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79話 真球

フェンリルとなったネルですが、ケンがボールを投げると嬉しそうに取りに走って、その嬉しさのままどっかにいきます。

「うげぇ!鼻血……あ、目眩が」

「おい、おい、お前ら、おい!」


 ルナとユキノが闘うビルのそばにいた兵士たちが、続々と鼻血を出して倒れていく。

何らかの遠隔攻撃か。

だとしたらいったい誰だ。


種明かしをすれば、ルナの【ソニョシデ】の影響なのだが。

彼女の声が聞こえなかった兵士たちは、突然隣の兵士たちが血を流して倒れていくので、パニックに陥った。


 その様子をコロアネデパートから見ていたロウセエネは苦い顔をしてこぶしを握り締めていた。


「……リイ皇女。本当にあのユキノという男はビートル人で、それでも信用できるのか?」

「ほんとほんと、ほんとだよー。ビートル人のくせに暴力的じゃないし」

「そうか、そうなのか……」


 異世界人共通の敵であるビートル人。リイももちろん毛嫌いしているが、それでもユキノだけは例外だ。


「それでは、さっき掲げたあの旗は……」

「ねえ!!お姉ちゃん!!なんかでっかいお魚いるよ!!!」

「あ、ミリゥ。忘れてた」

「忘れてた、ってあれは、リヴァイアサンじゃないか!!」


 ヒータンが海を指さす先を見て、ロウセエネは仰天。

 海の覇者リヴァイアサンが海面から顔をのぞかせている。


「あ、飛び跳ねた。なんかうれしいことでもあったのかな」

「誰かと会話しているぞ……」


 リッカが張った氷の上に立つ誰かと会話した後、ミリゥは水面下に消えていった。

 しばらくして、その会話の主が空中に飛び上がり、こちらに向かってくるのが見えた。


「あ、ソコルルじゃない!おーい、ソコルルー!ミリゥと何話してたのー!?」


 ソコルルだということに気づいたセーレが声を上げるが、ソコルルはなんだか気まずそうだ。


「うーん?悪いことした??もしかして、取り込み中?」


 そうやってセーレが首を傾げた瞬間、ビルをフェンリルが駆け上がり、その鋭い爪で切り裂こうとソコルルに跳びかかった。

 それをソコルルは寸前でかわす。


「んん!?女の声がする思たら、ロンドんとこの姫やんけ!!そういうことか!お前ら、援軍か!!」

「もしかして、さっきのリヴァイアサンもそうなのかな~。だとしたら~この戦争、大きい収穫だよ~!」


 ソコルルはビートル人に追われていた。

 それも、フェンリル使いのケンと氷のリッカ。

 そのコンビを連れて、わざわざセーレたちのいるコロアネデパートに向かってきていた。

 とても凛々しい顔をしていた。


「「「ソコルルお前、何やっとんじゃあ!!!」」」

 

 イタミのスマホをいじっていたニコも立ち上がり、セーレとリイと一緒にツッコミを食らわせる。


「いつの間にかいなくなってると思ったら、いったい何をしでかしたっていうのさ!ヒータン!加勢するよ!!」

「ガウガウ!!」


 そう言って、リイはヒータンに乗ってコロアネデパートを飛び立つ。

 だがその瞬間。


「【ロック】」


 一時停止をしたアニメのように、ヒータンとリイは空中で静止。

 ヤマナミの仕業だ。


「な、なにこれ……!?羽ばたいてないのに、落ちない……!?」


 拘束魔法は決して珍しくはない。

 だがこれはそんなものとは全く異質。

 まさにチートとしか言えないものだった。


「やるやんけ!ヤマナミ!!」


 ケンがヤマナミというビートル人に向かって称賛の声を上げると。

 空が再び赤く染まる。


「ウララの矢……!」


 空を覆いつくすほどの火の矢がタオユエンの街に降り注ぐ。


「アキナ皇女、この壁の陰に!!」

「でも、でもお姉ちゃんが!!」


 ソコルルを追いかけていたケンたちが標的を変えて、空中で止まるリイたちに狙いをつける。

 ビルの屋上で助走をつけてそのままネルの牙でかみ砕こうと飛び上がった矢先。


「入った!射程距離内」


 ビルの壁から飛び出した鎖がネルの後ろ脚に絡みついた。

 バランスを崩されたネルはそのまま一度地面に着地せざるを得なくなった。


「セーレ王女……まさか、周囲に鎖の結界を……!?ビルの素材を媒介にして……かつてとは比べ物にならない魔力……!」

「ロウセエネさん。あなたの剣の腕前は聞いてるわ!リイを矢から防いで!」

「承知した!」


 セーレの指示に闘争心を刺激されたロウセエネが大剣を振るう。

 その斬撃と風圧でリイに降り注ぐ火の矢は吹き飛ばす。


「それと、アキナちゃん」

「え!?」

「改めて、この子がニコちゃん」

「はじめまして」

「は、はじめまして」


 降りしきる火の矢の中。

 そんなタイミングで改めて自己紹介されたニコという少女は、アキナと同じ年くらいのドワーフだった。

 鮮やかなオレンジ色の髪とは対照的に平坦な表情をしていた。

 ドワーフは背が低いから私より年上かもしれない、なんてことをアキナが思っていると。


「その手に持ってる球が、武器ですか」


 ニコはアキナが握る球に興味を示した。


「うん、私剛腕ピッチャーなの!!」

「投げるんですか……」


 それを聞いたニコはアキナから受け取った鉄球をまじまじと見つめ。


「これ、粗悪ですよ。不純物が混じってるから魔力伝導率が悪いし、重心がズレてるし、見てわかるくらい楕円。おまけに表面がこんなにデコボコしてたら空気抵抗が大きくなります」

「お、おう……」


 鉄球の悪いところを一息で列挙した。

 それを見て、セーレが苦笑いする。


「セーレお姉ちゃん!なんかいきなり失礼だよ!?」

「ごめんごめん、つまりね、ニコちゃんがアキナちゃんのために鉄球を作ってくれるって言ってるの」

「アキナさん、失礼しました。でも、もう、作りました」

「ほえ……?」

 

 戸惑うアキナにニコが手渡した鉄球。

 それを見てアキナは目を見張る。


「なにこれ……手に、馴染む……」


 確かにビートルバム相手にゲリラ戦を展開するようになってからは、その辺の素材を使ってハンドメイドするしかなかった。

 だから今の鉄球が粗悪なのはアキナも承知しているが。

 それにしても、このニコの鉄球は。


「宮廷鍛冶職人でも、こんなキレイなの作れないよ」


 顔が映るくらいにつるつるの表面。

 そしてどう回転させても同じ形。円周にブレや歪みが一切ない。

 何よりすごいのは持った感触。

 手に吸い付くようなその感触からは、重さが感じられなかった。


「す、すごいよ!!ニコ!!こんな球が作れるなんて」

「ありがとうございます」

「よーしそれじゃあ、急いで!!」


 視界の端にロウセエネとソコルルが見える。2人ともリイにビートル人を近づけまいと必死だ。

 セーレが鎖を垂らして、魔力をダウジングする。

 数回にわたる火の矢によっておおよその位置は掴んでいるが、もう少し正確な位置を絞り出す。


「見つけた。この魔力は、ビートル人!!」

「わっかりました!!いっくよー!!ど真ん中ストレート!!!!!!」


 矢避けの壁に飛び乗ったアキナが思いっきり振りかぶる。


「ピッチャー振りかぶって……投げたあああああああああああ!!!!!!!」


 跳ねるようにしてぶん投げた。

 今まで投げたどの鉄球とも違う。澄んだ音が辺りに響き渡る。

 それは音を置き去りにする音であり、アキナの魔力を逃さず温存し速度によって何倍にも増幅させる音だった。

 鉄球はすさまじいスピードであっという間に見えなくなったが、次の瞬間。


どごおおおおおおおおおおおおん!!!!!!!


 あり得ないほど大きな音とともに、山が抉れて吹き飛んだ。

いかがでしたか。

おもしろかった・続きが気になるという方は、ページ下部の☆を押していただけるとありがたいです。ひと手間やねえ。お手数やねえ。

私たまたま読みに来ただけですねん、という方はまた気が向いたら読みに来てください。今よりも面白くなっていると思います。

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