた東条は立ち上がり、駄々をこねるノエルと場所を交代する。


 あと何分かかるのか……。腹の虫を聞きながら、彼は獣の唸り声をBGMに作業に入った。



 ぐるぐるぐるぐる二十分後――



「……モンスター襲ってこないな」


「あれだけ殺せば身の程を知る」


「それもそうか」


 パチパチと油の弾ける音を聞きながら、漂ってくる香ばしい香りに二人の涎が湧き出る。


 鼻が良く、且つ彼等に襲い掛かるような怖いもの知らずのモンスターが、この香りに引き付けられないわけがない。


 しかし準備から今まで、唸り声を上げるだけで一向に飛び掛かってこない。なぜか、


 理由は然して単純。

 二人の周りを、無造作に積み重ねられた死体が円状に囲っているからだ。


 引き裂かれ、撲殺され、原形を留めていない同胞の死体が、壁となり生き残ったモノを阻んでいた。


 要するに、見せしめである。

 貴様らも近寄ればこうなる、という、弱者への警告。


 三大欲求という本能を上回るだけの、恐怖という本能を、新たに刻み込んだのだ。


「おなかすいた~~」


「うん。そろそろ、できたかなっ」


 死体から溢れる膨大な血に囲まれ、濃厚な鉄臭さの中、食事に笑顔を向ける彼等は、はなから常人の感性など持ち得ていない。




「上手に焼けましたー!」


「たー!」


 煌めく黄金の油が滴る巨肉を、天に掲げ東条は叫ぶ。一度はやってみたかった、狩猟者の夢である。


「はやくはやくっ」


 キラキラと目を輝かせ飛び跳ねるノエル。


「おし、かぶりつけ!」


「やった!」


 大口を開けジャンプし、


 直後、


「あばふっ」「うおっ」


 突如真下から土柱が生え、ノエルは顎を強制的に閉じられ吹っ飛び、東条は飛び退き肉を守った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] えらい猛者が居たものだな…… 食事の邪魔をする奴など長生きできないんだぞ。 続きが気になるじゃないか
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ