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86話 総撤退

働きたくないでござるがモットーのAWLは現代日本にいた頃、掃除している感を醸し出すことにかけては一流だったそうです。


「それに俺はヤマナミの【マップ】にしたがってここに来た。だからイタミの真上に来るはずだった。それがどうしてあのドワーフの上に……」

「なに!?なにがいいたいの?」

「仕事は小さなエラーを逃すのが命取りなんだぜぇ……!」


 何か引っかかることがあるのか、AWLは距離を縮めない。

 一方のセーレたちも、AWLの目的がわからないため迂闊に手を出せない。


「ギャーーーーーース!!!!!!」


 膠着状態を破ったのは、ヒータンの鳴き声だった。


「うぉう!幽霊じゃん!!」


 その背中で妹と同じリアクションをしたリイは、それがNo.31のAWLであると認識するや否や、ヒータンに火炎放射するよう指示する。


「ちぃっ!また余計な仕事が増えやがった!」


 炎に飲み込まれる前にワープして逃げたAWLは、今度はイタミのそばに出現。

 イタミの亡骸を抱いて、忽然と姿を消した。


「……あれ?お取込み中でした?」

「いえ、全然。向こうは予想外みたいだったけど」

「そう切り捨てるには、謎が多すぎます……」

「お姉ちゃーん!あの山、私がやったの!!」


 突然の来訪者であるAWLのことも気になるが、とりあえずはリイの無事に安堵するセーレたち。

 だがリイに駆け寄る輪からはぐれたのはニコ。

 イタミから盗んだスマホを真剣な表情で睨み付けている。


「……あった。これをオフにすると、よし」


 よほど集中して漏れ出た独り言だったからか、ため口になっている。とにかく何か難しい仕事をやり終えたようだ。


「ご無事そうでよかったです。リイさん」

「うぇい。ところで、何それ、硯?」


 ニコからスマホの機能について説明されてリイは同じようにぶったまげた。


「それで、さっきのAWLが言った『ヤマナミの【マップ】』という言葉が気になって、このスマホを調べました。それで分かったのは、このスマホは現在地を把握しています」

「なるほど」

「この機械を持っていると、同じくこの機械の持ち主に居場所が筒抜けになります」

「なにぃーーーー!!?ニコ!!い、ま、す、ぐ!捨てる!!!プレイボール!!」

「あ、あ、待ってください。もう消しました。これでビートル人に私たちの居場所がバレることは無くなりました」


 そばで聞いていたアキナにスマホを奪われかけたが、すでにニコは位置情報を探し当ててオフにしていたのだった。


「それにしてもあいつら、えげつない道具持ってるわね。きっと全員同じの持ってるはず」

「ユキノさんは持ってないようですが。逆に、位置情報にアクセスできたことで他のビートル人の現在地もわかるようになりました。それによると、タオユエンにいるビートル人はあと一人」


 本来、【マップ】はヤマナミのオリジナルのスマホだけの機能だが、ニコは無意識のうちにハッキングして覗けるようにしてしまった。

 といっても質はだいぶ劣化しており、狭い範囲の地図にビートル人を示す赤点が表示されるのみだ。

 タオユエンの中で表示されている唯一の赤点は、ビルの中で点滅を繰り返し、そのままタオユエンの街をふらふらとさまよっている。


「どういうことでしょう……?エラーですかね」

「そうでもないみたいよ。だってほら」


 セーレが指さす先にいたのはAWL。

 いや、正確に言うとAWLがワープするときに一瞬起きる空間の歪み。

 それが大雨の中で連続してあちらこちらで生じている。

 ラストの赤点はAWLだ。

 ではなぜ彼がワープを繰り返しているのか。


「おい!てめえどっから来やがった!?」

「教える義務はない!放せ!!」


 やがてAWLがコロアネデパートまで近づいてくると、どうやら誰かと言い争いをしているらしい。

そいつを振り落とすために、消えたり現れたりを繰り返しているのだった。

 その相手は。


「「「ユキノ!!」」」


 突然ルナの上空に現れたAWLをユキノはとっさに掴んだ。

AWLのチートはAWLが触れているものにも効果が及ぶので、ユキノも一緒にワープ。

ルナを抱えたままでは簡単に振りほどくこともできない。


「お前、俺に捕まってるだけで何ができる?大人しくしてろ!」

「知るかよ!目の前で敵に逃げられるのを黙ってみてるなんてできるか!」


 そう言ってユキノとAWLはいつまで経っても離れることはない。

 そうやってタオユエンの上空をワープし続けていると、セーレたちそして反乱軍たちが気づいた。


「「「おい、あれルナだろ……?」」」

「「「間違いねえ……ビートル人のセブンの1人だ……!」」」

「「「それがどうしてあんな傷だらけで……?」」」


「ねえ、あのAWLが抱えている女ってルナじゃない?」

「ほんとだ。しかも血だらけ」

「ルナだと……そんな強敵がタオユエンに来ていたのか……」

「え!?倒したの!?あのユキノとかいう人!!?」


 徐々に大きくなる喧騒に、AWLは焦った。

 このままダラダラ上空を飛んでいては、ビートル人の敗北をアピールすることになってしまう。

 うだうだやってないで本気でこいつを振り落とさなければ。

 その時、AWLはルナの右のヒールが脱げかかっていることに気づいた。


「イタミのラストメッセージは俺たち全員に届いている。お前などすぐに抹殺するさ!」

「望むところだ、ワープ野郎!」


 売り言葉に買い言葉をしてしまったせいで、ユキノの片目にヒールのカカトが突き刺さった。

 しかも中でぐりぐりされるというオマケがついていたので、ユキノもたまらずAWLから手を離してしまう。

 墜落したのはコロアネデパートの縁。



◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


「クソっ。逃げられた!」


 ヒートアイランド現象みたいにゆらめく空が元に戻る。AWLに逃げられちまった。

 

「ユキノ!」


 セーレの心配そうな声に振り向くと、そこにいたのはみんな。

 あ、ちょっと待て。ロウセエネとアキナもいる。

 これは不味いな。


「うげぇ!!目玉が治ってる!何それ!!?」

「この世の摂理に背く力……間違いなくビートル人のチート……!」


 ビートル人っていうだけで警戒心持たれているのに、こんなグロテスクなチート見せちまったら化け物認定されかねない。

 だが。


「無事だったのね!しかもあのルナを倒すなんてすごいじゃない!」


 墜落の時に折れた背骨はすでに治っていたけど、上気した顔のセーレが差し出す腕を取って立ち上がる。

 リイはアキナの手を引いて俺のところまできて、


「ほら、怖くないよ。触ってみ」


 ゴリラか俺は。

 仕方がないのでアキナの左手を右手で握ってシェイクハンド。

 変な顔してたけど知らね。

 あ、遠くにミリゥもいる。なんか私仕事しましたよ的なドヤ顔してるけど、なんでだ?


「みんなも闘ってくれたことはわかる。そして俺たちは独りも欠けることなくここに立ってる。だけど今回は、俺たちだけじゃない」


 改めてこの建物から見まわしてみて、反乱軍の多さにビビった。

 兵糧攻めされてるのかっていうくらいに俺たちはとり囲まれている。大半がミリゥにビビってるが、とにかく、久しぶりに現れたリイとアキナ皇女、それにセーレ王女が何をしに来たのかが知りたくて、みんな固唾をのんで見守っている。


「だから3人とも、もっと目立つところに行って。旗が燃やされちまった以上、お前らがアピールしないと締まらないから」


 いつの間にか雨が上がって、懐かしい南国の熱い太陽が顔をのぞかせてきた。

 そんな晴れ間の下、コロアネデパートから3人が顔をのぞかせた瞬間、群衆が歓喜の声を上げた。

 燃やされて凍らされて破壊しつくされたタオユエンに、その勝利を祝う叫びはどこまでもどこまでもこだましていた。



これにて第4章終わりとなります。

しばらく閑話を挟んだのち第5章を進めていこうと思います。


よろしければページ下部の☆をクリックして評価してくれるとありがたいです。


それでは。

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