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80話 ダイヤモンドダスト、火の雨、そして

「外れた!!」


 アキナの剛速球が山を破壊した瞬間謎のチートが解除され、リイとヒータンは自由に飛べるようになった。


「矢が、消えたぞ……!」


 ロウセエネが空を見渡してそう呟く。

 空を覆いつくして真っ赤に染め上げていたウララの矢もキャンセルされた。


「ちょっと笑っちゃうくらいの威力でお姉さんびっくりなんだけど」

「すっごーい!すっごい!!こんなの私も初めてだよ!!道具って大事だね!!」


 自分史上最強の剛速球が投げれたことに喜んで、ニコに抱き着いたアキナ。

 ニコの方は身体を硬くしてアキナを受けとめている。


「すまない。本当に独りで闘うつもりだったんだ」

「いまさらそんな水臭いこと言わない!犬と氷女なんて私たちなら楽勝!」

「ねえ!あのフェンリル何言ってるかわかんない!!同じ神獣なのに言葉が違う!!意味わかんねっす!!」


 ヒータンは混乱した顔をしていた。

 ドラゴネットの自分が一応格下なので、敬語で下から話しかけたというのに、返ってきたのは意味不明な言動。


「え、まず、ヒータンって神獣なん?」

「あ、そうくる!リイさんそうきます!?一応私ドラゴンですぞ!まだ成長期来ていないからドラゴネットだけど」

「私が思うにあの犬も異世界から来たんじゃない?だから異世界語を話すんだよ」

「どう聞いても通じてるようにしか聞こえない」


 リイはドラゴンの言葉を理解できないのでフィーリングで会話しているのだが、それでここまで通じていることにソコルルは驚いていた。


「おい、ウララとヤマナミがやられてもうたんかい!!なんやあのガキ!!」


 やたらデカい声とともに、鋭いブリザードがリイとヒータンを襲う。


「寒っ!!」

「めっちゃ凍えるやつ来た!!しかも粒が痛いっす!!」


 全身を切り裂く氷のつぶてから逃れるためにヒータンが炎を吐きながら後ろに羽ばたく。

 翼が起こした風と火がブリザードと衝突してどちらも四散する。


「おお、やるじゃんヒータン」

「へっへーん、一応ハートランド生まれハートランド育ちなんで!」


 ヒータンたちとケンたちの間にキラキラとダイヤモンドダストが降り注ぐ。

 そこだけ見たらロマンチックな光景だが、ダイヤモンドダスト越しに対峙する者たちの顔は険しかった。

 とりわけ、ビートル人のほうには余裕がなかった。


「一方向だけ見ているのは感心しないな」


 上から聞こえたソコルルの声と頭上に重なった影。

 リッカとケンが見上げると、ソコルルが砂を円盤状に回転させて2人に射出しようとしていた。


「今度はお前か!」

「気づくのが少し、遅かった」


 高速回転する砂の塊がリッカたちに落下する。

 だがリッカの魔法も並ではない。

 一瞬のうちに氷の壁を作り出してそれに対抗。


 氷の塊と砂の塊が高速で接触して、辺りに断末魔みたいな音が響き渡る。


「うっせえっす!ソコルンルン、精神攻撃っすか!!」

「ってことじゃないみたい……。ヒータン!風を!それも弱い上昇気流を!」

「うぇい?よくわかんないけど、わかったっす!」


 ヒータンが羽ばたいて風を起こす。

 弱い竜巻のようなそれはビルとビルの間をのろのろ動いて辺りに上昇する流れを発生させる。


「んなもんなあ、リッカの氷に量で勝とうなんて無謀っちゅうもんや!!いったれ、このまま押し返したれ!!」

「いわれなくても、そのつもりぃ~!」


 リッカが力を籠めると、徐々に氷の塊が砂の塊を押し返し始めた。それによってますます音が甲高くなり、そして急速に砂が減っていった。


「よっしゃ、そのまんまはじき返したれ!」

「……僕の言葉を覚えてないのか?貴様らと正々堂々闘うつもりはない。砂が減っているのは、氷に負けたからじゃない。氷を削りとって周りに霧散させているからだ」


 高速回転する砂の塊がやすりのような働きをしてリッカの氷を削り、削りカスを遠心力で辺りにとばす。

 いつのまにか、ケンとリッカの周りには大量のダイヤモンドダストがフワフワと滞空している状態となった。


「おん?なんやえらいロマンチックなことするやないかい」

「空気中の氷に太陽光が反射してキラキラ光るんだよね~」

「気に入ってくれたようでうれしいよ。もっとよく見てみるといい」


 そう言いながら自分は目を閉じるソコルル。

 事前打ち合わせなんて一切していないのに、リイが察してくれたことに感謝していた。


「きれいっすねえ……ずっと見てたくなる」

「あんたは見ちゃダメ。私がいいっていうまで見ちゃダメ」


 そう言ってヒータンの目を閉じさせたリイ。

 その瞬間、リイの目が緑色に輝いた。



◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


「……すげえ音」


 大爆発が起きたみたいな爆音で俺は意識を取り戻す。

 まさかルナがメガホンなんて隠し持っているとは思わなかった。

 それで聞かされた言葉は、たしか……爆ぜろ。


 だが、手足が千切れてはいない。

 立ち上がろうとした俺だったが、腹の中が胃腸風邪引いたみたいに違和感だらけで気持ちが悪い。

 この感覚はつまり、内臓の位置がでたらめになっているってことだ。

 ぐるぐるバット100回転後みたいに揺れる視界のなかで、ルナを探す。

 

 ルナはいた。

 ふんぞり返っていた椅子から転げ落ちて、苦しそうに四つん這いになっている。

 口の周りには血がついていて、額には脂汗がにじんでいた。


「……まさか、可哀想なんて思わないでよね……!!」

「お前にそこまで関心ねえよ。だが、誰にやられた?」


 ふぐは自分の毒で死なない。

 まさか自分の言葉で自分がダメージを受けるなんてあり得ない。

 だが、俺の顔の周りにも血だまりがある。

 それはルナが吐いた血に比べるとあまりに多いが。


「賢明な判断、そう、私の判断は懸命だったのよ。【死ね】だったら、今より状況は悪かった……」

「なるほど、跳ね返したのか、俺。つまり、お前が思ってたより俺とお前には実力差がないってことか」



◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


「ヤマナミちゃん……ヤマナミちゃん……生きてる?」


 数分前の優雅な別荘地区は見る影もなかった。

 吹き飛んだ家々に、大きくえぐれた山の斜面。

 ウララの目の前には潰れたオレンジが散乱していた。


「生きてますよ……我ながらチートですね。でも、身体が……」

「痛いネ」


 アキナの剛速球はウララたちに直撃はしなかった。

 少し離れたところに衝突して、衝撃波を発生。

 ウララとヤマナミもなすすべなくひっくり返る土砂に巻き込まれたのだった。

 ウララは幸い軽傷だったが、ヤマナミは。


「痛みがあるだけまだ救いがありますよ。腕を出すだけの隙間もありますし」


 崩れた家と土砂の下敷きになり、首から下が埋まってしまっていた。

 不幸中の幸いで崩れた家の上に土砂が被さり、ヤマナミは家の隙間に入り込むかたちになっているために、文字通りの生き埋めではなかった。

 だから腕を動かしてスマホを取り出すこともできたのだが、そのスマホは画面がバキバキになってしまっていた。


「なんてコト……!こんなの初めてのピンチ……!」


 ウララのチートではこの大量の土砂をどうしようもなかった。イタミのような筋肉操作ならば、一気に土砂を掘り起こすこともできるが、中途半端に魔力障壁で吹き飛ばせば土砂崩れが起こる可能性もある。

 つまり、ウララ一人ではなすすべがなかった。


「私はとりあえず大丈夫です。ウララさん、この戦いに勝たないと誰にも救助をお願いできないです。だから気にせず、矢を!」


 ウララの長いまつげが伏せるのをこれ以上見ていたくなかったのでヤマナミは気丈に振る舞う。

 そしてこの状況では、ヤマナミの言うことに利がある。

 ウララのチートには戦況を一瞬にしてひっくり返す力があるのだ。


「わかった。この戦い、もう終わらせるヨ。【リンダリンダ】マックスヴォルテージ!!」


 今までより強く弓を引くと、現れたのはブライトブルーの矢。

 それも今までとは比べ物にならないくらいの本数だ。


「敵味方も環境も無視。とにかくヤマナミちゃんを助ける。だから、全てを燃やし尽くす天の火」


 決意に満ちた表情のウララが弓から指を放したの同時。

 バキバキになったスマホに水滴が落ちてきた。

 最初は一滴だけだったのが、二滴、三滴と、そしてザーザーと絶え間なく。


「え…ウソ……雨?」




いかがでしたか。

おもしろかった・続きが気になるという方は、ページ下部の☆をクリックしていただけるとありがたいです。

ひと手間ですけど、よろぴこ。

私たまたま読んだだけですねん、というかたは、気が向いたらまた来てください。今より面白くなってると思います。

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