97話 人魚は今どこに暮らしている?
「というわけで、チュラをぶっ倒す」
ほんとは果物を手にしたらすぐタオユエンから帰るつもりだったのに、いつの間にか人魚の国に行くことになってしまった。
「あ、ありがとうございます」
「なりゆきとはいえ、すまぬ」
礼を言うアピアとパリキール王。
「いいってことよ。それよりさ、もし俺がチュラをぶっ倒せたら、俺の国を承認してくれ」
現時点でもカクラとロンドとドラゴンから承認はもらっているけど、多い方がいいし。
「ええ。是非」
「もちろん、です!」
「よっしゃ!で、人魚王国ってどこにあるんだ」
「知らずに私たちに船作らせてたの?怒るよ」
目標の場所も知らずに指示を飛ばしたことに対して、セーレから怒りの声が飛んでくる。
「い、いや~。海の向こうにあるのは確実かと思って」
とりあえず船が要るだろうな、ってコンセンサスはみんなの空気の中にあったじゃん。
それにニコも2日酔いの頭痛に苛まれながらも作業し始めてたし。
「人魚王国アトランティスは海に浮かぶ国ですぞ。しかし現状、チュラに占領されておる……」
トライデントと王妃を取られてから数日後。チュラが海のモンスターたちを率いて王国に侵攻。
パリキール王はアピアとウポルにクェゼリン、そして少ない側近たちとともに王国を追われてしまった。
「今はとある巨大な船を拠点にしております。なんとも情けない話ですが……」
経緯を話している間、パリキール王は肩を落としていた。
国を守れなかった自分の不甲斐なさを恥じていた。
「どうして他の国に救援を求めなかったんだ?」
「……人魚王国は代々鎖国しておりました。陸とは距離をおいていたのです。おかげでビートルバムによる世界征服の影響も比較的少なかったのですが」
「逆に、チュラ1人の横暴も気づかれなかった」
「人魚王国ってすっごい海の向こうにあるんだよ。だからカクラとの交易もほとんどなし。ミリゥ様と会談するときにちょっと教えてもらうっていう遠い距離間だったねえ」
リイの補足情報もふまえると、人魚王国ってまさに絶海の孤島って感じだ。
っていうか……。
「……ミリゥとは交流してたのに、助けに来てくれなかったのか?あいつ」
「ぎくっ」
あれ?いつの間にミリゥのやつあんな沖合にいった?
背中向けてバツ悪そうにしているし。
「…………………………気づいた時には、全てが終わっておりましたの」
海の上を移動する国家であるアトランティスで何か起きても、今どこにいるのかを探すのは至難の業だ。
ミリゥも異変に気づいて急いで向かったけれど、着いた時にはすべてが終わってしまっていた。
「海を統べる王である私が、仲間のピンチに気づけませんでしたの……悔やんでも悔やみきれないのですわ……」
「あ、アトランティスは、幻の国、とも呼ばれてて、その、人魚じゃないと見つけるのは、むつかしい、です」
そんなに絶海の孤島なのか。
「そういうわけで、我々がいる洞窟までは案内できますが、そこから人魚王国へ行くのは我々でも方法がわかりませぬ」
……それでか、と俺はあることを思い出す。
ツガミとマコの墓にあった、描きかけの地図とコンパス。
ツガミも人魚王国に行きたかったのだろうか?
それとも、ツガミも色んな種族の所在地を地図にして残したかったのか?
だが、ツガミのいた頃とはもう時代が違う。
「いや、大丈夫だ。さっきの闘いで、ビートル人の道具を奪ったから」
ニコが持っているイタミのスマホ。
それを使えば、チュラの居場所、すなわち人魚王国の位置がわかるはずだ。
「はい、地図ですよ。えっと、赤点がビートル人です。でも誰が誰かまでは分かりません。地図上に表示されているのは45個」
俺がNo.49で次にアキヅキとかいうやつがいたから全員は50人。
除外されるのは俺とカジマとイタミと……。
それとフジオウとかいうラクのクジラの中にいた色白の脱退者。
計4人。
え?
「あと一人誰だ?まあいいや、そんなことより海の上に点はっと」
久しぶり過ぎてノスタルジーさえ感じる人差し指と親指の動きで、タオユエンからもロンドからもはるかに遠い海のど真ん中に一個だけ点があるのを発見した。
「ここだな」
人魚王国の所在にあたりをつける。
にしてもこのスマホ、現代日本のと比べて質が数段階落ちるな。
地図上の地点をタップしても詳細は出ないし、地名も出ない。
インストールされているアプリは電話と写真とチャットアプリと時計とカレンダーぐらい。
ヤマナミとかいうやつのチートか?
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「ねえええええ!ロウセエネも忙しいし言わなくても後で怒られるだけだよおお!!早く行こうよ!!!人魚!人魚!」
「遠足みたいなノリやめろ。ってか後で怒られるのお前もわかってんじゃねえか」
人魚の国に行けるとテンション上がっているアキナだが、俺たちが出発することをロウセエネに一言報告しなければならない。
陸から行くのは、俺とセーレとリイとニコとソコルルとヒータン。
5人と1ドラゴンは結構大所帯だな。
船も結構大きくなってしまい、途中から全員で頑張って作った。
あとはロウセエネに経緯を説明するだけ。
現在ヒータンとリイがコロアネデパートまで呼びに行ってくれている。
ふうっと休憩していたら、やおらニコが近寄ってきた。
「ユキノさん、このスマホを参考に私なりに道具を作ってみました」
ニコが見せてきたものを例えるなら、携帯電話。
それもバブル時代みたいなデカい携帯電話。
平成の暮らし博物館で見たことがあるような重たい端末は、しっかりテンキーまで備えてある。
「これは?」
「本当はこのスマホと同じように文字も映像や画像も送れるものを作りたかったのですが、私の現在の力では通話機能だけを再現するのが限界でした」
つまりこの携帯は、ニコがスマホを分析して独力で開発した代物ということだ。
「すごすぎるだろ!」
「これは本当に苦労しました。喜んでもらえてうれしいです」
俺の歓喜具合に、ニコの口角が0.1ミリほど上がる。これは大喜びの表情だ。
こんな天才をファクトリーの屋上に放置しておくとか、ビートルバムの馬鹿ども、もう遅いってレベルじゃねえぞ。
「個々の端末に番号が振ってあるので、その数字を入力して通話ボタンを押すと相手につながります。この電話で出来ることはこれだけです。距離が離れすぎると繋がらないかもしれません」
一通り説明を聞いた俺は今いる面々にニコの発明がいかにすごいかを伝えようとした。
その時。
「ユキノーーー!!緊急事態だよ!!!」
そう叫ぶリイの声が聞こえた。
ヒータンの背中にロウセエネは居なかった。
いるのは切羽詰まった顔をしたリイだけ。
それにヒータンも全速力だ。
「どうした!?ロウセエネは?」
「それが……たった今タオユエンに、ビートル人が攻めてきたの!!!」
いかがでしたか。
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私たまたま読みに来ただけですねんという方は、また気が向いたら読みに来てください。




